↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/126

第52話 九条院家の当主――父親同士が交わした言葉

第52話 九条院家の当主――父親同士が交わした言葉


 九条院家の迎賓施設。


 広々とした応接室に、穏やかな空気が流れていた。


 黒瀬怜司と父の正臣は、九条院宗一郎と向かい合って座っていた。


 その隣には、九条院澪がいる。


 宗一郎は、改めて怜司へ頭を下げた。


「娘から、事故のことを詳しく聞きました」


 怜司は、少し緊張しながら答えた。


「……いえ。俺は、できることをしただけなので」


 宗一郎は、静かに首を横に振った。


「それでも、簡単にできることではありません」


 そして、真剣な表情になった。


「娘が無事だったのは、あなたのおかげです」


 怜司は、少し照れくさくなった。


「……ありがとうございます」


 宗一郎は、正臣へ視線を向けた。


「黒瀬さん。息子さんには、本当に感謝しています」


 正臣は、ゆっくりと頷いた。


「こちらこそ、娘さんが無事で何よりです」


 そして、少しだけ苦笑した。


「ただ、父親としては、息子が危険な目に遭ったことに肝を冷やしました」


 宗一郎は、深く頷いた。


「……お気持ちは、よく分かります」


 その言葉に、二人の父親は少しだけ表情を和らげた。


 立場は違う。


 暮らしている世界も違う。


 だが、子供を大切に思う気持ちは同じだった。


     ◇ ◇ ◇


 しばらくして。


 宗一郎は、テーブルの上に小さな箱を置いた。


「ささやかですが、感謝の気持ちとして受け取っていただけないでしょうか」


 怜司は、少し驚いた。


「……え?」


 箱の中には、高級な万年筆が収められていた。


 落ち着いた黒色の軸。


 細かな装飾。


 見るからに上質な品だった。


「……こんな立派なものを?」


 宗一郎は、穏やかに微笑んだ。


「これから勉強を続けるうえで、使っていただければ嬉しいです」


 怜司は、少し迷った。


 高価そうなものを、簡単に受け取っていいのだろうか。


 正臣を見る。


 父は、静かに頷いた。


「……感謝の気持ちとしてなら、ありがたく受け取っておこう」


 怜司は、深く頭を下げた。


「ありがとうございます。大切に使います」


 宗一郎は、満足そうに微笑んだ。


「そう言っていただけると嬉しいです」


     ◇ ◇ ◇


 その後、話題は学校生活へ移った。


「怜司君は、今、高校一年生だったね」


 宗一郎が尋ねた。


「はい」


「澪も同じ年頃だ。今は十六歳で、私立の学校に通っている」


 怜司は、澪を見た。


「そうなんですね」


 澪は、少し笑った。


「はい。少し厳しい学校ですけれど、勉強する環境は整っています」


 宗一郎は、穏やかに頷いた。


「娘の学校には、さまざまな家庭の生徒が集まっている。学業だけでなく、国際交流にも力を入れているんだ」


 怜司は、興味深そうに聞いていた。


 今の学校とは、かなり違う環境らしい。


「……すごいですね」


 宗一郎は、少し笑った。


「もし興味があれば、今度学校の資料でも見てみるといい」


 怜司は頷いた。


「……ありがとうございます」


 正臣は、その様子を静かに見守っていた。


 息子は、以前よりずっと前向きになっている。


 新しいことを知ろうとする姿勢。


 人と自然に話せるようになったこと。


 そして、自分の意見を持ち始めたこと。


 その変化が、父親として嬉しかった。


     ◇ ◇ ◇


 しばらくして。


 澪が、少し遠慮がちに口を開いた。


「お父様」


「どうした、澪?」


「もしよろしければ、レイジさんに庭園をご案内してもよろしいでしょうか?」


 宗一郎は、娘を見た。


 そして、柔らかく微笑んだ。


「もちろんだよ」


 澪は、嬉しそうに頷いた。


「ありがとうございます」


 怜司も立ち上がった。


「では、少し失礼します」


 正臣が笑った。


「楽しんでおいで」


「うん」


 二人は、並んで応接室を出た。


     ◇ ◇ ◇


 庭園には、季節の花々が咲いていた。


 整えられた小道。


 小さな噴水。


 そして、木陰に置かれたベンチ。


 澪は、ゆっくりと歩きながら言った。


「今日は、来てくださって本当に嬉しいです」


 怜司は、少し笑った。


「俺も、澪さんとまた話せて嬉しいです」


 澪は、少しだけ頬を赤くした。


「……ありがとうございます」


 二人は、しばらく庭園を歩いた。


 学校のこと。


 好きな食べ物。


 休日の過ごし方。


 そんな何気ない話題が続いた。


 怜司は、澪が読書を好きなことを知った。


 澪は、怜司が最近運動を始めたことを知った。


「レイジさんは、どんな本を読まれるのですか?」


「最近は、商売とかお金の勉強をする本が多いです」


 澪は、少し驚いた。


「まあ。高校一年生で、ですか?」


「まだ全然分からないことばかりですけど」


 怜司は、少し照れくさそうに笑った。


「将来のために、勉強しておきたいなって」


 澪は、怜司を見つめた。


「……素敵ですね」


「……え?」


「ご自分の将来を、きちんと考えていらっしゃるのですね」


 怜司は、少し照れくさくなった。


「……そんな大したことじゃないですよ」


 澪は、首を横に振った。


「いいえ。私は、そういう方を尊敬します」


 その言葉に、怜司の胸が少し温かくなった。


     ◇ ◇ ◇


 一方、応接室。


 正臣と宗一郎は、二人で話していた。


「……息子さんは、立派な方ですね」


 宗一郎が言った。


 正臣は、少し苦笑した。


「まだまだ未熟なところもありますよ」


「それでも、あの年齢で人を助けるために動けるのは、簡単なことではありません」


 正臣は、静かに頷いた。


「……ありがとうございます」


 そして、少しだけ表情を曇らせた。


「実は、息子は最近まで学校で辛い思いをしていまして」


 宗一郎は、真剣な表情になった。


「……そうでしたか」


 正臣は、詳細を必要以上に話すことはしなかった。


 ただ、いじめがあり、学校との話し合いを経て、ようやく落ち着き始めたことを伝えた。


 宗一郎は、黙って聞いていた。


 そして、静かに言った。


「……それは、大変でしたね」


 正臣は頷いた。


「息子が今、前向きになってくれていることが、何より嬉しいんです」


 宗一郎は、少し考えた。


 そして、穏やかに言った。


「もし今後、進路や学習環境について相談したいことがあれば、遠慮なくお声がけください」


 正臣は、少し驚いた。


「……よろしいんですか?」


「もちろんです」


 宗一郎は微笑んだ。


「ただし、息子さん自身の意思が一番大切です」


 正臣は、深く頷いた。


「……ありがとうございます」


     ◇ ◇ ◇


 夕方。


 怜司と正臣が帰る時間になった。


 澪は、玄関まで見送りに来ていた。


「レイジさん」


「はい?」


「今日は、本当にありがとうございました」


 怜司は、笑顔で答えた。


「こちらこそ、楽しかったです」


 澪は、少しだけ頬を赤くした。


「……また、お会いできますか?」


 怜司は、迷わず頷いた。


「はい。ぜひ」


 その言葉に、澪の顔が明るくなった。


「……嬉しいです」


 怜司は、少し照れくさくなった。


 そして、正臣とともに車へ向かった。


 澪は、その背中を見送っていた。


 彼が見えなくなるまで、ずっと。


     ◇ ◇ ◇


 帰りの車内。


 正臣が、少し笑った。


「……いい子だったな」


 怜司は、窓の外を見ながら頷いた。


「……うん」


「澪さん、だっけ?」


「うん」


 正臣は、少しだけ口元を緩めた。


「ずいぶん楽しそうに話してたじゃないか」


 怜司は、思わず頬を赤くした。


「……父さん」


「ははは。悪い悪い」


 正臣は笑った。


 だが、その表情は嬉しそうだった。


 息子が新しい人間関係を築いている。


 それは、父親として何より喜ばしいことだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。