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セフィラクロスタ  作者: 梨由利
第一章 最後のピース

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鋼に宿るは鉄の心④

 あれから何度か攻撃をしかけて分かったことがある。

 それは部位ごとに装甲の厚さが違うということだ。

 考えてみれば当然のことだ。いくら優れた兵器だろうとその耐荷重には限界がある。部位の重要度に応じて装甲の厚さを変えていることぐらいすぐに想像すべきだった。


 例えば両翼部分。あそこは飛行機能とミサイルの格納と発射機能を兼ね備えている分、他より装甲が厚かった。多分三速レベルの攻撃じゃないと通らないだろうな。


 逆に脚部は翼ほど硬くはなかった。今の装甲の状態なら普通の攻撃でも通用するだろう。一番脆く感じたのは腕部だ。まあ剣の応酬で一番攻撃を当てた部分だから当然と言えば当然か。


 そして一番装甲が厚いであろう部分……


「チッ。そう簡単にはやられてくれないか」


『GYAAAAAA!!』


 もはや知性の欠片も感じられない咆哮をあげながら接近する俺めがけて集中砲火を浴びせにくる。ある一点を攻撃しようとするたび同じような挙動をする。


「やっぱりな……胴体、正確には胸部か?そこに何かあるんだろ?」


 おそらくはやつのエネルギー源かそれに近いものがあるのだろう。いわば動力源であり弱点でもあるということになる。あの拒絶ともとれる挙動がなによりの証拠だ。


 狙うべき場所は分かった。あとは……


「どうやってあの装甲を貫くか、だな」


 やつの核ともいえる部位だ。当然それを覆う装甲も一番硬いに違いない。翼の装甲より硬いと仮定すると三速でも破れない可能性がある。集中砲火を抜けたところで、あの装甲を破れないんじゃ話にならない。


 とは言っても三速でも効かないような装甲、どうやって破れっていうんだ……そもそも他の部分が脆くなったのも熱でたまたま……


「あっ、そうか」


 今の状態が無理なら突破できる状態にすればいいのか。


『何をやっている!? さっさとそいつを殺せと言っただろう!!』


 未だに俺を殺せていないことにしびれを切らしたのか、再び声を荒げるズーク。正直耳障りなので黙っていてほしいところだ。おっ、スピーカーっぽい設備発見。


『何度も言ってるだろう!今すぐそいつを殺』


 言い切る前にスピーカーを叩き壊す。よし、これで集中できる。


「まずはどうにかして接近戦にもちこむところからだな」


 今日で何度目かも分からないが再び思考加速を発動、視界に映る全てがスローになる。正直今すぐにでも倒れそうだがそこは気合いで持ちこたえる。


 駆電のチャージを済ませつつこちらに飛んでくるミサイルめがけて突っ込む。ある程度のホーミング性があることは今までの攻撃で確認済み、なのでその性能を逆手に取る。


 相手の弾幕が途切れる一瞬の隙をつき、相手の懐へと潜り込む。さっきまでなら剣の間合いに入った時点で斬られていただろうが、今のこいつは剣を持っていない。そもそも今のこいつにここまで近づかれることなど想定されていないだろう。してたら最初に剣を投げ捨てるなんてことはしないはずだ。


「鳴蜂・三速!」


 胸部に攻撃を叩き込むが予想していたとおり、装甲はびくともしなかった。やはり他の部分よりも堅牢に作られていたか。


『rrrrrrrgyaaaaa!!』


 勝利を確信したのか、はたまた自ら突っ込んできた獲物の愚かさへの嘲笑か、知性を封じられた鋼の竜は雄叫びをあげながらその鋼鉄の爪をこちらめがけて振りかぶってくる。


「ま、これも想定のうちだ。もう次の手は打ってある」


 振り下ろされる腕を弾きその反発を利用して懐から飛び出す。次の瞬間、がら空きになった胸部に大量のミサイルがなだれ込む。


「ホーミング性能が優秀で助かったよ。おかげで楽に誘導できた」


 装甲が脆くなったのは傷と熱による金属疲労。まだ硬い部分があるならより高温の熱と衝撃を加えればいい。


 三速による傷とミサイルによる熱と衝撃、これまでに加わった熱と合わせれば……


『gyrrrrrraa!?』


 再び雄叫びをあげるが、それには今までと違い戸惑いがあるように感じられた。


 その雄叫びに呼応するかのように、音を立てて胸部の装甲に亀裂がはしり装甲の一部が剝がれる。隙間から見えているのはやつの動力源だろうか。


「このまま決めさせてもらうぞ……!?」


 直後、視界が弾け熱と炎が俺を襲う。衝撃が全身に駆け巡りそのままの勢いで壁に叩きつけられる。


「なに、が」


 ぶつかったときに切ったのだろうか、額から血が流れ意識が朦朧とする。ぼやけた視界には問いかけへの答えが映し出されていた。


「……そういうことかよ」


 それはミサイルの破片だった。さっき胸部に誘導したとき俺がそちらに気を取られている隙に何発か打ち出していたのだろう。しかも撃ち込まれた方向から考えて、直接撃ってくるのではなく俺の視界から逸れるように回り込ませるように。


 なにが知性のない、だ。しっかり策に嵌められてるじゃねえか。


「てかまずい、このままじゃ追撃が……?」


 しかし、俺の警戒とは裏腹に追撃がくることはなかった。リアシェティルは立ち上がることなく、膝をつき佇んだままだった。


『そんな……私の傑作が、究極の兵器が……』


 ズークの声が通信越しに響き渡る。スピーカーは壊したはずだが、他にもあったのか。


『貴様……よくもやってくれたな!!貴様だけは何が何でも殺してやる!』


 そう言い放った直後、こちらに向かってくる無数の足音が通路のほうから聞こえてくる。


「なんだ……?」


『今私の実験体どもをそっちに向かわせた!貴様のその体ではどうすることもできまい!』


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