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虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


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142/162

第142話 家族に贈る絶対防御――もう二度と失わないために

「……お兄ちゃん、最近また何か作ってるでしょ?」


 日曜日の朝。


 リビングで朝食を食べていると、陽菜が突然そんなことを言い出した。


「……何で?」


「だって、昨日もずっと部屋にいたじゃん」


 陽菜は、じっと俺を見つめる。


「しかも、何か楽しそうだったし」


「……そんなに分かりやすかった?」


「うん!」


 即答された。


 ……まったく。


 この妹には、隠し事が難しいな。


 母さんが、くすくすと笑った。


「怜司、何か新しい研究でもしていたの?」


「……うん。まあ、そんなところ」


 俺は、少しだけ笑った。


「実は、皆に渡したいものがあるんだ」


 その瞬間。


 陽菜の目が、ぱっと輝いた。


「えっ!? プレゼント!?」


「……まあ、そうだね」


「やったー!」


 陽菜が、嬉しそうに両手を上げた。


 父さんも、新聞から顔を上げる。


「……何を作ったんだ?」


「ちょっと待ってて」


 俺は席を立ち、自室へ向かった。


 そして、用意していた三つの箱を持って戻ってきた。


     ◇


「……まず、父さん」


 俺は、黒い箱を差し出した。


「……俺に?」


「うん」


 父さんが、少し驚いたように箱を受け取る。


 蓋を開けると、中には落ち着いた銀色のブレスレットが入っていた。


 中央には、小さな青い結晶が埋め込まれている。


「……これは」


「護身用のアクセサリーだよ」


 俺が答えると、父さんは首を傾げた。


「……護身用?」


「うん。あとで説明するね」


 続いて、母さんへ白い箱を渡した。


「……母さんには、これ」


「まあ……」


 母さんが、嬉しそうに蓋を開ける。


 中には、細い銀のチェーンがついたペンダント。


 小さな青い結晶が、上品に輝いていた。


「……綺麗ね」


「母さんに似合うと思って」


 その言葉に、母さんが柔らかく微笑んだ。


「……ありがとう、怜司」


 そして。


「……陽菜」


「はいっ!」


 待ちきれない様子の妹へ、小さな箱を差し出した。


「……これ」


 陽菜は、勢いよく蓋を開けた。


「……わあっ!」


 中には、可愛らしい星形のチャームがついたペンダントが入っていた。


 中央には、小さな青い魔石。


 光の角度によって、淡く輝いて見える。


「……可愛い!」


 陽菜は、目を輝かせた。


「お兄ちゃん、これ本当にくれるの!?」


「もちろん」


「やったー!」


 陽菜は、嬉しそうにペンダントを胸元へ当てた。


「ねえねえ! 似合う!?」


「うん。似合ってるよ」


「えへへ!」


 その笑顔を見て、俺も自然と笑った。


 けれど。


 本当に伝えたいのは、ここからだった。


     ◇


「……実は、そのアクセサリーには魔法が込めてあるんだ」


 俺がそう言うと、三人の表情が変わった。


「……魔法?」


 父さんが、ブレスレットを見つめる。


「うん」


 俺は頷いた。


「中に入っているのは、小さな魔石だよ」


 母さんが、ペンダントの結晶へ視線を落とした。


「……この青い石が?」


「そう」


 俺は、ゆっくり説明を始めた。


「この魔石には、防御魔法を込めてあるんだ」


 陽菜が、目を輝かせる。


「……防御魔法!?」


「うん」


「じゃあ、バリアみたいなもの!?」


「かなり近いかな」


 俺は笑った。


「危険を感じたときに、自動で結界を張ってくれる」


 父さんが、真剣な表情になった。


「……自動で?」


「うん」


 俺は頷いた。


「持ち主へ向けられた悪意や、命に関わるような危険を感知すると、結界が発動する仕組みなんだ」


 母さんが、少し驚いたように口元へ手を当てた。


「……そんなことまでできるの?」


「うん」


 俺は続けた。


「刃物や銃弾、爆発、それから大型車両との衝突みたいな危険にも耐えられるように設計してある」


 その瞬間。


 父さんが、思わず息を呑んだ。


「……そこまで……?」


「うん。魔法による模擬試験では、かなり強い衝撃も防げたよ」


 俺は、少しだけ真剣な表情になった。


「ただし、絶対に無敵というわけじゃない。魔石の魔力には限りがあるし、まだ想定していない状況もあると思う」


 父さんは、静かに頷いた。


「……なるほど」


「それと、結界が発動したら、必ず俺に連絡してほしい」


「……どうして?」


 陽菜が首を傾げた。


「魔力を消費するからだよ」


 俺は説明した。


「一度使ったあとは、俺が魔力を補充する必要があるんだ」


「……じゃあ、使い切ったら?」


「そのままだと、次の危険を防げなくなる可能性がある」


 俺は、はっきり答えた。


「だから、使ったら必ず教えてね」


 陽菜は、真剣な表情で頷いた。


「……分かった!」


     ◇


「……でも、怜司」


 母さんが、静かに口を開いた。


「どうして、こんなものを作ろうと思ったの?」


 俺は、少しだけ黙った。


 そして、ゆっくり答えた。


「……琴音さんの事故があったから」


 その言葉に、三人の表情が変わった。


「……あのとき」


 俺は、静かに続けた。


「上級ポーションが間に合ったから、琴音さんは助かった」


 母さんが、ゆっくり頷く。


「……そうね」


「でも、もし間に合わなかったらって考えると……」


 俺は、少しだけ俯いた。


「……怖かったんだ」


 しばらく、誰も何も言わなかった。


「……それに」


 俺は、顔を上げた。


「今度は、父さんや母さん、陽菜が同じような事故に遭うかもしれない」


 陽菜が、静かに俺を見つめた。


「……お兄ちゃん」


「俺がそばにいれば、何とかできるかもしれない」


 俺は、ゆっくり続けた。


「でも、いつも一緒にいられるわけじゃないから」


 その言葉に、母さんの目が少し潤んだ。


「……だから」


 俺は、三人を見渡した。


「俺がいないときでも、皆を守れるものを作りたかったんだ」


 沈黙が流れた。


 やがて。


「……怜司」


 父さんが、静かに口を開いた。


「……ありがとう」


 その声は、少し震えていた。


「……父さん?」


「……お前は、そんなことまで考えてくれていたんだな」


 父さんは、ブレスレットを見つめた。


 そして、ゆっくり腕へ装着する。


「……大切にするよ」


 その言葉に、胸が温かくなった。


 母さんも、ペンダントを胸元へ当てた。


「……ありがとう、怜司」


 そして、優しく微笑む。


「……でもね」


「……うん?」


「あなた自身も、ちゃんと自分を守るのよ」


 俺は、少し驚いた。


「……俺?」


「そうよ」


 母さんは、真剣な表情になった。


「家族を守りたいと思ってくれるのは嬉しい。でも、あなたが無理をして傷ついたら、私たちは悲しいんだから」


 その言葉に、胸の奥が熱くなった。


「……うん」


 俺は、ゆっくり頷いた。


「……分かった」


     ◇


「……お兄ちゃん!」


 突然、陽菜が俺へ抱きついてきた。


「……うわっ!?」


「……ありがとう!」


 その声は、いつもより少しだけ小さかった。


「……陽菜?」


「……私、お兄ちゃんがいてくれてよかった」


 俺は、思わず言葉を失った。


 陽菜は、ぎゅっと抱きついてくる。


「……大好きだよ、お兄ちゃん」


 その言葉に、胸の奥が温かくなった。


「……俺もだよ」


 俺は、妹の頭を優しく撫でた。


 すると。


「……えへへ!」


 陽菜が、いつもの笑顔に戻った。


「じゃあ、お兄ちゃん!」


「……何?」


「これ、学校につけて行ってもいい!?」


「校則に引っかからないならね」


「……えー!」


 俺は、思わず笑った。


「無理なら、鞄の内側につけるとか、目立たない方法を考えよう」


「……そっか!」


 陽菜は、嬉しそうに頷いた。


「じゃあ、毎日持って行く!」


 その言葉に、俺は少し安心した。


     ◇


 午後。


 俺は、父さんたちへ簡単な実演を見せることにした。


 もちろん、危険なことはしない。


 小さな魔力弾を使った、安全な確認だ。


 庭の一角に、試験用の結界を張る。


 そして、父さんへブレスレットを装着してもらった。


「……本当に大丈夫なのか?」


「うん。危険のない範囲で確認するから」


 俺は、弱い魔力弾を作った。


 そして、父さんへ向けてゆっくり放つ。


 次の瞬間。


 キィンッ!


 透明な膜が、父さんの周囲へ現れた。


「……おおっ!?」


 父さんが、驚いたように声を上げた。


 魔力弾は、結界へ触れた瞬間に消えた。


 父さんの身体には、何の衝撃も伝わっていない。


「……すごいな……」


 母さんも、目を見開いていた。


「……本当に、守ってくれるのね」


 陽菜は、大興奮だった。


「お兄ちゃん! すごい! すごいよ!」


 俺は、少しだけ笑った。


「……これで、少しは安心してもらえるかな」


 父さんが、ゆっくり頷いた。


「……ああ」


 そして、真剣な表情で俺を見つめた。


「……でも、怜司」


「……うん?」


「……これがあるからって、無茶はしないぞ」


「もちろん」


 俺は頷いた。


「安全のためのものだからね」


 父さんは、満足そうに笑った。


     ◇


 その夜。


 俺は、自室で残りのアクセサリーを確認していた。


 九条院家の三人。


 西園寺家の四人。


 合計七人分。


 それぞれの箱には、名前が書いてある。


 俺は、静かに息を吐いた。


「……次は、皆さんだな」


 魔力の秘密を共有した人たち。


 俺を信じ、支えてくれている人たち。


 その人たちを、少しでも守りたい。


 それが、今の俺の願いだった。


 机の上に並んだ小さな箱を見つめながら。


 俺は、次の訪問の予定を考え始めた。

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