↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
148/162

第149話 世界が驚愕した日――奇跡の回復薬、ついに発売

 発売当日の朝。


 俺は、いつもより早く目を覚ました。


 窓の外には、澄み切った青空が広がっている。


 今日は、株式会社ルミナス・ライフにとって特別な日だ。


 下級回復ポーション。


 正式な製造販売承認を受けた、俺たちの最初の製品。


 その発売日だった。


「……いよいよ、か」


 俺は、小さく呟いた。


 最初に回復ポーションを作ったときは、こんな日が来るなんて想像もしていなかった。


 異世界で学んだ錬金術。


 魔石を利用した製造装置。


 そして、日本の研究者たちと積み重ねてきた試験。


 そのすべてが、今日につながっている。


 俺は、ゆっくり制服へ着替えた。


 そう。


 今日は、普通に学校へ行く。


 発売のために授業を休む必要はない。


 製造も販売も、専門家たちが担当してくれている。


 俺は、あくまでルミナス・ライフの代表取締役。


 すべてを一人で動かす必要はないんだ。


     ◇


「お兄ちゃん!」


 リビングへ入ると、陽菜がスマートフォンを片手に駆け寄ってきた。


「……何?」


「見て見て!」


 画面を差し出される。


 そこには、ニュース記事が表示されていた。


『新型創傷治療薬、本日発売』


『従来と異なる製造技術に注目』


『九条院・西園寺両グループが共同事業を支援』


 俺は、思わず目を見開いた。


「……もう記事になってるんだ」


「そうだよ!」


 陽菜は、嬉しそうに笑った。


「お兄ちゃんの会社、ニュースになってる!」


 母さんも、キッチンから微笑んだ。


「朝のニュースでも紹介されていたわよ」


「……本当に?」


「ええ」


 父さんが、新聞を畳んだ。


「ただし、個人情報については、きちんと守られているようだな」


「うん」


 俺は頷いた。


 今回の広報では、会社名と製品情報を中心に発表している。


 俺が高校生であることや、魔力を使えることは公表していない。


 もちろん、異世界のことも秘密だ。


 魔石については、特殊な製造技術の一部として、必要な範囲で説明している。


 すべてを公開する必要はない。


 大切なのは、薬を必要としている人たちへ安全に届けることだ。


「……お兄ちゃん」


 陽菜が、にやりと笑った。


「何?」


「……有名人になっちゃうかもね!」


「……勘弁してほしいな」


 俺が苦笑すると、家族が笑った。


     ◇


 学校へ到着すると、教室はいつも通りだった。


「おっ、怜司!」


 隼人が、元気よく声をかけてくる。


「おはよう、隼人」


「おはよう! なあ、今日のニュース見たか?」


 俺は、少しだけ緊張した。


「……何のニュース?」


「新しい薬が発売されたってやつ!」


 ……やっぱり。


 隼人は、興奮した様子で続けた。


「なんか、傷の治りを助けるすごい薬らしいぞ!」


「……へえ」


 俺は、できるだけ自然に答えた。


 その隣で、蒼真が静かに口を開く。


「ただ、報道ではかなり慎重な説明だったな」


「……そうなの?」


「ああ。承認された用途は限定的だし、万能薬というわけではないらしい」


 俺は、心の中で頷いた。


 その通りだ。


 今発売されるのは、下級回復ポーションだけ。


 しかも、使用できる範囲は限られている。


 けれど。


 その限定された範囲でも、従来の治療では考えられなかった効果が確認されていた。


「……それでも、すごいよな!」


 隼人が笑う。


「こういう技術がどんどん進んだら、世の中変わりそうだよな!」


 俺は、静かに微笑んだ。


「……そうだね」


 その言葉が、何だか嬉しかった。


     ◇


 昼休み。


 俺のスマートフォンに、九条院家の当主から連絡が届いた。


『黒瀬君。発売開始から、予想を上回る問い合わせが入っている』


 俺は、思わず目を見開いた。


 続いて、もう一通。


『初回出荷分は、すでにすべて引き当てが決まった。詳しい報告は放課後にしよう』


「……えっ?」


 思わず声が漏れた。


 初回出荷分が、もう?


 まだ発売初日なのに。


 俺は、画面を見つめたまま固まってしまった。


 すると。


「……レイジさん?」


 澪さんの声が聞こえた。


 顔を上げると、澪さんが心配そうに見つめている。


「……どうかしましたか?」


「……いえ」


 俺は、少しだけ笑った。


「……どうやら、初回出荷分が全部売れたみたいです」


 澪さんが、目を大きく見開いた。


「……本当ですか!?」


「はい」


 俺は頷いた。


「まだ、詳しい数字は分かりませんけど」


 澪さんは、嬉しそうに微笑んだ。


「……すごいです、レイジさん!」


 その声に、麗華さんも近づいてきた。


「……何のお話ですの?」


 澪さんが説明すると、麗華さんの表情が変わった。


「……初回出荷分が、もう?」


「はい」


 俺は頷いた。


 麗華さんは、少しだけ驚いたあと、柔らかく微笑んだ。


「……おめでとうございます、黒瀬さん」


「ありがとうございます」


 すると、澪さんが小さく笑った。


「……これから、ますます忙しくなりそうですね」


「……そうですね」


 俺は苦笑した。


 けれど。


 不思議と、不安はなかった。


 支えてくれる人たちがいる。


 そのことが、何より心強かった。


     ◇


 放課後。


 俺は、研究施設の会議室で報告を受けていた。


 九条院家と西園寺家の当主。


 販売部門の責任者。


 高瀬博士。


 篠原さん。


 そして、榊原さん。


 全員が、どこか興奮した表情をしている。


「……黒瀬君」


 九条院家の当主が、静かに口を開いた。


「まず、発売初日の結果を報告しよう」


「……はい」


 俺は、背筋を伸ばした。


 大型モニターに、販売状況が表示される。


 初回出荷数量。


 医療機関からの注文。


 追加発注の問い合わせ。


 そして、今後の供給予定。


「……初回出荷分、五万本」


 俺は、思わず呟いた。


 九条院家の当主が頷く。


「そのすべてについて、出荷先が確定した」


「……五万本、全部ですか?」


「ああ」


 俺は、言葉を失った。


 もちろん、五万本すべてが患者に使用されたわけではない。


 医療機関や流通先への供給が決まったという意味だ。


 それでも。


 発売初日で、五万本。


 想像していた以上だった。


「……すごいですね……」


 俺が呟くと、西園寺家の当主が微笑んだ。


「それだけ、期待されているということだよ」


 そして、少しだけ真剣な表情になる。


「ただし、ここからが大切だ」


「……はい」


「需要が大きいからといって、無理に製造量を増やしてはいけない」


 篠原さんも頷いた。


「品質を維持できる範囲で、段階的に増産します」


「……お願いします」


 俺は、深く頭を下げた。


     ◇


 さらに、販売部門から報告が続いた。


 医療機関からの追加注文。


 海外の研究機関からの問い合わせ。


 そして、製薬企業からの提携希望。


 その数は、想像以上だった。


「……こんなに……」


 俺は、思わず呟いた。


 九条院家の当主が頷いた。


「今回の製品は、既存の医薬品とは異なる特徴を持っている」


 西園寺家の当主も続ける。


「そのため、業界全体が注目しているんだ」


 俺は、静かに頷いた。


 もちろん、すべてが好意的な反応というわけではない。


 慎重な意見もある。


 効果を疑う声もある。


 製造技術の透明性について、質問も寄せられている。


 それらには、きちんと向き合わなければならない。


 けれど。


 少なくとも、必要としている人たちがいる。


 そのことは、確かだった。


     ◇


 会議が終わったあと。


 俺は、研究施設の廊下を歩いていた。


 窓の外には、夕暮れの空が広がっている。


「……発売できたんだな」


 小さく呟く。


 最初に魔法を使えるようになった日。


 異世界で錬金術を学んだ日。


 初めて回復ポーションを作った日。


 そして、琴音さんの命を救った日。


 いくつもの出来事が、頭の中を駆け巡った。


 あのときは、ただ目の前の人を助けたかった。


 でも、今は。


 もっと多くの人を助けられるかもしれない。


 俺は、静かに笑った。


「……ここからだな」


 そのとき。


 スマートフォンが震えた。


 美月さんからだった。


『怜司! 今日のニュース見た!? すごい薬が発売されたらしいよ!』


 俺は、思わず笑った。


『見たよ。かなり話題になってるね』


 すると、すぐに返事が届く。


『ああいう薬があったら、怪我で悩む人も減るかもしれないね!』


 その言葉に、胸が温かくなった。


『そうだね。そうなったらいいと思う』


 俺は、ゆっくり返信した。


 美月さんは、まだこの薬が俺の会社から生まれたものだとは知らない。


 詩織さんも。


 蒼真も、隼人も。


 それでいい。


 今は、まだ。


 大切なのは、薬が必要な人へ届くことだ。


 俺は、夕暮れの空を見上げた。


 発売初日。


 五万本。


 そして、想像を超える反響。


 その数字が、これからさらに大きくなっていくことを。


 このときの俺は、まだ知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。