第47話 変わりゆく容姿――周囲が気づき始めた少年の魅力
第47話 変わりゆく容姿――周囲が気づき始めた少年の魅力
月曜日の朝。
黒瀬怜司は、制服のズボンを履きながら首を傾げていた。
「……また、緩くなってる」
ベルトの穴を一つ詰める。
それでも、以前より余裕があった。
怜司は、鏡の前に立った。
頬の丸みが、さらに減っている。
顎の輪郭も、以前よりはっきりしていた。
身体の厚みも、少しずつ変わっている。
だが、急激に筋肉が増えたわけではない。
余分な脂肪が減り、身体が動きやすくなっている。
そんな印象だった。
「……すごいな」
怜司は、思わず呟いた。
《完全適応》。
その効果は、確実に進んでいる。
ステータスを確認すると、肉体最適化進行率は二十四パーセントになっていた。
まだ、完成には遠い。
だが、変化は十分に感じられた。
怜司は、少し笑った。
「……悪くないかも」
◇ ◇ ◇
リビングへ降りると、陽菜が真っ先に気づいた。
「あっ!」
怜司が顔を上げる。
「……ん?」
「お兄ちゃん、また痩せた!」
美咲も、息子を見た。
「本当ね。制服、少し大きくなってない?」
怜司は、苦笑した。
「……うん。ちょっと緩くなってきた」
正臣が、新聞から顔を上げた。
「無理はしてないか?」
「大丈夫。ちゃんと食べてるよ」
「それならいいが、急に体重が落ちるようなら、健康診断も考えような」
「うん」
怜司は頷いた。
陽菜は、嬉しそうに笑った。
「お兄ちゃん、もっとかっこよくなるね!」
怜司は、少し照れくさくなった。
「……陽菜、それ毎回言ってない?」
「だって、本当だもん!」
美咲も笑った。
「ふふ。陽菜はお兄ちゃんが大好きなのね」
「うん!」
陽菜は、迷わず答えた。
怜司は、思わず笑った。
◇ ◇ ◇
学校。
怜司が教室に入ると、相沢が目を見開いた。
「……おい、黒瀬」
「おはよう」
「お前、また痩せた?」
怜司は、少し笑った。
「……多分」
「多分って……」
相沢は、怜司をじっと見た。
「いや、マジで雰囲気変わってきたな」
その声を聞いた近くの女子生徒も、怜司を見た。
「確かに。黒瀬君、最近すっきりしたよね」
「前より姿勢もよくなった気がする」
怜司は、少し照れくさくなった。
「……ありがとう」
すると、相沢が笑った。
「何だよ。今まで隠してたのか?」
「何を?」
「イケメンの素質!」
怜司は、思わず吹き出した。
「……いやいや、そんなことないって」
周囲からも笑い声が上がった。
だが、それは以前のような嘲笑ではなかった。
友人同士の、自然な会話だった。
◇ ◇ ◇
昼休み。
怜司が廊下を歩いていると、篠原紗季が声をかけてきた。
「黒瀬君」
「……篠原さん」
紗季は、少し緊張した様子だった。
「最近、元気そうだね」
「うん。おかげさまで」
怜司が笑うと、紗季も微笑んだ。
「……よかった」
そして、少しだけ視線を逸らした。
「それに……」
「……ん?」
「……前より、かっこよくなったと思う」
怜司は、思わず固まった。
「……えっ!?」
紗季の頬が赤くなる。
「あっ、変な意味じゃなくて!」
怜司は、慌てて首を横に振った。
「い、いや、ありがとう!」
紗季は、少し笑った。
「……うん」
そして、足早に去っていった。
怜司は、その場に立ち尽くした。
かっこいい。
そんな言葉を、学校の女子から言われる日が来るとは思わなかった。
「……何か、変な感じだな」
怜司は、小さく呟いた。
だが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
◇ ◇ ◇
放課後。
怜司は、相沢と一緒にスポーツ用品店へ向かっていた。
「なあ、黒瀬」
「ん?」
「今度、俺と一緒にランニングしない?」
怜司は、少し驚いた。
「……ランニング?」
「ああ。最近、俺も運動不足なんだよ」
相沢は、少し笑った。
「お前が頑張ってるの見てたら、俺も何か始めたくなってさ」
怜司は、嬉しくなった。
「……いいよ」
「マジで?」
「うん。一緒にやろう」
相沢は、嬉しそうに笑った。
「よし! 決まり!」
二人は、店内でシューズを見ながら話を続けた。
以前の怜司なら、友達と一緒に運動することすら考えられなかった。
体型を見られるのが恥ずかしかったからだ。
だが、今は違う。
まだ理想の体型ではない。
それでも、自分の身体を嫌う気持ちは、少しずつ薄れていた。
◇ ◇ ◇
その夜。
怜司は、自室で鏡を見つめていた。
以前の自分。
そして、今の自分。
確かに変わっている。
だが、変化しているのは外見だけではなかった。
人と話すことが、以前より楽しくなった。
誰かに褒められても、すぐに疑わなくなった。
自分にも、いいところがあるのかもしれない。
そう思えるようになってきた。
「……もっと、頑張ろう」
怜司は、静かに呟いた。
その言葉には、以前のような焦りはなかった。
誰かを見返すためではない。
自分自身が、もっと好きになれるように。
怜司は、そう思っていた。




