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傲慢なピンハネを、より悪質な手を使って奴隷落ちさせた翌日、僕は再びイサスの街へと戻って来ていた。
本来であれば、ホシガーリ男爵との取引…トイレットペーパー(貴族用)をボッタクリ価格で販売した事で、しばらく働かなくても十分にお金に余裕があるのだが、それでもイサスで露店を開く為の場所代を先払いで払っているのが勿体なく思い、結局、露店を開いていた。
それから数日は何事もなく過ぎ去っていたのだが、隣のおじさん…ギョフさんは少し元気がなかった。
「はぁ~…。」
本日、何度目か分からない溜息がギョフさんの口から漏れている。
う~ん…やはりピンハネの事で、心を痛めているのだろうか?
「ギョフさん…さっきから溜め息ばかり出てますけど、大丈夫ですか?」
「うん?あぁ…モブ君か、もちろん大丈夫だよ…はぁ~…。」
「いや、流石に、ぜんぜん大丈夫に見えないんですけど…。」
さっきからギョフさんを見ているのだが、数分立たずして溜息を付いているのだから、心配するなと言う方が無理があるだろう。
「実はね…この前、兄ちゃんに紹介したピンハネがさ、貴族様を怒らせて、犯罪奴隷に落とされたんだよ…しかも、鉱山送りに…ね。
知ってるかい?犯罪奴隷は鉱山送りになると、一番、キツイ作業を任されて、事故にあって死ぬ確率が増えるんだよ…。」
「そ、そうなんですね…。」
ピンハネが奴隷落ちした原因を作ったから知ってますよ?
なんだったら、その場所にいたから、その一部始終を見てましたよ?
まぁ、オジーさん達を助ける為に、ピンハネと契約してホシガーリ男爵にピンハネの命乞いをしたからこそ、ピンハネは奴隷になる代わりに生きてるんですけどね?
まぁ、それでもピンハネが無事ならば、ギョフさんも、ここまで心配はしなかっただろう。
だが、おじさんの言った様に、犯罪奴隷に落ち、更に鉱山送りになった事で、ピンハネとは音信不通…ともなれば、ピンハネの友達だった、おじさんが溜息ばかり付くのも仕方がないのかもしれない。
それと、おじさんは、ピンハネの事を、そこまで悪いヤツと思っていなかった様だ。
故に、世話焼き好きなギョフさんには、ピンハネの奴隷落ち&鉱山送りは、寝耳に水だった。
それも、自分が教えたトイレットペーパーが原因だったと知らないまま…。
そんなギョフさんの姿を見ていると、いくら復讐の為とは言え、少しばかりやり過ぎた…と反省する。
いや、反省と言うよりは後悔と言った方が良いのだろうか…。
「やっぱり、他の街に行った方が良いのかもしれないな…。」
正直、知り合いが凹んでいるのを見るのが辛かった。
まぁ、時間が経てば、直ぐに元のおじさんに戻るとは思うが、僕にはそれが耐えられないと思ったのだ。
その為、一時的に…ではあるが、他の街に行けば、また心機一転、頑張れるのではないだろうか?
それに…『ウタカン』と比べると、逆方向なであり遥かに遠いが『ウッペブ』の街の近くには、ファンタジーではお馴染みの、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮があるらしいのだ。
つまり、その街であれば、今以上に稼げるかもしれないと言う事。
そして…安全第一を考えて商人をやっていたけど、やはり僕も男だからどうか?
冒険者となり、冒険をしたくなったのだ。
もちろん、命の危険が及ばない、安全な範囲で…だが。
「うん、やっぱり、そうしよう!」
思い立ったが吉日…ではないが、僕はそう決意すると、さっそく準備に取り掛かる事にする。
とは言え、場所代に関しては、明日まで代金を支払っているので明日も露店は開く。
それでも、露店に関しては、商品さえ用意しておけば、売るだけなら二人のお手伝いさん…オジーさんとオオバさんがいる。
しかも、二人はお手伝いさんと言っても、ピンハネとの契約で僕の奴隷となっている為、契約魔法で縛られているので店を任せても問題ない。
なので、僕は二人に店を任せ、色々な店を回る事にしたのだった…。
†
「おや?この前の坊やじゃないか、何か盗みに来たのかい?」
「って、なんでやねん!いや、そうじゃなくて…近々、ウッペブへ行こうと思いまして、ポーションを適当に揃えようかと…。」
「冗談じゃよ、坊やの反応が面白い物じゃから、つい、からかいたくなるんじゃよ。
それで、ポーションを買いに来たと言ったが、この前の分は使っちまったのかい?」
「あ、いえ…幸い、使う必要がありませんでした。」
「そうかいそうかい、わたしが言うのもなんだが、使う機会がなくて良かったじゃないかい!」
確かに、ポーションを売っているお婆さんが言うのはどうかと思う。
だが、それでもお婆さんの言う通り、使わなかったと言う事は怪我やら負っていないと言う事なのだから、良かったと思いたい。
「しかし、ねぇ…この前のポーション以外で…となると、もっと効果の高いポーションって事になるぞい?
まぁ、それでも見るだけなら無料だから見ていくかい?
あ、もし割ったりしたら、しっかり弁償して貰うからね?
それと、ビタ一文負けないから、本気で注意するんだよ?」
「は、はい…。」
それから暫く色々な物を見て回り、説明を聞きながら時間を潰し、僕はお婆さんの店を出た。
結局、お婆さんの勧めもあり、僕は高級ポーションを一つだけ購入して店を出てきたのだが、色々な物を見ていた時に、お婆さんがちょっとした悪戯を仕掛けてきた。
結果だけで言えば、僥倖…ただ、その一言に尽きる。
なんと、お婆さんは僕の驚く反応を見たいが為だけに、ダンジョン産の『エリクシール』…エリクサーを僕に触らせたのだ。
当然と言えば当然だが、万が一の事があっても弁償する事なんて出来るはずはない。
緊張のあまり、おそるおそる震える手でエリクサーを持ってる僕に、お婆さんは『ゲヒャヒャヒャヒャ』と爆笑し、さらなる追撃を仕掛けてきたのだ。
『もし割ったら、坊やはわたしのお婿さんになってもらおうかねぇ~。』
あまりに突拍子も無い言葉に、僕の手からエリクサーがスルリと滑り落ちる。
ヤバイッ!!と思った瞬間、自分でも驚く程の速さでエリクサーを掴んでいた。
所謂、火事場の馬鹿力と言う物だろうか?まぁ、それを見ていたお婆さんが『チッ!』と舌打ちをして悔しがっていた所為で、何処まで本気だったのかは分からないが、良い意味でも悪い意味でも、僕はお婆さんに気に入られてしまった様だ。
そんなトラブル?こそあったが、最後、店を出る時には『坊や、いっておいで…でも、気を付けて行くんだよ?またおいで』と、優しく笑顔で送り出してくれた事で、色々と荒んでいた僕の心を優しく解きほぐしてくれたのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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