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セフィラクロスタ  作者: 梨由利
第一章 最後のピース

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12/15

鋼に宿るは鉄の心③

『いやあ驚いたよ。まさかここまでやるとは』


 アルトとリアシェティル。二人の剣士が互いに目の前の相手を見据える中、その空間に第三者の声が響き渡る。


『おかげでいいデータが取れた。腕を落とされるのは予想外だがね。血狂い君との戦いでもそうだったが、君はそういう趣味でもあるのかな?』


「……何の用だ」


『用はもう済んだよ。言っただろう?いいデータが取れたと。これ以上君からは何も得られなそうだし、このまま続けて万が一それを壊されたりしたら面倒だからね。リアシェティル、そいつを殺せ』


 しかし、リアシェティルが主の指示に従うことはなかった。


『聞いているのか?殺せと言ったんだ。お前には兵器として僕の全てをつぎ込んだんだ。いつまでも相手に合わせて剣術なんてくだらないもので遊んでるんじゃない』


 気に食わないといった様子で命令する自らの創造主の声を聞き、リアシェティルは動き出す。しかしそれは、決して指示に従ったからではなかった。


『お前……私に背くのか?お前を作ってやったこの私に?』


 ズークは言った。剣術なんてくだらないと。その言葉を否定するかのように、竜は剣を構えアルトの目を見ている。


 機械で作られ、自我など無いはずのその鉄の目は、しかし確かに語っていた。この戦いは剣によってのみ決着すると。


『っ、ふざけるな!機械ごときがこの私の命令を無視!?ありえない!そんなことがありえていいはずがない!』


「別に無視はしてないだろ」


『あ゛あ゛!?』


「お前の命令は俺を殺せってやつだろ?こいつは今もこうして俺を殺そうとしてるじゃないか、剣で」


『黙ってろ劣等遺伝子が!くそっ機械の分際で創造主様に歯向かいやがって……もういい!』


 ズークの仕業なのか、剣を構えアルトを見据えていたリアシェティルの気配が突如変わる。


『――殲滅モード、起動』


 その声は今までよりどこか無機質だった。同じシステムによる発声ではあるが、アルトは確かな違いを感じていた。


『はははは!最初からこうすればよかったんだ!覚悟しろよ劣等種!私をコケにしたことを後悔するがいい!』


 その言葉を皮切りに、リアシェティルが飛翔する。剣を投げ捨て口から熱線を、両翼からミサイルを、標的目掛けまき散らしていく。そこにはもう先ほどまでの剣士はおらず、ただ殺すだけの兵器があるだけだった。


「殲滅モード……要はなりふり構わず殺しに来るってことか。ふざけやがって、これからが本番って感じだっただろうが。水差すんじゃねえ!」


 思考加速と身体強化の合わせ技によって、四方八方から襲い掛かる弾幕の隙間を縫うように動く。一瞬のうちに兵器の眼前へと迫り再びその手にある剣を叩きつけんとする。


(ここまで迫るまでに駆電のチャージは済ませてある!今までの攻撃で装甲にも多少のダメージはあるはずだ。今度はその分厚い装甲ぶち破ってやるよ!)


 しかし


「!?」


 視界がブレる。剣を握る手に力が入らず思考もほどけていく。

 戦闘開始から絶えず思考加速と身体強化を続けてきたことによって、アルトの体は限界を迎えていた。


 そして、そんな隙を見逃すはずもなく、兵器は影も形も残さんと言うかのように熱線を浴びせにかかる。


(あ、これ死……)


 そうして死を直感し意識が離れる寸前、振り抜いていた一撃が装甲を叩く。その一撃の威力は今までのどの攻撃よりも弱かったが、届きはした。その一撃は決定打にはなり得なかったが、確かな事実を示した。


「!!」


 違和感。その感触は剣を伝い、指を伝い、脳へと届き離れつつあったアルトの意識を急速に引き戻す。


(脆い。今までみたいな堅牢さが感じられない)


 ほどけそうになっていた思考を再度まとめあげ、眼前に迫りくる閃光をすんでのところで回避する。既に限界を迎えたはずのアルトの脳は思考を止めることなく、考察を続けていた。


(なぜ装甲を脆く感じた?殲滅モードとやらになったから?それはないな。文字通り相手を殺すための形態でわざわざ装甲を弱体化させる理由がない。けどまったくの無関係ってわけじゃないだろう。殲滅モードはよくてきっかけだろうな。あそこまで脆くなった根本の理由は他にあるはず……)


 アルトの思考速度はさらに上がっていく。死を予感させる極限状態におかれたことで、生存本能が脳のリミッターを解除していた。


(ああそうか、()だ。やたらめったら撃ちまくってた熱線やらミサイルの爆炎で装甲が熱されたんだ。ただその程度で損傷するような設計、あんな自信家が容認するか?あれは多分一切の妥協を許さないタイプだ。なら他にも原因がある)


 熱線を避け、ミサイルを躱し、ときには足場にしつつ飛翔する兵器へと再度迫る。


(……あった、傷だ。ここまでの戦いでできた傷。これが装甲が脆くなった正体か)


 装甲には無数の傷が刻まれていた。ここまでの攻防によって積み重ねられた傷と、爆炎によって生じた熱が装甲に金属疲労を引き起こしたのだ。


(脆くなった今なら……)


 再び装甲へと剣を振るう。今度は鳴蜂ではなく、そのまま剣を叩きつけただけだ。


 その攻撃によって、アルトの仮説は確信へと変わる。


(三速じゃなくても攻撃が通る)


 反撃が始まる瞬間だった。






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