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セフィラクロスタ  作者: 梨由利
第一章 最後のピース

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鋼に宿るは鉄の心②

 速い。それがリアシェティルの攻撃に対する印象だった。


 とにかく速かった。だが速いだけだ。プログラム通りの動きしかできないのか、ある程度打ち合えば動きは読めるし速度にも目が慣れてきた……


「はずだったんだけど……なあ!」


 先ほどより速度を増して、正確に首を狙ってきた一閃をギリギリで躱しカウンターを叩き込む。


「硬っ……!」


 機械なんだから当然と言えば当然だが、まるで斬れる気がしない。


 最初の攻防からおよそ10分ほど経ったあたりか、目の前の竜の操る剣はより速く、より強く、急激に精度を増していく。今では最初のころの決められた動きしかできないような素振りは影も形もない。駆電による思考加速と身体強化をフル稼働させているのに、それにも次第に追いついてくる。


『【龍星】』


「っぶねえ!」


 そして一番厄介なのがこの居合。さっきまで至近距離で切り結んでいたはずが、次の瞬間には距離を取られ不可避の斬撃が襲い来る。


 唯一救いがあるとするなら、この技を繰り出すときは何故か声を発する。そういうプログラムなのかは知らないが、そのおかげでギリギリではあるが対応できている。


 だがそれもいつまでもつか分からない。次は無言で放たれるかもしれないし、この居合も徐々に速度が上がっている。思考加速による見切りにも限度がある。これ以上速くなられたらいよいよ対応できなくなる。


 このままじゃジリ貧だな。まだ拮抗してる今のうちに次の手を打ちたいところだが……。


 それに反応できたのは思考加速によって感覚が研ぎ澄まされていたからか、あるいは単なる偶然か。


『【蹂鏖無尽(ジュウオウムジン)】』


 声と同時に、"それ"は放たれる。


「っ!?」


 半ば反射的に体が動く。ほぼ、否、まったく同時に浴びせられる無数の斬撃。体が細切れになっていないのは一発の威力はそこまでだったからか。


「ごふっ」


 口内に鉄の味が広がる。威力はそこまでとはいえ量が量だ。これを無事と言い張るのは無理があるかもしれないが、内蔵までは届いていない。まだ動けるので無事ということにする。


 倒れそうになる体を気合いで支え、距離を詰めに行く。これ以上あの攻撃を出させるわけにはいかない。


『【龍……』


「っ、させるかあ!」


 問1.回避不可能な居合を防ぐにはどうするか


「っらあああぁぁ!!」


『――!』


 答.そもそも抜刀させなければいい


 リアシェティルの剣を持つ手が押さえつけられ、居合の体勢から抜刀までの流れが阻害される。それに対し驚愕といった様子でリアシェティルの動きが一手遅れる。


「剣を抜けないのは初めてか?初速だけなら俺に分があったな」


 脚に電流を集中させての脚力の一点強化!そこから即座に左腕に強化を切り替え無理やり剣を押さえ込めばこの一瞬は完全無防備だ。


「散々魅せてくれた礼だ。今度は俺の居合をたっぷりと味わってくれ」


 押さえる腕はそのままに剣を構える。普通に斬っても無意味だろう。それはこれまでの斬り合いで既に分かっている。


 ここまで戦ってからずっと思ってた。こいつの硬い装甲にも、”これ”は効くんじゃないかと。溜めが必要というデメリットはあるが威力は俺のもつ技のなかでは最高だ。


「鳴蜂・三速!!」


 剣を抜く、というより撃ちだす勢いで放たれた刀身は無残にも先ほどまでと同じようにその堅牢な装甲に阻まれる……かに思えた。


「昨日と違って動いてないからな。狙いやすくて助かるよ」


 俺が狙ったのは装甲に覆われた部分ではなく、腕の接合部……人間でいう肘にあたる部位。ここなら他の部位と比べて装甲は薄いはずだ。


 しかしいくら装甲が他より薄いとはいっても、ただの斬撃程度なら今までのように弾かれるだけだっただろう。それは通常の鳴蜂でも結果は変わらなかったはずだ。


 電磁加速と身体強化による抜刀速度の底上げ、鳴蜂はこの二つの要素を合わせて放つだが、そこに駆電のもつもう一つの特徴を合わせることでさらにその威力を底上げする。


『――』


「っはは。気づいたか?自慢の装甲がギャリギャリ音立てて削れてるのがよ!」


 駆電【弐式】は刀身を超音波カッターのように振動させることでその切断力を向上させることができる。そもそも鳴蜂という名はこの刀身の振動音と限界まで帯電させることで生じる電撃音が蜂の羽音のように聞こえたのが由来だ。


 いわばこの状態で放つ鳴蜂こそ本来の威力。いくらお前の装甲が硬くても関係ない。今の駆電はどんな障害だろうと切り捨てる。


 バキンッ、と鈍い音が響き渡ると共にリアシェティルは膝をつく。


「その巨体だ。当然重量もかなりのものだろ?それがいきなり腕一本分減ったんだ。そりゃバランスも崩すわな」


目の前の竜は驚きと期待の入り交じったような目でこちらを見る。

その目はまるでこちらに問いかけているようだった。


『お前に俺が倒せるのか?』と。


「っはは。上等!構えろリアシェティル!思う存分斬り合おうぜ!」


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