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虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


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140/162

第140話 始動する奇跡の研究所――少年社長が描く新たな未来

 魔力の秘密を両家へ打ち明けてから、一週間。


 株式会社ルミナス・ライフの事業は、新しい段階へ進もうとしていた。


 その日。


 俺は、九条院家と西園寺家の当主に案内され、郊外にある研究施設を訪れていた。


「……ここが?」


 目の前に広がっていたのは、白を基調とした大きな建物だった。


 周囲には広い敷地があり、建物の前には整備された駐車場が広がっている。


 外観は、どこか大学の研究棟を思わせる雰囲気だった。


「……すごいですね」


 思わず呟くと、九条院家の当主が微笑んだ。


「まだ、正式にすべての設備が整っているわけではないけれどね」


 西園寺家の当主も頷いた。


「まずは、ここを研究開発の拠点として使う予定だ」


「……ここを、ですか?」


「ああ」


 俺は、もう一度建物を見上げた。


 自分の会社が、こんな場所で研究を進めることになるなんて。


 少し前までの俺なら、絶対に想像できなかったと思う。


「……本当に、ありがとうございます」


 俺が頭を下げると、九条院家の当主が笑った。


「まだ礼を言うのは早いよ」


「……え?」


「中を見てからにしよう」


 そう言って、建物の入口へ向かった。


     ◇


 施設の中は、想像以上に本格的だった。


 広い廊下。


 清潔に保たれた研究室。


 分析装置が並ぶ部屋。


 そして、試作品の製造や品質確認を行うための専用スペース。


 俺は、思わず目を輝かせた。


「……すごい……!」


 九条院家の当主が、楽しそうに笑う。


「気に入ってもらえたかな?」


「はい!」


 思わず、勢いよく答えてしまった。


 その様子を見て、澪さんがくすりと笑う。


「レイジさん、とても嬉しそうですね」


「……すみません。ちょっと興奮してしまって」


「ふふ。いいんですよ」


 澪さんは、柔らかく微笑んだ。


「私も、レイジさんが喜んでくださって嬉しいです」


 その隣で、麗華さんが小さく笑う。


「黒瀬さん。まだ驚くのは早いですわ」


「……え?」


「こちらへ」


 麗華さんに案内され、俺たちは別の部屋へ向かった。


 扉が開く。


 そこには。


「……えっ?」


 俺は、思わず足を止めた。


 広い実験室。


 中央には、作業台。


 壁際には、さまざまな測定機器。


 そして、奥には製造装置を設置するためのスペースが確保されていた。


「……ここは?」


 西園寺家の当主が、静かに答えた。


「君の研究用に、準備した部屋だよ」


「……俺の?」


「ああ」


 俺は、言葉を失った。


 自分専用の研究室。


 そんなものを持つ日が来るなんて、考えたこともなかった。


「……もちろん、今後は必要な専門家と協力して使ってもらうことになる」


 当主は続けた。


「ただし、君の技術に関する重要な部分は、適切に管理できるようにしてある」


 九条院家の当主も頷いた。


「魔石式製造機についても、まずはこの施設で評価を進めよう」


 俺は、ゆっくり頷いた。


「……ありがとうございます」


 胸の奥が、熱くなった。


     ◇


 その後。


 会議室では、研究開発の具体的な計画について説明が行われた。


 参加していたのは、九条院家と西園寺家の当主。


 榊原さん。


 高瀬博士。


 篠原さん。


 そして、俺。


 澪さんと麗華さんも、見学という形で同席していた。


 ただし、魔力の存在については、まだ二人の研究者へ明かしていない。


 そのため、今日の会議では製造装置の詳細な原理ではなく、今後の研究体制と情報管理について話し合うことになっていた。


「まず、下級回復ポーションについてですが」


 高瀬博士が、資料を開いた。


「現在、成分分析に加え、物性や安定性の評価を進めています」


 俺は、真剣に聞いていた。


「ただし、これまでの分析だけでは、完成品にどのような作用があるのか十分に説明できていません」


「……はい」


「今後は、必要な倫理審査や安全管理を踏まえたうえで、段階的に評価方法を検討する必要があります」


 俺は頷いた。


「分かりました」


 高瀬博士は、少しだけ微笑んだ。


「黒瀬君。君の技術には、非常に興味があります」


「……ありがとうございます」


「ただし、科学的な評価は慎重に進めなければなりません」


「はい」


 俺は、はっきり答えた。


「俺も、そこは大切にしたいと思っています」


 その言葉に、高瀬博士が満足そうに頷いた。


     ◇


「それから、製造装置についてですが」


 篠原さんが口を開いた。


「今後、試作品の製造条件を一定に保てるかどうか、確認していきたいと考えています」


「……はい」


「ただし、現段階では装置の詳細な構造や動作原理について、まだ十分な情報をいただいていません」


 その言葉に、俺は少しだけ緊張した。


 当然の質問だった。


 魔石式製造機の中核には、魔力という未知の力がある。


 それを説明しないまま、正式な研究を進めるのは難しい。


「……その点については」


 俺は、ゆっくり口を開いた。


「近いうちに、きちんと説明したいと思っています」


 篠原さんが、少し驚いたように顔を上げた。


「……本当ですか?」


「はい」


 俺は頷いた。


「ただ、今まで知られていなかった技術なので、説明する順番や方法を慎重に考えたいんです」


 その言葉に、榊原さんが頷いた。


「……その件については、法務面からも整理しておきましょう」


 俺は、少し安心した。


「ありがとうございます」


 九条院家の当主も、静かに口を開いた。


「研究に必要な情報は、適切な形で共有していく。ただし、黒瀬君個人の安全にも十分配慮する」


 西園寺家の当主が頷く。


「その方針で進めましょう」


 研究者たちも、納得したように頷いた。


     ◇


 会議が終わったあと。


 俺は、研究室へ戻っていた。


 まだ何も置かれていない作業台。


 これから、ここへ自分の製造装置を設置する。


 そして、専門家たちと一緒に研究を進める。


 そのことを考えると、胸が高鳴った。


「……レイジさん」


 後ろから、澪さんの声が聞こえた。


「……澪さん」


 振り返ると、澪さんが柔らかく微笑んでいた。


「……嬉しそうですね」


「……はい」


 俺は、少し照れくさくなりながら頷いた。


「こんな研究室を使えるなんて、夢みたいです」


 澪さんは、静かに微笑んだ。


「……レイジさんが、頑張ってきたからですよ」


「……そんな」


「いいえ」


 澪さんは、ゆっくり首を横に振った。


「……私は、そう思います」


 その言葉に、胸が温かくなった。


「……ありがとうございます」


 すると、麗華さんも近づいてきた。


「黒瀬さん」


「はい?」


「……これから、ますます忙しくなりそうですわね」


「……そうですね」


 俺は苦笑した。


「でも、学校もちゃんと通うつもりです」


 麗華さんは、満足そうに頷いた。


「それがよろしいですわ」


 そして、少しだけ悪戯っぽく微笑む。


「……それに、私との約束も忘れていただいては困りますもの」


「……書店イベントのことですか?」


「ええ」


 麗華さんは、嬉しそうに笑った。


「楽しみにしていますわ」


 澪さんも、柔らかく微笑んだ。


「……私との美術展も、忘れないでくださいね」


「もちろんです」


 俺が答えると、二人は顔を見合わせた。


 そして、くすりと笑った。


 ……何だか、少しだけ安心した。


 会社を作っても。


 研究が忙しくなっても。


 こういう時間は、大切にしたい。


     ◇


 その日の帰り道。


 俺は、スマートフォンに届いたメッセージを確認していた。


 父さんからだった。


『研究施設はどうだった?』


 俺は、すぐに返信した。


『すごかったよ。専用の研究室まで用意してもらった』


 すると、少しして返事が届いた。


『そうか。よかったな。でも、無理はするなよ』


 俺は、思わず笑った。


『分かってる。ありがとう』


 続いて、母さんからもメッセージが届く。


『今日は何時頃帰る? 夕飯は怜司の好きなものにしてあるわよ』


 俺は、胸が温かくなるのを感じた。


『もうすぐ帰るよ。ありがとう』


 さらに。


 陽菜からもメッセージが届いた。


『お兄ちゃん! 帰ったら魔法見せてね!』


「……まったく」


 俺は、思わず笑ってしまった。


 でも。


 こういう家族がいるから、頑張れるんだと思う。


     ◇


 夜。


 自室へ戻った俺は、机の上に置いた魔石を見つめていた。


 淡い青色の結晶。


 その中には、俺の魔力が蓄えられている。


 今はまだ、俺しか魔力を扱えない。


 だから、製造できる量にも限界がある。


 けれど。


 魔石式製造機を改良し、効率を高めることができれば。


 もっと多くの回復ポーションを作れるようになる。


 そして。


 いつか、多くの人へ届けられるかもしれない。


「……まずは、下級からだな」


 俺は、ノートを開いた。


 品質の安定。


 製造工程の記録。


 安全性の確認。


 そして、魔石の供給体制。


 やるべきことは、山ほどある。


 けれど。


 今の俺には、それが苦痛ではなかった。


 むしろ。


 新しいことを学び、できることが増えていくのが楽しかった。


 俺は、静かにペンを走らせた。


 株式会社ルミナス・ライフ。


 その研究は、まだ始まったばかりだ。


 けれど。


 ここから先、どんな未来が待っているのか。


 今は、それが楽しみで仕方なかった。


 そして。


 この小さな研究所から生まれる技術が、やがて世界中の人々の希望になることを。


 俺は、まだ知らなかった。


 ただ一つ、確かなことがある。


 俺は、もう以前の俺ではない。


 自分の力を信じ、仲間を信じ、未来へ向かって歩いている。


 その一歩一歩が、いつか大きな道になる。


 そう信じながら。


 俺は、新しい研究計画を書き進めていったのだった。

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