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虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


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第161話 奇跡の第二弾、発売

第161話 奇跡の第二弾、発売


 中級回復ポーションの製造技術が完成してから、季節はいくつも巡った。


 その間、ルミナス・ライフの研究施設では、幾度となく試験と検証が繰り返されていた。


 下級ポーションとは比較にならないほど強力な回復作用。


 それは患者にとって大きな希望であると同時に、研究者たちへ慎重な判断を求めるものでもあった。


「……ようやく、ここまで来ましたね」


 研究室の窓から外を眺めながら、怜司は静かに呟いた。


 隣に立つ高瀬博士が頷く。


「ああ。長かったな」


 机の上には、これまでの研究成果をまとめた資料が積まれている。


 品質管理。


 安全性評価。


 非臨床試験。


 段階的に実施された臨床試験。


 そして、規制当局による審査。


 研究チームは、必要な工程を一つずつ積み重ねてきた。


 もちろん、すべてが順調だったわけではない。


 途中では追加データの提出を求められ、製造工程の一部を見直したこともあった。


 しかし、怜司たちは決して焦らなかった。


 患者の命を預かる薬だからこそ、慎重でなければならない。


 それが、研究に関わる全員の共通認識だった。


「黒瀬君」


 高瀬博士が声をかける。


「君に見せたいものがある」


「何でしょう?」


 博士は一通の書類を差し出した。


 怜司が目を通す。


 そこに記されていた内容を理解した瞬間、思わず息を呑んだ。


「……承認、されたんですか?」


「ああ」


 博士の顔に、満面の笑みが浮かぶ。


「中級回復ポーションが、指定された適応と使用条件で正式に承認された!」


「……っ!」


 怜司は書類を握りしめた。


 長い時間をかけてきた。


 何度も試験を繰り返した。


 研究者たちと議論を重ね、問題が見つかるたびに改善してきた。


 その努力が、ようやく一つの形になったのだ。


「ありがとうございます……!」


 怜司は深く頭を下げた。


「博士、本当にありがとうございます!」


「何を言っとる!」


 高瀬博士は豪快に笑った。


「君がいなければ、この研究そのものが存在しなかったんだぞ!」


 篠原も穏やかに微笑んでいた。


「おめでとうございます、黒瀬社長」


「篠原さんも、本当にありがとうございました」


「まだ終わりではありませんよ」


 篠原はいつもの慎重な口調で続けた。


「これからは安定供給と市販後の安全性確認が重要になります」


「はい。もちろんです」


 怜司は力強く頷いた。


 医薬品は、発売して終わりではない。


 むしろ、そこからが新しい責任の始まりなのだ。


     ◇


 数日後。


 ルミナス・ライフと九条院グループ、西園寺グループによる合同記者会見が開かれた。


 会場には国内外の報道関係者が集まっていた。


 下級回復ポーションの発売によって、すでにルミナス・ライフの名前は広く知られている。


 その企業が、第二の回復ポーションを発表する。


 注目が集まるのも当然だった。


「それでは、株式会社ルミナス・ライフ代表取締役、黒瀬怜司よりご説明いたします」


 司会者の紹介を受け、怜司が壇上へ上がる。


 無数のカメラが向けられた。


 以前なら、これほど大勢の視線を浴びることなど考えられなかった。


 しかし、今の怜司は違う。


 緊張はしている。


 それでも、自分が何を伝えるべきなのかは分かっていた。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」


 怜司は丁寧に頭を下げた。


「このたび、私たちが開発を進めてきた中級回復ポーションが、正式な承認を受けました」


 会場がざわめく。


 大型モニターに、製品の概要が表示された。


 深い外傷。


 骨折。


 一定の重症度までの火傷。


 承認された適応の範囲内で、従来とは異なる回復作用が確認されている。


「もちろん、すべての怪我や病気に使えるわけではありません。使用条件も定められています」


 怜司は続けた。


「ですが、この薬によって、これまで長い治療を必要としていた患者さんに、新しい選択肢を届けられると考えています」


 記者の一人が手を挙げた。


「黒瀬社長。今回の製品は、従来の医薬品市場に大きな影響を与えると予想されています。その点については、どうお考えでしょうか?」


 怜司は少し考えてから答えた。


「市場がどう変わるかよりも、患者さんにとって良い治療法が増えることが大切だと思っています」


 会場が静かになる。


「私たちは、誰かの会社を困らせるために薬を作っているわけではありません。必要としている人に届けるために作っています」


 その言葉に、九条院家と西園寺家の両当主が静かに頷いた。


 怜司の考えは、最初から変わっていない。


 ただ、その理想を守るために、戦うことを覚えただけだった。


     ◇


 発売初日。


 中級回復ポーションの出荷が始まった。


 当面は、適切な管理体制を備えた医療機関を中心とする限定供給だった。


 それでも、各地の病院から注文が相次いだ。


「初回供給分、予定どおり出荷完了です!」


 担当者の報告に、研究施設の会議室が沸いた。


 怜司はほっと息をついた。


「よかった……」


 高瀬博士が笑う。


「まだ安心するには早いぞ。これから実際の医療現場で使われるんだからな」


「はい!」


 怜司は笑顔で答えた。


 その日の夜。


 自宅へ戻ると、家族が待っていた。


「お兄ちゃん!」


 陽菜が勢いよく駆け寄ってくる。


「ニュース見たよ! すっごいじゃん!」


「ありがとう、陽菜」


「もう完全に有名人だね!」


「それはちょっと困るかな……」


 怜司が苦笑すると、陽菜は楽しそうに笑った。


 母の美咲も嬉しそうだった。


「本当におめでとう、怜司」


「ありがとう、母さん」


 父の正臣が穏やかに頷く。


「よく頑張ったな」


 その一言に、怜司は胸が熱くなった。


「……うん」


 どれほど大きな会社を経営していても。


 どれほど世間から注目されても。


 家族の前では、ただの黒瀬怜司でいられる。


 それが何より嬉しかった。


 中級回復ポーション。


 その発売は、日本の医療業界に新たな時代の到来を告げるものとなった。


 そして同時に。


 東邦メディカルホールディングスにとって、これまでにない試練の始まりでもあった。

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