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セフィラクロスタ  作者: 梨由利
第一章 最後のピース

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目には目を、歯には歯を

 装式。

 シントエイキスで使われている装備の総称。

 エーテルと呼ばれるシントエイキスでのみ採取可能な物質を用いて作られており、既存の武具とは一線を画す性能を持ち合わせている。このエーテルについては不明な点も多いが、研究により人体にも少なからず存在していることが判明した。

 装式は大きく2つに分けられ基本的に誰でも扱える『汎用装式』と特定の個人に専用でチューニングされた『特化装式』があり、特化装式はその持ち主以外が使用することは不可能。また特化装式を扱うには適正が必要であり、適正がない者はチューニングを施しても起動できないという特異性もある。そのため特化装式の使い手は『式持ち』と呼ばれる。また『式持ち』に共通する特徴として、体内に多量のエーテルが確認されている。


 ――「シントエイキス史・用語全集」より抜粋





『…って感じでこの街じゃ装式っていう特別な武器があるのよ。そして多分マルクオットが使ってる剣は特化装式よ。つまり式持ちってわけ。式持ちってシントエイキスでもすごく貴重で滅茶苦茶に強いのよ』


『じゃ、じゃあアルトさんヤバいんじゃないですか!?そんなに強いなら今すぐ逃げたほうが……』


「逃げる……?ふむ、それもいいな。やってみたらどうだ?存外、上手くいくかもしれんぞ」


「逃げねえよ……。というより逃げられないって言ったほうが正しいか。式持ち相手に背中を向けるなんてほとんど自殺行為だからな」


 このやり取りの間にも絶えず攻撃を浴びせ続けてくるんだ。逃げ出そうと走り出した次の瞬間には真っ二つの未来が見える。


「嬉しいなあ。ああ、本当に嬉しい。ここまで俺を喜ばせてくれるのはお前が初めてだ。軍の連中を襲ったときでもこれほどまでの喜びは味わえなかった」


 マルクオットは式持ちだ。つまりあの蛇腹剣には隠された能力があるということになる。式持ちはシントエイキスでもそう多くない。軍を含む武装組織は常に特化装式の適正者を求めている。過去には汎用装式の使い手100人で組まれた部隊がたった一人の式持ちに壊滅させられたという話もある。まあそれはその式持ちが異常なだけだと思うが……。とにかく特化装式にはそれほどの力があるというのは事実だ。


「そこのドローン越しに見ているやつの言う通りだ。これが俺の装式、銘を『ガンドラ』。式持ちだとバレたんだ、もう出し惜しみをする必要もないな」


 そう言うとマルクオットは蛇腹剣……ガンドラに巻いていた布を取り払った。

 今までその姿を隠していた布が外されたことで改めてやつの得物の凶悪性が目に見える。

 刀身はよく見ればチェンソーやノコギリのような細かい刃がいくつもついており、マルクオットの残虐性を表している。


「A級犯罪者が式持ちなんて笑い話にもならないな……」


「ははは、こいつはいいぞ?刀身が伸びるせいかほとんどのやつは間合いを見切れずに斬り刻まれるんだ。でも一撃で細切れになったりはしないから安心しろ。そんなことになったら楽しめないからな!」


 マルクオットは再度振りかぶる。それはもう見た、二度も引っかかるほど俺もマヌケじゃない。


 今度は後ろに飛ばずに……前に突っ込む!


「ほう?」


 蛇腹剣は刀身を伸ばすと再び結合するには数秒かかる。ならその数秒で一撃を叩き込む!


「悪いが急いでるんだ。一撃で終わらせてもらうぜ!」


 刀身が結合するまではまだ時間がある。これなら一撃入れるには十分……!


「それをするやつは過去にもいたんでね、当然対策はしてある」


 がら空きの胴に拳を叩き込む直前、俺は横から飛んできた何かに吹っ飛ばされた。


「な……自分ごと斬る勢いで……!?」


 俺を飛ばしたのは結合しきっていないガンドラの刀身だった。

 刀身を鞭のようにしならせることで結合しなくても近距離に対応してきたってことか。


「どうした、もう終わりか?そんなはずないだろう。ここまで俺を滾らせたんだ、この程度で終わりなはずがない!」


 ガンドラを鞭のようにして間髪入れずに多方向からの猛攻。


 避けてもすぐに別方向から追撃がくる。かといって受け止めようとすれば俺の手は簡単に斬り落とされるだろう。攻撃に転じようとしても距離を詰めることも難しい。


 防ぎきれず、攻めきれず。このまま耐えるにしても限界がくる。いずれ相手も疲労がくるだろうがその前に俺がバラバラになるだろう。


 あれを使うしかない。無茶をすればまた壊れるかもしれないし、そうなればレスカに何を言われるか分かったものじゃないが……まあ今死ぬよりはましだろう。


「はあ……、まだ何かあるんじゃないかと期待していたが結局はただ耐え続けるだけ……。興ざめもいいところだ。もういい、お前に対する興味は失せた。消えろ」


 先ほどまでとはあきらかに威力が違う一撃が迫りくる。これに比べればさっきまでの攻撃はあいつにとって戯れでしかなかったのだろう。


 なら見せてやる、俺のとっておきってやつを!


 ただ弾くだけではまた鞭のようにしならせた追撃がくる。なら迫りくる刀身の結合部を狙い叩き落とせばいい。


 チャンスは一度きり、タイミングは……ここだ!


「……ふっ、ふふっ……。フハハハハハ!!そうか、ここからがお前の本気ということか。いい、素晴らしいぞ!さっきの発言は撤回しよう。今はお前に対する興味が尽きない!ああ、俺は今生まれて初めて神に感謝している!久方ぶりだ、式持ち同士でやり合うのは!」


「……まあ式持ちなら気づくよな、これが特化装式だってことは」


 マルクオットは俺の手にある剣を見ると再び喜びが抑えられないといった様子で笑い始めた。


「これは運命だ!さあ、お前の力を見せてくれ、味わわせてくれ!互いの命が果てるまで存分に殺し合おう!」


 だから見せたくなかったんだ。特にこういう戦うために生きてるみたいな奴には

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