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虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


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第53話 新たな学び舎への憧れ――少年が見つけた可能性

第53話 新たな学び舎への憧れ――少年が見つけた可能性


 九条院家を訪れてから、数日が経過した。


 黒瀬怜司は、学校の休み時間に一冊の資料を眺めていた。


 それは、九条院澪が通う私立学園の案内だった。


 正式名称は、私立聖蘭学園。


 学業だけでなく、語学や国際交流にも力を入れている名門校だという。


 広々とした校舎。


 整った図書館。


 最新の設備が揃った教室。


 そして、さまざまな課外活動。


 怜司は、ページをめくりながら感心していた。


「……すごいな」


 そのとき。


「何見てんの?」


 相沢直人が、横から覗き込んできた。


「……あ、相沢」


 怜司は、少し笑った。


「学校の資料だよ」


「学校?」


 相沢は、表紙を見た。


 そして、目を丸くした。


「……聖蘭学園!?」


 怜司は、少し驚いた。


「知ってるの?」


「知ってるも何も、有名な進学校じゃん!」


 相沢は、興奮したように続けた。


「金持ちの子供が多いって聞くけど、勉強もめちゃくちゃ難しいらしいぞ」


「……そうなんだ」


「お前、転校でも考えてんの?」


 怜司は、少し考えた。


「……まだ、そこまでは」


 そして、資料を見つめた。


「ただ、こういう学校もあるんだなって」


 相沢は、しばらく怜司を見ていた。


 そして、少し笑った。


「……いいんじゃね?」


 怜司が顔を上げる。


「……え?」


「お前、最近すごく変わったしさ」


 相沢は、肩をすくめた。


「やりたいことがあるなら、挑戦してみればいいと思う」


 怜司は、少し驚いた。


 そして、笑顔になった。


「……ありがとう」


 相沢は、少し照れくさそうに笑った。


「ただし、転校しても友達やめるなよ?」


 怜司は、思わず吹き出した。


「……もちろん!」


 二人は、笑い合った。


     ◇ ◇ ◇


 その日の放課後。


 怜司は、図書室で勉強していた。


 数学。


 英語。


 そして、現代文。


 以前は、勉強に集中することが難しかった。


 教室での嫌がらせが気になり、授業の内容が頭に入らない日も多かったからだ。


 だが、今は違う。


 落ち着いて勉強できる。


 分からない問題にも、じっくり向き合える。


 さらに、《万象習得》の影響なのか、一度理解した内容が以前より定着しやすくなっていた。


「……あ、分かった」


 怜司は、数学の問題を解き終えた。


 以前なら、途中で諦めていたかもしれない。


 だが、今は解ける。


 そのことが、素直に嬉しかった。


 もちろん、すべての問題が簡単に解けるわけではない。


 難しい問題では、何度も考え直す必要がある。


 それでも、少しずつ前へ進んでいる実感があった。


     ◇ ◇ ◇


 夕方。


 帰宅した怜司は、正臣へ学園の資料を見せた。


「……聖蘭学園か」


 正臣は、興味深そうにページをめくった。


「かなり環境の整った学校だな」


「うん」


 怜司は、少し緊張しながら言った。


「……父さん」


「何だ?」


「もし、俺が転校したいって言ったら……どう思う?」


 正臣は、少し驚いた。


 だが、すぐには答えなかった。


 資料を閉じ、怜司を見た。


「……どうして、そう思った?」


 怜司は、少し考えた。


 今の学校では、ようやく落ち着いて過ごせるようになった。


 相沢という友達もできた。


 篠原とも、普通に話せるようになった。


 だから、今すぐ逃げたいわけではない。


 ただ。


「……もっと、いろんなことを勉強してみたいんだ」


 怜司は、ゆっくりと言った。


「今まで、学校に行くのが嫌で仕方なかったけど……最近は、勉強するのも楽しくなってきた」


 正臣は、静かに聞いていた。


「だから、もっといろんなことに挑戦できる場所があるなら、行ってみたいなって」


 正臣は、しばらく黙っていた。


 そして、柔らかく微笑んだ。


「……いいと思うぞ」


 怜司は、目を見開いた。


「……本当?」


「ああ」


 正臣は頷いた。


「お前が自分で考えて、進みたい道を見つけたなら、父さんは応援したい」


 怜司は、胸が温かくなるのを感じた。


「……ありがとう」


「ただし、転校には条件があるだろう」


 正臣は、資料を開いた。


「学力、面接、学費、通学時間。調べることは多い」


 怜司は、真剣に頷いた。


「……うん」


「だから、まずは情報を集めよう」


 正臣は、穏やかに笑った。


「急ぐ必要はない」


 怜司も、笑顔になった。


「……分かった」


     ◇ ◇ ◇


 その夜。


 怜司は、澪へメッセージを送った。


『聖蘭学園の資料、見てみました。すごくいい学校ですね』


 しばらくして、返信が届いた。


『本当ですか! 嬉しいです』


 続けて、もう一通。


『もしご興味があるのでしたら、学校のことを何でも聞いてくださいね』


 怜司は、少し笑った。


『ありがとうございます。実は、転校も少し考え始めています』


 送信。


 数秒後。


『……本当ですか!?』


 怜司は、思わず笑った。


 澪の驚いた顔が、目に浮かぶようだった。


『まだ決めたわけじゃないですけど』


 すぐに返信が届いた。


『それでも、とても嬉しいです』


 そして。


『もしレイジさんと同じ学校に通えたら、毎日お会いできますね』


 怜司は、画面を見つめた。


 そして、頬が少し熱くなるのを感じた。


「……毎日、か」


 今まで、学校へ行くことが苦痛だった。


 だが、もし新しい学校で澪と会えるなら。


 それは、少し楽しみかもしれない。


 怜司は、ゆっくりと返信した。


『そうですね。俺も楽しそうだと思います』


 澪から、すぐに返事が届いた。


『はい!』


 その短い言葉を見て、怜司は自然と笑顔になった。


     ◇ ◇ ◇


 同じ頃。


 九条院家。


 澪は、自室のベッドに腰かけていた。


 スマートフォンの画面には、怜司とのやり取りが表示されている。


「……レイジさんが、聖蘭学園に……」


 澪は、胸の前でスマートフォンを抱きしめた。


 もし、本当に同じ学校へ通えるようになったら。


 朝、挨拶できる。


 昼休みに話せる。


 放課後、一緒に帰れるかもしれない。


 そんなことを考えると、自然と笑顔になった。


「……楽しみです」


 澪は、小さく呟いた。


 そして、窓の外を見つめた。


 夜空には、綺麗な月が浮かんでいた。



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