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虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


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第22話 神級権能の新たな可能性――初めての魔法

 ルミエールの街を離れた黒瀬怜司は、森の浅い場所で足を止めた。


 木々の間から差し込む夕日が、足元の草を黄金色に染めている。


 遠くには街道を行き交う馬車の音が聞こえていたが、周囲に人の姿はなかった。


「……さて」


 怜司は、腰の小袋を軽く押さえた。


 中には、初めて冒険者として稼いだ銅貨八十枚が入っている。


 薬草採取。


 たった十株を集める仕事だったが、実際にやってみると、思っていた以上に学ぶことが多かった。


 植物の見分け方。


 周囲への警戒。


 そして、突然現れた小型魔物への対処。


 何より驚いたのは、《万象習得》の働きだった。


 図鑑を読んだだけでは分からなかった植物の特徴が、実物を観察することで急速に理解できるようになった。


 つまり、この権能は知識を勝手に与えてくれるものではない。


 自分が学ぼうとしたことを、普通では考えられない速度で身につけさせてくれる。


「……だったら」


 怜司は、自分の右手を見つめた。


「魔法も、練習すれば覚えられるのかな」


 冒険者ギルドで見かけた魔法使いたち。


 杖を持つ者。


 魔導書を抱える者。


 そして、登録時に測定用の水晶が砕け散った、あの出来事。


 自分には、間違いなく魔力がある。


 だが、その使い方が分からない。


 怜司は、少し考えてから首を横に振った。


「……いや、勝手に試すのは危ないか」


 もし魔力の量が異常に多いのなら、何も知らずに魔法を使うのは危険だ。


 水晶が砕けたときのことを思い出す。


 青い光。


 白い光。


 そして、黄金色の輝き。


 あれほどの反応を見せた力を、適当に扱っていいはずがない。


 怜司は、ゆっくりと息を吐いた。


「……バルドさんに相談しよう」


 そう決めると、気持ちが少し軽くなった。


 知らないことは、教えてもらえばいい。


 今の自分には、そう言える相手がいる。


 それだけでも、以前とは大きな違いだった。


     ◇ ◇ ◇


 その日の夕方。


 日本へ戻った怜司は、自室のベッドへ腰を下ろしていた。


 スマートフォンの時計は、午前十一時二十一分を示している。


 日本では、出発から一時間十八分しか経過していなかった。


「……やっぱり、不思議だな」


 異世界では、街へ向かい、ギルドで依頼を受け、草原で薬草を採取していた。


 魔物とも戦った。


 そして、依頼を報告して報酬まで受け取っている。


 それだけの出来事が、日本では一時間少々の間に収まっていた。


 怜司は、ノートへ時刻を書き込んだ。


 ただし、異世界での正確な経過時間は測れていない。


 街の鐘や太陽の位置だけでは、厳密な比較はできなかった。


「……今度、向こうで使える時計も探してみようかな」


 そんなことを考えていると、廊下から足音が聞こえた。


「お兄ちゃーん!」


 陽菜の声だった。


「お昼、何食べたい?」


 怜司は、思わず笑った。


「……何でもいいよ」


「それ、一番困るやつ!」


 扉の向こうから、即座に返事が飛んでくる。


 怜司は苦笑した。


「……じゃあ、オムライス」


「やった! 私もそれがいい!」


 陽菜の足音が、ぱたぱたと遠ざかっていく。


 怜司は、その音を聞きながら微笑んだ。


 異世界でどれだけ強くなっても。


 こうして家族と過ごす時間は、変わらず大切だった。


     ◇ ◇ ◇


 翌日の日曜日。


 午前十時過ぎ。


 怜司は、父の正臣とリビングで向かい合っていた。


 テーブルには、学校との面談内容をまとめた書類が置かれている。


「……怜司」


「うん?」


「学校から、途中経過の連絡があった」


 怜司は、背筋を伸ばした。


「……どうだった?」


 正臣は、落ち着いた声で答えた。


「複数の生徒への聞き取りを始めているそうだ。相沢君の証言についても、本人の意思を確認したうえで扱うと言っていた」


 怜司は、少し安心した。


「……そっか」


「ただ、まだ調査は終わっていない」


 正臣は続けた。


「今の段階で、何かが解決したと思わない方がいい」


「……うん」


 怜司は頷いた。


 分かっている。


 翔真たちが急に大人しくなったからといって、すべてが終わったわけではない。


 むしろ、あの視線を思い出すと、まだ何か起こるのではないかという不安が残っていた。


 正臣は、そんな怜司の様子を見て、少しだけ声を柔らかくした。


「でもな、怜司」


「……何?」


「お前が自分の言葉で話してくれたことは、大きかったと思う」


 怜司は、顔を上げた。


「……そうかな」


「ああ」


 正臣は頷いた。


「父さんたちがどれだけ説明しても、本人の気持ちまですべて代わりに伝えられるわけじゃないからな」


 怜司は、しばらく黙っていた。


 あの面談で、自分は震えていた。


 声も、何度か詰まった。


 上手く話せたとは思っていない。


 だが、父はそれでもよかったと言ってくれる。


「……ありがとう、父さん」


 怜司が言うと、正臣は笑った。


「礼を言うのは、まだ早いぞ」


「……え?」


「これからも、一緒に考えていくんだからな」


 怜司は、ゆっくりと頷いた。


「……うん」


 その言葉に、胸の奥が温かくなった。


     ◇ ◇ ◇


 昼食を終えた後。


 怜司は、再び異世界へ向かう準備をしていた。


 今日は、長居するつもりはない。


 目的は一つ。


 バルドに、魔法について相談することだ。


 自分の魔力がどれほど危険なのか。


 魔法を使うには、何から始めればいいのか。


 そして、《万象習得》がどこまで役立つのか。


 怜司は、深く息を吸った。


「……よし」


 家族には部屋で過ごすと伝え、扉を閉める。


 そして、周囲に誰もいないことを確認した。


 ――《界渡り》。


 淡い光が、目の前に広がる。


 怜司は、その中へ足を踏み入れた。


     ◇ ◇ ◇


 ルミエールの冒険者ギルド。


 怜司が扉を開くと、受付にいたミリアが顔を上げた。


「あっ、レイジ様!」


 彼女は、嬉しそうに微笑んだ。


「こんにちは!」


「……こんにちは、ミリアさん」


 怜司も笑って答えた。


「今日は、ギルド長に相談したいことがあって」


 ミリアは、少し驚いたように目を瞬かせた。


「バルド様に、ですか?」


「……はい」


「承知しました。少々お待ちくださいね」


 ミリアは、奥の部屋へ向かった。


 怜司は、受付の横で待つことにした。


 周囲には、今日も多くの冒険者がいる。


 その中には、以前の模擬戦を見ていた者もいた。


「……お、あの新人か」


「ギルド長に一発入れたっていう?」


「……ああ」


 怜司は、少しだけ顔を赤くした。


 以前は、笑われるのが怖かった。


 今も、人に注目されるのは得意ではない。


 だが、不思議と以前ほど嫌な気持ちはしなかった。


 少なくとも、ここでは自分の行動を見てくれる人がいる。


 それが、少し嬉しかった。


 やがて。


「……おう、レイジ!」


 豪快な声が響いた。


 バルドだった。


「また来たか!」


「……はい」


 怜司は、少し緊張しながら頭を下げた。


「今日は、相談したいことがあって」


 バルドは、興味深そうに眉を上げた。


「……ほう?」


 そして、口元を吊り上げた。


「面白そうじゃねえか。来い」


     ◇ ◇ ◇


 ギルドの奥にある、小さな訓練室。


 そこには、木製の人形や練習用の武器が並んでいた。


 バルドは、壁際の椅子へ腰を下ろした。


「……で?」


 怜司は、少しだけ迷った。


 だが、意を決して口を開いた。


「……魔法について、教えてほしいんです」


 バルドの表情が、少し変わった。


「……魔法?」


「……はい」


 怜司は頷いた。


「俺、魔法を使ったことがなくて」


 バルドは、しばらく怜司を見つめていた。


 そして、ゆっくりと口を開いた。


「……なるほどな」


 その声には、少しだけ納得したような響きがあった。


「お前、登録のときに測定水晶を壊しただろ」


 怜司は、気まずそうに頷いた。


「……はい」


「だが、魔法の使い方は知らねえと」


「……そうなんです」


 バルドは、顎に手を当てた。


 そして、少し考え込んだ。


「……普通なら、魔力の量と制御は別物だ」


 怜司は、真剣に耳を傾けた。


「魔力が多いからって、上手く魔法を使えるわけじゃねえ」


 その言葉に、怜司は頷いた。


 剣術と同じだ。


 身体能力が高くても、技術がなければ使いこなせない。


「……それに」


 バルドは、少しだけ目を細めた。


「お前の場合、魔力量が正確に分かってねえ」


 怜司は、思わず息を呑んだ。


「……はい」


「だから、いきなり攻撃魔法なんぞ使わせられん」


 バルドは、はっきりと言った。


「まずは、魔力を感じるところからだ」


     ◇ ◇ ◇


「……魔力を感じる?」


 怜司が聞き返すと、バルドは頷いた。


「ああ」


 そして、自分の右手を持ち上げた。


「魔力ってのは、身体の中を流れる力だ」


 怜司は、その手を見つめた。


「ただし、筋肉を動かす感覚とは違う」


 バルドは続けた。


「最初は、自分の中にある力を意識することから始める」


 そう言うと、彼は手のひらを上へ向けた。


 次の瞬間。


 ――ふわり。


 淡い青色の光が、バルドの手のひらに浮かび上がった。


 怜司は、目を見開いた。


「……すごい」


 光は、小さな球のような形をしていた。


 火でもない。


 水でもない。


 ただ、青白く輝いている。


「これは、魔力を外へ出しているだけだ」


 バルドは説明した。


「術式を組んだ魔法とは違う。魔力を形にして見せているだけだな」


 怜司は、真剣に頷いた。


「……なるほど」


 バルドは、光を消した。


「お前も、やってみろ」


 怜司は、少し驚いた。


「……え?」


「まずは、身体の中にある魔力を意識しろ」


 バルドは、真剣な表情になった。


「ただし、外へ出そうとするな。最初は感じるだけだ」


 怜司は、ゆっくりと頷いた。


「……分かりました」


 そして、目を閉じた。


     ◇ ◇ ◇


 静寂。


 訓練室の中には、二人の呼吸音だけが響いていた。


 怜司は、自分の身体へ意識を向けた。


 心臓の鼓動。


 血液の流れ。


 筋肉の動き。


 そして、その奥にある何か。


 最初は、何も分からなかった。


「……難しいな」


 小さく呟く。


 バルドは、静かに答えた。


「焦るな」


 そして、続けた。


「無理に探そうとするな。自分の中にあるものを、ゆっくり感じ取れ」


 怜司は、再び目を閉じた。


 深く息を吸う。


 ゆっくりと吐く。


 そして、意識を集中させる。


 そのとき。


 ――……ん?


 身体の奥に、微かな温かさを感じた。


 胸の中心。


 そこから、何かが広がっている。


 血液とは違う。


 筋肉とも違う。


 もっと、柔らかくて。


 もっと、静かな流れ。


 怜司は、その感覚へ意識を向けた。


 すると。


【神級権能《万象習得》が発動しました】


【魔力感知に関する理解が進行しています】


 視界の奥に、淡い文字が浮かび上がった。


 怜司は、思わず息を呑んだ。


 ――……これが。


 魔力。


 自分の中にある、不思議な力。


 それが、確かに感じられる。


 怜司は、ゆっくりと目を開いた。


「……バルドさん」


「……ん?」


「……何となく、分かりました」


 バルドの眉が、ぴくりと動いた。


「……何?」


 怜司は、自分の胸へ手を当てた。


「身体の中に、温かいものが流れている感じがします」


 バルドは、しばらく黙っていた。


 そして、ゆっくりと笑った。


「……ほう」


 その声には、明らかな驚きが含まれていた。


「初めてで、そこまで分かるか」


 怜司は、少し照れたように笑った。


「……たまたまかもしれません」


 バルドは、豪快に笑った。


「ガハハ! 謙虚なのは悪くねえ!」


 だが、すぐに真剣な表情へ戻った。


「……よし」


 そして、静かに言った。


「次は、その流れを少しだけ動かしてみろ」


     ◇ ◇ ◇


 怜司は、右手を前へ出した。


 バルドは、その横に立っている。


「いいか。ほんの少しだぞ」


「……はい」


「力を込めるな。水を一滴だけ動かすようなつもりでやれ」


 怜司は、ゆっくりと頷いた。


 そして、目を閉じた。


 身体の奥にある、温かな流れ。


 その一部を、右手へ向ける。


 ほんの少し。


 本当に、わずかだけ。


 そう意識した。


 だが。


 次の瞬間。


 ――ドクンッ!


 身体の奥で、何かが大きく脈打った。


「……っ!」


 怜司は、思わず目を開いた。


 右手のひらが、淡く光っている。


 最初は、小さな光だった。


 だが。


 ――ふわっ。


 光が、少しずつ大きくなっていく。


「……おい」


 バルドの表情が変わった。


「レイジ、止めろ」


 怜司は、慌てて意識を切り替えた。


「……はい!」


 だが、光はすぐには消えなかった。


 手のひらの上で、青白い光が揺れている。


 怜司は、焦った。


 ――……どうすれば。


 その瞬間。


 視界に、文字が浮かび上がった。


【魔力制御に関する理解が進行しています】


【過剰な魔力流出を検知】


【魔力の流れを抑制する方法を学習中】


 怜司は、はっとした。


 ――……そうか。


 外へ出そうとするから、止まらない。


 なら。


 流れを、元に戻せばいい。


 怜司は、ゆっくりと息を吐いた。


 右手へ向かう魔力の流れを、少しずつ弱める。


 そして、身体の奥へ戻すように意識する。


 すると。


 ――すうっ。


 光が、小さくなり始めた。


 やがて。


 完全に消えた。


 怜司は、深く息を吐いた。


「……はあ」


 額には、薄く汗が浮かんでいた。


 バルドは、しばらく黙っていた。


 そして。


「……お前な」


 低い声で言った。


 怜司は、思わず背筋を伸ばした。


「……はい」


 バルドは、深いため息をついた。


「……今の、普通の初心者なら絶対にやらねえぞ」


 怜司は、気まずそうに俯いた。


「……すみません」


「いや、謝る必要はねえ」


 バルドは、ゆっくりと首を振った。


「だが、分かっただろ」


 怜司は顔を上げた。


「……何がですか?」


 バルドは、真剣な表情で言った。


「お前の魔力は、扱いを間違えれば危険だ」


 その言葉に、怜司は息を呑んだ。


 バルドは続けた。


「今は、ただ光っただけだ。だが、攻撃魔法だったらどうなっていたか分からん」


 怜司は、ゆっくりと頷いた。


「……はい」


「だから、まずは制御だ」


 バルドは、はっきりと言った。


「強い魔法を覚えるのは、その後だ」


 怜司は、真剣に頷いた。


「……分かりました」


     ◇ ◇ ◇


 それから、しばらくの時間が経った。


 怜司は、魔力を感じる練習を繰り返していた。


 外へ出すのではなく、身体の中で流れを意識する。


 胸から腕へ。


 腕から胸へ。


 そして、全身へ。


 最初は、ぎこちなかった。


 だが、繰り返すうちに、少しずつ感覚が掴めてきた。


【魔力感知の習熟度が上昇しました】


【魔力制御の習熟度が上昇しました】


 怜司は、ゆっくりと目を開いた。


「……少し、分かってきました」


 バルドは、満足そうに頷いた。


「……よし」


 そして、少しだけ笑った。


「今日は、ここまでだ」


 怜司は、驚いた。


「……もうですか?」


「ああ」


 バルドは、真剣な表情になった。


「魔力の訓練は、集中力を使う」


 そして、続けた。


「疲れた状態で無理をすれば、制御を誤ることもある」


 怜司は、ゆっくりと頷いた。


「……なるほど」


 バルドは、腕を組んだ。


「それに、お前は覚えるのが早すぎる」


 怜司は、少しだけ顔を赤くした。


「……そうですか?」


「ああ」


 バルドは、豪快に笑った。


「だが、早いからって焦る必要はねえ!」


 そして、怜司の肩を軽く叩いた。


「一つずつ、確実に身につけろ」


 怜司は、しっかりと頷いた。


「……はい!」


     ◇ ◇ ◇


 訓練室を出た怜司は、ギルドの廊下を歩いていた。


 胸の奥には、まだ微かな温かさが残っている。


 魔力。


 初めて、自分の中にある力を感じた。


 そして、ほんの少しだけ外へ出すこともできた。


 だが、同時に。


 その危険性も知った。


「……すごい力なんだな」


 怜司は、自分の右手を見つめた。


 神級権能。


 無限成長。


 完全適応。


 万象習得。


 そして、界渡り。


 自分には、普通では考えられない力がある。


 だが。


 それをどう使うかは、自分次第だ。


 怜司は、ゆっくりと拳を握った。


「……ちゃんと、使えるようになろう」


 誰かを傷つけるためではなく。


 大切な人を守るために。


 そのために、もっと学ぼう。


 もっと経験を積もう。


 そして、もっと強くなろう。


 怜司は、静かに微笑んだ。


 その表情には、以前よりも確かな自信が宿っていた。


     ◇ ◇ ◇


 その頃。


 ギルド長室。


 バルドは、一人で椅子に座っていた。


 机の上には、怜司の冒険者登録記録が置かれている。


 Fランク。


 魔力測定不能。


 そして、初めての依頼を無事に達成。


 バルドは、ゆっくりと息を吐いた。


「……まったく」


 そして、小さく笑った。


「とんでもねえ新人が来たもんだ」


 魔力を初めて感じ取るまでの時間。


 そして、外へ出した魔力の反応。


 どれも、普通では考えられないものだった。


 だが、バルドが最も驚いたのは、そこではなかった。


 ――……止めやがった。


 暴走しかけた魔力を。


 自分で、抑え込んだ。


 もちろん、まだ完全な制御ではない。


 だが、初めての訓練であそこまでできる者は、ほとんどいない。


 バルドは、静かに笑った。


「……面白え」


 そして、窓の外を見つめた。


 ルミエールの街には、夕暮れの光が差し込んでいる。


「……だが、あいつにはまだ教えなきゃならねえことが山ほどある」


 力の使い方。


 冒険者としての判断。


 そして、強者としての責任。


 それらを身につけてこそ、本当の意味で強くなれる。


 バルドは、ゆっくりと頷いた。


「……しっかり鍛えてやるか」


 その声には、どこか楽しそうな響きがあった。


 そして。


 彼はまだ知らなかった。


 怜司の中に眠る力が、単なる魔力量の多さでは説明できないものであることを。


 その力が、やがてこの世界の常識を大きく覆すことになることを。


 黒瀬怜司の成長は、まだ始まったばかりだった。



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