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セフィラクロスタ  作者: 梨由利
第一章 最後のピース

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9/15

相対するは、幻想の王

 探索とは言ったものの、どこを目指せばいいのか全く見当がつかない。闇雲に歩いてもしょうがない。まずは現状を整理していこう。


 地下に入ったら通信が遮断された。今いる場所は入口の階段を下りてすぐの円形の広場。下りてきた階段以外には3つの通路。その先に何があるかは一切不明。そして俺以外の誰かによる妨害。


 なるほど、中々に詰んでいる。というかこれ通路の先がどこかで繋がってたりしない限り探索量単純計算で3倍じゃないか。


「め、めんどくせぇ……」


 とまあ、いくらぼやいたところで何か変わるわけでもなく。とりあえず目の前の通路から探すとしよう。まずは物資の保管場所的な場所を探すところからだな。地上から機械類を運び込んでいるのなら一時的な保管場所ぐらいあるはずだ。








 ◇


「……また分かれ道かよ」


 あれから数十分、通路を進んだ先に待っていたのは分かれ道の連続だった。

 それ自体は予想していたのだが厄介なのが全くと言っていいほど景色が変わらないという点だ。10を超えたあたりで分かれ道を数えるのはやめた。


「いい加減別の部屋とか出てきてほしいもんだぜ……」


 しかもこれがまだ最初の通路のうちの一つ目だというのだから余計気が滅入る。残りの二つも同じくらい入り組んでいると思うと今すぐ帰りたくなってきた。


 そして気になるのは最初の通信遮断以降これといった妨害が無いことだ。まさかあの遮断で俺が退散したと思っているわけがないだろうし、何より侵入と同時に妨害電波を飛ばしたタイミングの良さから考えて今この瞬間も俺のことをカメラかなにかで監視しているはずだ。


 もしかするとこうやって俺にこうして警戒状態を続けさせることが狙いなのかもしれない。実際常にトラップや地上で出くわした改造犬のような敵襲を警戒しているせいで疲労が溜まりつつある、かといって警戒をやめるわけにもいかない。


 そうやって警戒による疲労を感じながらももう何度目かも分からない分かれ道を進んでいくと……


「なんか……今までと比べると雰囲気が変わったな」


 目の前にあったのはまたしても通路。しかし今までとは明らかに雰囲気が違っていた。

 そこにはこれまでのような分かれ道ではなく、代わりにたくさんの部屋が並んでいた。部屋にはそれぞれ【資料室】、【開発室】……といったようにプレートがかけられておりドアについている小窓から中の様子も確認できた。


 ここまでの道のりは打ち捨てられた廃墟といった様子だったが、ここはまさに地下に広がる謎の施設といった様子だ。ここの地下にこんな場所が広がっていたとは夢にも思わなかった。


 そこからまた通路を進むと俺の求めていた文字が目に入った。


「【収集物一時保管室】……ここ、だよな」


 収集物、という言葉からして地上で拾った物はここに運び込まれているのだろう。念のため小窓から中を覗いてみるとそこには今までの小奇麗な部屋とは違い、薄汚れた機械のパーツなどが無造作に置かれていた。


「罠は……ないな、よし」


 ドアにトラップがかけられていないことを確認してから部屋に入る。ドアが閉まった途端に警報が鳴り響く、といったこともなくわずかながら安堵した。ようやく一息つけそうだ。


 と、その前に早く目的のものを回収してしまおう。見たところかなりの数のパーツやら何かの部品が積まれており、ここからディノンの落とした携帯を探し出すのは骨が折れそうだ。


「確か今日の朝言われたな。携帯にはお守りをつけてるとか何とか……」


 ディノンが言っていたことを思い出しながら探し始めて数分、思ったよりも早く見つけ出すことができた。


「お守りお守り……おっ、これか?」


 指先に機械とは違う感触の何かが触れたのでそれを掴み引っ張り出す。それはまさに探していたお守りであり先には携帯もしっかりつながっていた。


「任務達成、ってところかな。よし、ならこんなところさっさと抜け出すか」


 そうして保管室を出て来た道を引き返そうとしたときだった。


『お目当てのものは見つかったかな?ネズミ君』


「!!」


 通路に見知らぬ男の声が響き渡る。

 俺が引き返そうとしたタイミングで話しかけてきたということはやはりずっと監視していたか。


『いやはや、まさかこの私の研究所に侵入する命知らずがいるとは……ついつい観察に夢中になってしまったよ。どんな愚か者が来たのかと、ね』


「ここはあんたの家か?だったら悪かった。ちょいと落し物を探しててな。でももう用は済んだし、お暇させてもらうよ」


『まあ待ちたまえ。人の場所に無断で入ったあげく物を持ち出そうなんてのはどうかと思わないか?』


「なるほどごもっともだ。俺なら入られる前に入口で追い返すね」


 やはり妙だ。この施設の様子からして防衛機能くらいありそうなのにそれらしいものが起動する様子がない。それどころかこの男、発言の割には声に怒りといった感情がまるでない。むしろその逆、喜んでいるように感じる。


『追い返す?そんなもったいないことするわけないじゃないか。君、昨日血狂い君とちょいと殺し合っていただろ?』


「!?」


 昨日のあれを知っているということはずっと監視されていた?それはマルクオットの奴を?それとも俺をか?まさか迷宮路地の出来事を全て把握しているとでも言うのか?


『やはり君だったか、装いや雰囲気からしてそうだと思ったよ。ということは、だ』


 男はもったいぶったように言葉を区切る。


『君、式持ちだろ?』


「……だったらなんだ」


『いやあ、だとしたら感謝を伝えたくてね。なんせまだ式持ちとのデータは取れていなかったから』


「はぁ?」


『やれ』


 男がそう言った瞬間、視界が揺れる。


 それを理解するのに数秒かかった。今俺は何かに首を掴まれている。その何かが物凄いスピードで移動しているのだ。


 理解したと思ったらまた次の瞬間には壁に投げつけられていた。


『……ほう、さすがは式持ちというところかな。あの状態から無傷とは』


「あぶねえなあ……死んだらどうする?」


 無傷だと?バカ言え、背中思いっきり打ったわ。いきなり後ろから人の首掴みやがって。土煙が立つほどのスピードで叩きつけるんじゃねえ!


 俺を投げ飛ばした奴の顔を拝んでやろうと目を凝らす。


「……せめて人であって欲しかったなあ」


『紹介しよう。この私、ズーク様の最高傑作にして集大成、使い手を必要とせずただ目の前の存在を屠る究極の兵器……』


 そのシルエットは明らかに人間のそれではなかった。おとぎ話の中でしか見ないもの、現実にいるはずのない存在。けれど前に立つ"それ"は、そうとしか言い表せなかった。


「ドラゴン……?」


『自立型竜機装式【リアシェティル】さ』


 まさにそれは、機械仕掛けの竜だった。



ドラゴンってファンタジー生物の王道みたいなとこあるじゃん?

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