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「ふぅ、参った参った…。」


 ポーション屋のお婆さんに、散々からかわれた所為で、かなりお疲れモードである。

 とは言え、お婆さんに笑顔で『気を付けて行くんだよ?』や『またおいで』と言われた事で、荒(すさ)んでいた心が解きほぐされた感じがして、気分はかなり良かった。


「あのお婆さん、もっと若かったら惚れていたかもな…。」


 残念ながら、僕は枯れ専ではないので、好き(LOVE)と言う感情は湧かないが、それでもあの優しさは凄く好ましい。

 故に、あの性格のまま、同年代くらいであれば…と、下世話な気分になる。

 それと、何となくではあるが、若かった頃は、かなり可愛かったのでは…と思う。


 まぁ…もし、妄想の通りだったとしても、僕の外見を考えれば、釣り合いなど取れるはずもなく、分不相応…所謂(いわゆる)、高嶺(はかね)の花なのは理解しているつもりだ。

 それでも、不快にさせない程度には、眺めていたいと思ったかもしれない。

 そんな馬鹿げた妄想に、僕は呆れ苦笑しながらお店から離れ、次の目的地へと移動するのだった…。


†


「…で、お前達は何で此処にいるんだ?」


 イサスの街とは王都を挟んで反対側へ行く事を決めた僕は、城の兵士達に見付からない様に、平地を通るルートより森を通るルートの方が安全と判断し、森へと足を踏み入れた。

 すると、森に入って少し歩いた所で、僕は狼に周囲を囲まれて絶体絶命のピンチ!


 とはならなくて、周囲を囲っている狼達は、尻尾を振って喜んでいた。

 そんな訳で、先程の質問を聞いたのだが…当然の様に彼等から返事はない。

 いや、一応は『バゥ』とかの返事はあったのだが、残念ながら、僕には理解出来ない。

 〖言語理解〗なんてスキルを持っていても、所詮(しょせん)は、言葉を使う種族の言語を理解する物なのだ。

 その為、動物や魔物の言葉を理解する事は出来なかったのだ。

 いや、スキルアンクが上がれば、もしかしたらワンチャンあるのかもしれないが、ランクの低い現状では、それを知る事は出来ない…が正解だろうか?

 何はともあれ、僕の言葉に、彼等は答えるのではなく、尻尾を振って応えてくれていた。


「はいはい、お前達は食べ物が欲しいって事ね…。」


 彼等との接点は、僕が襲われない様に、ドッグフードを与え、お腹を膨らせた事。

 そして、彼等はそれを気に入り、僕を襲わない事に決め、街までの間、護衛よろしく森の出口まで付いてきたのだ。

 と言う事は、今、僕が襲われていないのは、そう言う事なのだろう。

 まぁ、襲ってくるよりかは断然マシなので、少し呆れつつも〖レプリカ〗を使いドッグフードを創り出すと、彼等へと与える準備を始める。

 その際、ついでとばかりに餌入れ用の皿も用意して、その中へと注いでいく。

 『カラカラッ』と音を立てながら、ドッグフードはどんどん皿へ…直ぐに山盛りになるので次の皿へ。

 数回繰り返すと、全ての皿はいっぱいになる。


 だが、彼等は座ったままで、いくら待っても食べようとしない。

 いや、正確には一匹食べようとしたのがいたが、他の者?に咎(とが)められて、食べるのを止めている。


「ん?どうした?食べないの?」

「バウバウッ!」


 やはり、食べたいのだろう…彼等の尻尾はブンブンと振られているし、何だったら、涎も垂らしている。


「もしかして…アレか?」


 いや、でも彼等は犬でもなければ、僕のペットでもないし…。

 とは言え、懐かれた事もあり、もしかしたら、そう言う事もあるのかもしれない。


「よしッ!!」


『ガツガツガツッ!!』


 一瞬、まさかッ!?とは思ったが、僕の合図に反応し、一斉にドッグフードを食べ始める。

 おいおい…お前達は、誇り高い狼だろ…とは思ったが、ドッグフードの魔力に魅了されたのか、彼等は一心不乱に目の前の餌を貪っている。


「でもまぁ、この世界のご飯って、微妙に美味しくないもんな…。」


 宿屋のご飯は、まぁまぁ美味しかったけど、基本的に薄味で物足りない。

 いや、そもそもダシと言う概念がないのかもしれない。

 他にも、ステーキを食べても、肉汁があまり出てこない。

 おそらくは、焼き方が問題なのではないだろうか?


 まぁ、基本的に、生で食べる彼等にその概念が適用されるかは、甚(はなは)だ疑問ではあるが…。

 そんな事を考えていると、僕の足をタッチしてくる狼が一匹…。

 確か、コイツは彼等の中では紅一点の雌狼だった様な…。


「どうした?」


 僕がそう声を掛けると、彼女は先程まで食べていたお皿を咥え、僕の前へと持ってきて置いた。

 え~っと、これはどっちだ?お皿を片付けろって事か?いや、これは…。


「お代わりが欲しい…か?」

「バウッ」


 こちらの言葉を分かっているのか、それとも分かっていないのか…絶妙なタイミングで吠える。

 まぁ、違ったら違った時か?僕はお皿に餌を…。


「あの…順番待ちですか?」


 いつの間にか、彼女の後ろには、同様にお皿を咥えた狼達が一列に行儀よく並んでいる。

 なんと言うか…かなり変わった狼達である。


「まぁ、いっか…。」


 狼達からお皿を受け取ると、お皿の位置を変え、中にドックフードを入れると、次の皿を受け取り、同様の作業に…。

 全ての狼達に配り終わると、僕は少し離れた所に座る。

 まぁ、このまま狼達を置いて、先に進んでも良かったのだが、今までの行動から予測すると、置いていくと彼等に怒られそうだったからの対処である。

そんなこんなで、彼等の食事が終わるまでの、しばしの間、僕も休憩を取るのだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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