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セフィラクロスタ  作者: 梨由利
第一章 最後のピース

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8/15

現状:地下迷宮で孤立無援

 翌日。再び迷宮路地へと足を運んだ俺はレスカの作ったマップを頼りに地下への入口を目指していた。

 目指していたのだが……


「これで何体目だ!?いくらなんでも多すぎるだろ!」


『前方から生体反応多数!全部相手にしてたらキリないわよ!』


 地下施設を目指す俺を出迎えたのは体の一部を機械に改造された野犬の群れだった。


「そもそも何なんだこいつらは!昨日までこんなやつら見たことも聞いたこともないぞ!」


『こいつらマップの空白部分に入ってから急に出てきたわ。多分例の地下施設で作られたんじゃないかしら』


 レスカの予想はおそらく正しいのだろう。その証拠に進めば進むほどに改造犬の数は増していく。これ以上増えれば地下を目指すどころの話ではない。


「しょうがない……レスカ、この先の道解析できるか?」


『今やってる!……できたわ、このまま真っ直ぐ行けば入口があるはず!』


「あとは直進か、ならあとはこいつらを振り切ればいいだけだな」


 俺は駆電弐式を起動する。左手のグローブに電流が走り、その電流は腕を通り俺の両足へと流れ込む。


「じゃあなワンちゃん。今度会うときはジャーキー持ってきてやるよ」


 瞬間、俺の後方を駆けていた改造犬たちの姿が一瞬にして消え去っていく。実際はそう見えるほど俺が素早く移動しただけなのだが。










 駆けだしてからしばらく……といってもせいぜい数分だろうが、あれほど大量にいた改造犬は影も形も無くなってしまった。


「これでしばらく時間は稼げただろ。じゃ、早いとこ入口見つけちまうか」


『あの、さっきのって僕が助けられたときと同じやつですよね。あれもアルトさんの装式?の力なんですか?』


「ん?ああ、そういえば詳しく説明してなかったな。こいつが発する電流を体に流して筋肉を刺激することで身体能力を強化したんだ。例えばさっきみたいに脚に流して超スピードで走ったりな」


『要は電気マッサージの超すごいバージョンよ』


 そう言われるとなんだがしょぼく聞こえるからやめてほしいんですけど。まあ原理としては実際似たようなものなのであまり否定できないのだが。


 そうしてディノンに俺のもつ特化装式の特徴を説明しながら目的の地下への入口の捜索を続けていると……


「これだよな」


『これね』


『これって地下駐車場……ですよね?』


 ディノンの言うとおりそれは誰が見ても地下駐車場としか言いようが無かった。


 何が地下施設への入口だ。てっきりもっと何か仕掛けで隠されているのかと警戒してたのが馬鹿みたいじゃないか!マルクオットのやつ変にもったいぶって教えやがって……今度会ったらもう片方の腕も斬ってやろうか。


「はあ……まあ入口を探すのに余計な時間をかけずにすんだと考えるべきか。じゃあ早速捜索開始といくか」


『お、お願いします!』




『長いわね!いつまで続くのよこの階段!』


 地下に足を踏み入れておよそ5分はたっただろうか、未だ終わりの見えない階段にとうとうレスカがしびれを切らした。


「愚痴るなよ。俺が一番思ってるんだから」


『いくらなんでも長すぎよ!しかもここ地形スキャン通んないからあとどれくらい続くのか分かんないし!』


 たしかにあとどれくらい下りればいいのかも分からない状況が続いているせいで気が滅入るのも分かる。何があるか分からない以上慎重に行きたいところではあるが、ここからまだ下りる必要があるならいっそのことさっきみたいに駆電で一気に駆け降りるのもありか……?


 そんなことを考えながら再び下りていくとようやくその終わりが見えてきた。


『やっと着きましたね、地下施設』


「ああ、でもこれは……」


 長い長い階段を下り終えた俺の前に広がっていたのは広い空間とそこからいくつにも広がる通路だった。


「迷宮の地下に広がる場所もまた迷宮ってわけね……」


 正直ここまで来るのにそれなりに苦労したので実は下りた先は落とし物管理センターでした、みたいな展開を期待していたのだが現実はそう甘くはないらしい。


「まあ地形情報を秘匿してる時点で予想はしてたけどさ……レスカ、ここなら直接内部構造読み取れたりしないか?」


『―――』


 呼びかけるが返事がない。いや、返事がないというよりはこれは……


『―ルト――聞―てる?――害電―――かで通――できな――』


 途切れ途切れではあるが声が聞こえた。しかしノイズが酷くて詳しい内容までは分からない。


『―気――けて――スキャン―――生物――なかっ――ものが―』


「レスカ?おいレスカ、返事しろ!おい!」


 今度は何度呼びかけても返事はなかった。階段を少し戻ってもう一度呼びかけるが結果は変わらなかった。

 さっきのレスカの言葉から推測するに、妨害電波かなにかで外部との通信を遮断したのだろう。


 そして俺がここに侵入してから妨害を始めたということは……


「ここに俺以外の誰かがいるってことだよな」


 頭をよぎるのはマルクオットが言っていた迷宮の主。通信妨害や地上での突然の機械動物の襲撃、あれもきっとそいつの仕業だろう。

 しかも俺が地下に侵入してすぐに通信を遮断したということは、その主とやらはここを普段から根城にしており設備にも詳しいというわけだ。


 対してこっちはこの入り組んだ地下迷宮の地形も分からず孤立無援で探索するしかない状態。

 それもこれから来るであろう相手の妨害を退けながら。


「はは、泣きたくなるぜ」


 幸いにも通信用のドローン自体は起動したままなので、直接マッピングしていけば迷って出られなくなるという心配はないだろう。


「じゃあ、進むか。何が潜んでいるかも分かんねえけど」


そうして俺の一人ぼっちの地下探索が始まった。



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