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セレニアの物語  作者: さなか
第2章 オルミスの三人

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35 名案

 カラットとドラギエルは、森の奥へと進む。

 ヘイスに言われた通り、道を作らないよう、木の根の上を歩き、背の高い植物はできるだけ踏まないようにする。


「あの……本当は、俺たちを助けにきたってことはないかな……」


 ドラギエルが言ったので、カラットは怒った。


「ヘイスの話を聞いてなかったのか?」


 しかし、すぐに思い直す。

 ドラギエルが悪いわけじゃない、と。

 

「……そうだったらいいよな」


 しかし、そわそわする気分はおさまらない。我慢できなくなり、カラットは足を止める。


「やっぱり、心配だ。ヘイスは自分が勝てると思ってなかった」


 ドラギエルからの返事はない。気づかないうちに、カラットよりずっと前から立ち止まっていたようだ。背後を振り返ったまま、ぼんやりと突っ立っている。


「……呼んでる」


「誰が? ヘイス?」


「わからない」


「……見に行ってみよう。助けにきたってことも、あるかもな。ファルトーソーが捕まっててさ、オーネット船長がすっかり治って。それで、もうヘイスが、出てきていいぞって、俺たちを呼んでるのかもしれないな。そうだよ、ファムレ様が、帰らせてくれるって言ってたし」


 カラットは、そうであって欲しいことを全部言った。ドラギエルも嬉しそうな顔で頷く。


「一応、見つからないように隠れて行こう。お前はでかいんだから、気をつけろよ」


 二人はそろそろと来た道を戻り、浜辺が続いているところまで出ると、毛羽立つ幹を持つ木や大きな葉を持つ草の間に身を隠した。

 どちらかが何かを踏んだ。ぷしゅっという音がして、二人で「しっ」と囁き合う。

 

「ドラギエール!!」


 喉を枯らして叫ぶ声が聞こえた。ヘイスじゃない。低い、女の声。

 カラットは、少しだけ顔を覗かせる。


「ナバルだ」


「ほら!」


 ドラギエルが嬉しそうに言う。

 ナバルの後ろから、


「助けにきたぞ、カラット!」


 という声がする。

 ナバルやカラットと変わらない背丈。色褪せた茶色い髪、落ち窪んだ目の奥の青い瞳。


(まさか、アキリなのか……?)


 あの、ふざけてへらへらした感じはどこへやったのか。身なりはそれなりに気を使っていたのに、無精髭を生やしている。ところどころに濃い染みのある服は、汚れた布を纏っているように見えた。


「しっ。ヘイスと決めた合図を忘れたのか? ヘイスがあれを言うまで、出ちゃだめなんだ」


「ナバルが、敵だと思う?」


「わからない。でもアキリは、あいつの意思では俺を探しにこないと思う」


「……」


 ドラギエルが、不満そうな顔をした。「行きたければ一人で行けばいい」。そう言いたくなるのをこらえ、ドラギエルの大きな体を潜めさせた。


「何も悪いことが起きてないって、俺だって信じたいよ。全部ヘイスの考え過ぎってこともあるかもしれない。そうしたら笑ってやればいいだけだよ。焦っちゃだめだ」


「うん……」


 カラットは、いよいよ頭にきて、言った。


「お前、この前から様子が変だ。何を考えているのか、わからないよ。お前の頭の中では色々な考えがあるのかもしれないけど、ちゃんと口にも出さないんなら、俺たちの知ったことじゃない。

でも、お前がぼーっとしてると、ヘイスの邪魔になるんだよ!」


 静かに、しかし真剣に、カラットは怒った。ようやく、ドラギエルがカラットを見て、目が合った。


「……誰が敵なのか、知りたい。」


 と、言いながらすぐに目を逸らす。


「なんだって?」


「誰がファルトーソーなのか、見たい」


「お前、さっきもそんなことを気にしてたよな。本当は何か、知ってるんじゃないか?」


「……」


 それからドラギエルは、黙ったきりだった。静かに動かずにいてくれるのならと、放っておく。


 アキリとナバルの声が、しなくなった。


「何か聞こえるか?」


 と聞くが、ドラギエルも首を振った。それを信用していいかどうかも、もはや疑わしい。


(ヘイスの声が、一度も聞こえないのはおかしい。何かが起きているはずだ。やっぱりファルトーソーがいて、捕まったとか……)


 そのとき、カラットは閃いた。それは、とても素晴らしい思いつきだった。すべてが解決し、何もかもがうまくいく名案だ。


「ドラギエル、洞窟に行こう」


 カラットは、もう苛々していなかった。明るい表情で、ドラギエルに向かって言う。


「あの箱だよ! ファルトーソーは“狼王の剣”ってやつを欲しがってるんだ。あれを持ってないと北へ帰れないんだって、ヘイスが言っていただろ? 箱を渡して、船も渡して、帰ってもらえばいいんだよ!」


「……そうだ。それなら……」


 銀色の重たい箱は、カラットがナイフを拾った、川の洞窟にある。隠しておこうとヘイスに言われて、拾いのついでにドラギエルが運んでおいたのだ。


「最初からそうすれば良かったんだ。急ごう、ドラギエル」


 二人は意気揚々と、洞窟に向かう。


(ヘイスは何もかも守ろうとしすぎなんだ)


 カラットは、そう思った。



挿絵(By みてみん)

挿絵はAI生成で出来るだけイメージに近づけたものです。

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