↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
119/154

第119話 魔石式製造機――誰もが奇跡を作れる未来

 ポーションの日本での再現に成功してから、数日が経った。


 俺の机の上には、以前よりも分厚くなったノートが置かれている。


 中身は、魔石式ポーション製造機の設計案。


 最初は思いつきを書き留めただけだった。


 しかし、異世界の魔道具に関する知識と、日本の機械制御技術を調べていくうちに、少しずつ具体的な形が見えてきた。


「……問題は、魔力を一定量ずつ取り出すところだな」


 俺は図面を見ながら呟いた。


 魔石に魔力を蓄えること自体は難しくない。


 異世界でも、魔力を蓄積するための魔石は使われている。


 俺自身も、魔力を流し込むことができる。


 けれど、魔石から薬液へ魔力を注ぐとなると話が違う。


 多すぎれば、薬液の魔力構造が乱れる。


 少なすぎれば、回復効果が十分に発現しない。


 必要なのは、誰が操作しても同じ品質になる仕組みだった。


「……まずは、実物を調べるか」


 俺は人目につかない場所を確保してから、《界渡り》を発動した。


     ◇


 ルミエールの冒険者ギルド。


 受付へ向かうと、ミリアさんが俺に気づいて笑顔を見せた。


「レイジ様。こんにちは」


「こんにちは。今日は魔石について聞きたいことがあって」


「魔石、ですか?」


「はい。魔力を蓄えておける種類のものを探しているんです」


 ミリアさんは少し考えたあと、頷いた。


「それでしたら、魔道具用の蓄魔石ですね。通常の魔石とは用途が異なりますが、ギルドでも取り扱いがあります」


「蓄魔石……」


「魔力を蓄積し、必要に応じて放出する性質があります。ただし、品質によって容量や安定性が異なります」


 俺は説明を聞きながら、思わず身を乗り出した。


 まさに探していたものだ。


「実物を見せてもらえますか?」


「もちろんです」


 しばらくして、ミリアさんが小さな箱を持って戻ってきた。


 中には、透明感のある青い結晶が三つ並んでいた。


「こちらが一般的な蓄魔石です。小型魔道具などに使用されます」


 俺は一つを手に取った。


 掌の中で、わずかな魔力の流れを感じる。


 なるほど。


 内部には、魔力を留めるための特殊な構造がある。


 普通の石とはまったく違う。


「……これ、購入できますか?」


「はい。ただ、蓄魔石は普通の魔石より高価ですよ」


「まずは試験用なので、少量で大丈夫です」


 必要な分を購入し、俺はギルドを後にした。


 次に向かったのは、魔道具を扱う職人の店だった。


 魔石の使い方を調べるためだ。


 そこでは、魔力を蓄えた石から明かりを灯す装置や、小さな冷却箱などが売られていた。


 俺は店主に仕組みを尋ね、いくつかの魔道具を見せてもらった。


 そして、《万象習得》を使って内部構造を理解していく。


 魔力を流すための回路。


 出力を調整する機構。


 魔石の残量が減ったときに動作を止める仕組み。


 どれも、俺が作ろうとしている装置に応用できそうだった。


(……これなら、いける)


 ただし、そのまま日本へ持ち込んで使うつもりはない。


 外見からして、明らかに日本の機械とは違う。


 だからこそ、制御部分は日本の技術で作りたい。


 魔石を中核に置き、それ以外はできる限り普通の製造装置にする。


 それが、今の俺にとって最も現実的な方法だった。


     ◇


 日本へ戻った俺は、購入した蓄魔石の一つに魔力を注いでみた。


 青い結晶の内部へ、光が吸い込まれていく。


 しばらくすると、魔石全体が淡く輝き始めた。


「……よし」


 充填は成功。


 次は、放出量の制御だ。


 俺は異世界で学んだ魔力回路の仕組みを参考に、試験用の小型装置を組み立て始めた。


 使用するのは、日本で購入した一般的な機械部品と、魔石を収める専用の容器。


 ただし、魔石と接続する部分には、異世界で習得した魔力制御の技術を組み込んでいる。


 それは普通の電子回路とは異なる、魔力そのものの流れを整える仕組みだった。


 最初の試作機は、見事に失敗した。


「……あれ?」


 薬液へ魔力が流れ込まない。


 魔石には十分な魔力が蓄えられている。


 なのに、途中で流れが止まってしまう。


 原因を調べる。


 どうやら、魔力回路と薬液の間で、わずかな干渉が起きているらしい。


「……なるほど。ここを変えればいいのか」


 《万象習得》で得た知識をもとに、回路を修正する。


 二度目。


 今度は魔力が流れた。


 だが、注入量が多すぎた。


 試験容器の液体が強く光り、魔力構造が不安定になる。


「……これは駄目だな」


 俺はすぐに装置を停止させた。


 失敗した薬液は使用せず、隔離して保管する。


 安全に処理する方法も、後で考えなければならない。


 三度目。


 注入量を細かく制御する機構を追加した。


 すると。


 薬液が、柔らかな光を放った。


 俺は息を止めて見つめる。


 光が落ち着く。


 液体の内部に、安定した魔力の流れが生まれる。


「……成功、した?」


 魔力構造を確認する。


 異世界で作った下級回復ポーションと、ほぼ同じ状態だった。


 俺は椅子へ深く座り込んだ。


「……できた」


 今度は、俺が直接魔力を注いだわけじゃない。


 魔石に蓄えた魔力を、装置が取り出して注入したのだ。


 つまり。


 俺以外の人間でも、同じ工程を実行できる。


 もちろん、今の段階では試験装置にすぎない。


 品質管理も、操作上の安全性も、まだ十分ではない。


 それでも、原理が成立したことは大きかった。


 俺はさらに改良を重ねた。


 薬液の量を測定する機構。


 魔石の残量を確認する仕組み。


 異常な魔力の流れを検知した場合、自動停止する機能。


 そして、調合の種類ごとに注入量を変更できる制御部分。


 何度も試験を繰り返すうちに、装置の動作は少しずつ安定していった。


 数日後。


 机の上には、小型の箱形装置が置かれていた。


 透明な容器を固定する部分。


 操作用の表示画面。


 内部に収められた蓄魔石。


 見た目だけなら、小型の実験装置に近い。


「……完成、かな」


 俺は小さく笑った。


 試験用の薬液をセットする。


 画面に表示された条件を確認する。


 そして、開始ボタンを押した。


 低い動作音。


 薬液の中へ、目には見えない魔力が流れ込んでいく。


 しばらくして、装置が停止した。


 表示画面には、処理完了の文字。


 俺は容器を取り出し、魔力の状態を確かめた。


 問題ない。


 安定している。


 同じ条件で繰り返しても、ほぼ同じ結果が得られた。


「……やった!」


 思わず声が出た。


 誰かに見せたい。


 そんな気持ちが湧いてくる。


 でも、すぐに冷静になった。


 これは、ただの発明品じゃない。


 魔力という、日本では知られていない力を使った装置だ。


 下手に公表すれば、異世界の存在まで疑われるかもしれない。


 それに、もう一つ大きな問題がある。


 魔石そのものは、今のところ異世界から調達するしかない。


 充填できるのも、俺だけだ。


 将来的には、魔石の安定供給や再充填の仕組みを考える必要がある。


 だが、少なくとも製造のたびに俺が付きっきりになる必要はなくなった。


 ここまで来れば、次の段階へ進める。


「……で、どうやって売るんだ?」


 俺は装置を見つめたまま、首を傾げた。


 作り方は分かる。


 材料も揃う。


 製造機も作れた。


 けれど。


 会社を作るには、何が必要なんだ?


 薬として売るなら、どんな許可がいる?


 成分分析は、どこに頼めばいい?


 安全性は、どう証明する?


 そもそも高校生の俺が、こんな商品を扱っていいのか?


「…………」


 考えれば考えるほど、分からないことが増えていく。


 俺は頭を抱えた。


「……商売って、難しいな」


 異世界で菓子を売るときは、トーマスさんが色々と教えてくれた。


 でも、日本で医療に関わる商品を販売するとなれば、話はまったく違う。


 それに、俺はまだ高校生だ。


 一人で全部を進めるのは、さすがに無理がある。


 そこで、ふと二人の顔が浮かんだ。


 九条院澪さん。


 西園寺麗華さん。


 二人とも頭が良く、物事を整理するのが上手い。


 以前の学園の研究活動でも、何度も助けられた。


 そして何より、俺が困っているとき、真剣に話を聞いてくれる。


「……相談してみようかな」


 もちろん、異世界のことは話せない。


 魔力の存在も、今は秘密にしておく必要がある。


 それでも、販売に必要な手続きや、専門家への相談方法なら、一緒に考えてもらえるかもしれない。


 俺はスマートフォンを手に取った。


 澪さんと麗華さんの名前を見つめる。


 そして、二人に短いメッセージを送った。


『少し相談したいことがあるんです。今度、時間をもらえませんか?』


 送信して、数分後。


 ほとんど同時に返信が届いた。


 澪さんからは、


『もちろんです、レイジさん。私でお役に立てることでしたら、何でもお話しください』


 麗華さんからは、


『承知しました、黒瀬さん。何かお困りですの? 私でよろしければ、お力になりますわ』


 俺は画面を見つめ、自然と笑顔になった。


 まだ、何も説明していないのに。


 二人とも、こんなに快く応じてくれる。


(……本当に、ありがたいな)


 俺は改めて返信を打った。


『ありがとうございます。実は、新しい商品を開発していて……』


 こうして。


 異世界で生まれた小さな思いつきは、二人の令嬢を巻き込みながら、現代日本で動き始めようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。