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虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


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第42話 鏡の中の変化――神級権能が導く新たな自分

第42話 鏡の中の変化――神級権能が導く新たな自分


 翌朝。


 黒瀬怜司は、洗面所の鏡を見つめていた。


「……やっぱり、変わってる?」


 昨日、陽菜から言われた言葉が気になっていた。


 少し痩せた。


 顔がすっきりした。


 自分では毎日見ているため、あまり実感がなかった。


 だが、改めて鏡を見ると、確かに以前とは違う気がする。


 頬の丸みが、少し減っていた。


 顎の輪郭も、以前より分かりやすい。


 何より、顔色がよくなっている。


「……気のせいじゃない、よな」


 怜司は、洗面所の棚から体重計を取り出した。


 そして、恐る恐る乗る。


 表示された数字を見た瞬間。


「……えっ!?」


 思わず声が出た。


 八十七・六キロ。


 以前、学校の身体測定で記録した体重は九十六キロを超えていた。


 つまり、八キロ以上減っている。


「……嘘だろ」


 怜司は、もう一度体重計に乗った。


 表示は変わらない。


 八十七・六キロ。


 間違いではなかった。


 もちろん、まだ痩せた体型とは言えない。


 身長は百七十二センチほど。


 依然として体重は重い方だ。


 それでも、以前と比べれば明らかな変化だった。


 怜司は、ゆっくりと鏡を見た。


 ――……もしかして。


 頭に浮かんだのは、異世界で手に入れた神級権能。


 《完全適応》。


 身体を少しずつ最適な状態へ近づけていく力。


 レベルが上がるにつれて、その働きも強くなっているのかもしれない。


 怜司は、心の中でステータスを確認した。


 目の前に、半透明の表示が現れる。


 【黒瀬怜司】


 【年齢:十五歳】


 【レベル:19】


 【神級権能:《無限成長》《完全適応》《万象習得》】


 【固有権能:《界渡り》】


 以前より、レベルが上がっていた。


 森での魔物討伐や、異世界での活動によって経験を積んだ結果だろう。


 さらに、《完全適応》の項目には新たな表示があった。


 【肉体最適化進行率:21%】


 怜司は、目を見開いた。


「……二十一パーセント?」


 以前確認したときより、確実に進んでいる。


 しかも、まだ全体の五分の一程度。


 つまり、身体の変化はこれからも続くということだった。


 怜司は、鏡の中の自分を見つめた。


 ――……どこまで変わるんだろう。


 少し怖くもあった。


 だが、それ以上に期待があった。


     ◇ ◇ ◇


「お兄ちゃーん! 朝ごはんだよ!」


 陽菜の声が聞こえた。


「今行く!」


 怜司は、慌ててステータス表示を消した。


 洗面所を出ると、陽菜が廊下で待っていた。


「遅いよー!」


「ごめん、ごめん」


 怜司が笑うと、陽菜はじっと兄の顔を見た。


「……やっぱり」


「ん?」


「お兄ちゃん、顔変わってる!」


 怜司は、少し照れくさくなった。


「そんなに?」


「うん! なんか、目が前より大きく見える!」


 その言葉に、怜司は思わず笑った。


「それ、痩せたからじゃない?」


「そうなの?」


「多分ね」


 陽菜は、しばらく考えた。


 そして、嬉しそうに笑った。


「じゃあ、お兄ちゃん、もっとかっこよくなるね!」


「……えっ」


 怜司は、思わず固まった。


 かっこいい。


 そんな言葉を、自分に向けられたことはほとんどなかった。


 陽菜は、当然という顔で続けた。


「でも、今のお兄ちゃんも好きだよ!」


 怜司は、胸が温かくなるのを感じた。


「……ありがとう、陽菜」


 そう言って、妹の頭を撫でた。


     ◇ ◇ ◇


 朝食の席。


 美咲は、怜司の様子を見ながら言った。


「最近、食事の量は変わってないわよね?」


「うん。普通に食べてるよ」


「それなのに、そんなに痩せたの?」


 怜司は、少し考えた。


 異世界のことを話すわけにはいかない。


 だが、嘘を重ねるのも嫌だった。


「……最近、結構身体を動かしてるからかな」


 それ自体は事実だった。


 異世界では、冒険者として歩き回り、剣の訓練もしている。


 美咲は、納得したように頷いた。


「そうなのね。でも、無理な食事制限はしないでね」


「うん。分かってる」


 正臣も口を開いた。


「急に体重が落ちるようなら、一度病院で確認した方がいいな」


 怜司は頷いた。


「……うん」


 心配してくれる家族がいる。


 そのことが、素直に嬉しかった。


     ◇ ◇ ◇


 学校。


 怜司が教室に入ると、相沢が声をかけてきた。


「おはよう、黒瀬!」


「おはよう」


 相沢は、怜司を見て首を傾げた。


「……あれ?」


「どうしたの?」


「お前、ちょっと痩せた?」


 怜司は、思わず苦笑した。


「最近、よく言われるんだ」


「やっぱり!」


 相沢は、驚いたように言った。


「何か、雰囲気変わったと思ったんだよ」


 その声を聞いた近くの男子生徒も、怜司を見た。


「確かに。前より顔すっきりしてるな」


「運動でも始めたの?」


 怜司は、少し照れくさそうに答えた。


「……まあ、そんな感じ」


 すると、相沢が笑った。


「いいじゃん! 今度、一緒に何か運動しようぜ」


「……うん」


 怜司は頷いた。


 以前なら、自分の体型について話題にされるだけで身構えていた。


 だが、今は違う。


 誰も馬鹿にしていない。


 ただ、変化に気づいて声をかけてくれている。


 それが、怜司には新鮮だった。


     ◇ ◇ ◇


 放課後。


 怜司は、帰宅途中にスポーツ用品店へ立ち寄った。


 店内には、ランニングシューズやトレーニングウェアが並んでいる。


 怜司は、少し迷ったあと、動きやすい服を選んだ。


 以前は、身体の線が目立つ服を避けていた。


 できるだけ大きなサイズ。


 できるだけ目立たない色。


 そういう服ばかり選んでいた。


 だが、今日は少し違った。


 鏡の前で、試着したウェアを確認する。


 まだお腹は出ている。


 肩や腕にも、余分な脂肪が残っている。


 それでも、以前より動きやすそうな体型になっていた。


「……悪くないかも」


 怜司は、小さく呟いた。


 そして、ウェアとシューズを購入した。


 帰宅後。


 近所の公園で、軽く走ってみることにした。


 以前なら、少し走っただけで息が切れていた。


 だが、今は違う。


 足が軽い。


 呼吸も乱れない。


 身体が自然に前へ進む。


「……すごいな」


 怜司は、驚きながら走り続けた。


 ただし、速度は抑えた。


 異世界での身体能力をそのまま使えば、普通の人間とは比べものにならない速さになってしまう。


 だから、周囲に合わせたペースで走る。


 それでも、十分に気持ちよかった。


 夕暮れの公園。


 風が頬を撫でる。


 怜司は、久しぶりに身体を動かすことそのものを楽しんでいた。


     ◇ ◇ ◇


 夜。


 自室に戻った怜司は、机の上に置いた小さな木彫りの飾りを見つめた。


 異世界の孤児院《星の家》で、男の子からもらったものだ。


 その隣には、以前買っておいた日本のお菓子があった。


 チョコレート。


 クッキー。


 そして、色とりどりのキャンディー。


 怜司は、ふと思い出した。


「……そういえば」


 エリシアに、日本のお菓子を持ってくると約束していた。


 だが、街道の事件が続き、なかなか渡す機会がなかった。


「……明日、持っていこうかな」


 怜司は、少し笑った。


 異世界での事件は、ひとまず解決した。


 今度は、誰かとゆっくり過ごす時間があってもいい。


 エリシアがどんな反応をするのか。


 そう考えると、少し楽しみになった。


 怜司は、お菓子の袋を丁寧に鞄へしまった。


 そして、ベッドへ横になった。


 身体は、確かに変わり始めている。


 だが、それは単に見た目が変わるということではない。


 今までできなかったことが、少しずつできるようになる。


 自分の未来を、自分で選べるようになる。


 怜司は、そんな変化を嬉しく思っていた。



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