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「ちょっと待ったっ!!」
バラ団長の振り下ろした長剣が俺を切り裂く寸前、何処からともなく止めに入る声が聞こえた。
その結果、バラ団長の剣は、ギリギリ首の皮を軽く切った所で止まった。
何処かで聞いた事のある声ではあるが、よく思い出せない。
だが、今はそんな些細な事よりも、命が助かった事を天に祈るしか無いだろう。
「ふぅ、なんとか間に合ってよかった…ピンハネさん、大丈夫ですか?」
先程、『ちょっと待った』と声を掛けた男が近付いてきて、俺の心配をする。
だが、しかし、何処かで聞いた事のある声だが…。
「そ、その声は…そうか貴様がッ!俺に何の恨みがあってこんな事をッ!?」
そこに居たのは、俺がトイレットペーパーを買ってやった男がいた。
「いや、それ以前に、ここに貴様がいると言う事は、俺が処刑される所を見る為に追ってきたのかッ!?
い、いや…だが、それは、むしろ好都合と言うもの!
ホシガーリ男爵様、此度の出来事、私は何も知りません、全てコイツ犯人です!」
咄嗟に口から出たデマカセは、自分でも、流石に無理があると苦笑するしか無い。
だが、それでも、こんな若造と俺とでは、信頼度が違うはず。
ならば、全て、こいつの所為にしてしまえれば…。
「ピンハネ、何を人の所為にしておる!ホシガーリ男爵様は、既に、貴様の悪事は全てお見通しである。
しかも、貴様を助けようとしたした恩人に向かって、よもや、その恩人に罪を着せる腹積もりとは、呆れて物も言えぬとは、この様な恥知らずは、やはり切り捨てた方が良いのでは?」
「あ、いや、その様な事は決して…で、今言った事は事実なのです!」
「まだ言うかッ!!」
まだ言うか!と怒鳴られても、自分の命が掛かっているのだから『はい、そうですか』…と、殺されてやる訳にはいかない。
俺が生き残る為なら、どんな手を使ってでも…と決心していた。
「だ・か・ら、ちょっと待って下さいってばッ!!」
「ぬをッ!?す、すまない…此奴の態度があまりに酷かった物だから、つい…。」
「いや、まぁ…その気持は分からなくも無いですけど…。
ですが、こちらにも用事があるんです!」
はぁ?コイツが俺に用事だと?いったい何様のつもりだ?
だが、そのお陰で生き延びる可能性が出ているのだから我慢してやらん事もない。
「バラ団長、しばし彼の頼みを聞いてやってくれ。
彼が私にもたらした物は、そうそう手に入る物ではないのだから…な。」
「ハッ!畏まりました。
ホシガーリ男爵の許しが出た…話すが良い。」
「ホシガーリ男爵様、ありがとうございます!それと、バラ団長にも感謝を申し上げます。」
「ふむ…気にするな、これも仕事だからな。」
ふむ…どうやら、話の内容から推測するに、この男は、ホシガーリ男爵に、何か珍しい物を売ったみたいだな…。
いや、先程の話では、ホシガーリ男爵は『貴族用のトイレットペーパー』を…と言っていた。
そうかッ!つまり、コイツは俺に売ったトイレットペーパーよりも、もっと貴重なトイレットペーパーを隠し持っており、それをホシガーリ男爵に売りつけ、気に入られたのだ。
そう考えれば、この待遇も分からなくもない。
「あの…少し、お話良いでしょうか?」
「ダメと言った所で、拒否権などないのだろうが…仕方がないから話せ。」
一対一であれば、鼻で笑って無視する所だが、ホシガーリ男爵とバラ団長が見ている前では、下手な態度を取る訳にもいかず、仕方がないと受け入れる。
「ありがとうございます、それでは…一つ、取引したい事がございまして…。」
「取引…だと?」
「………はい。」
この男、こんな場所で、俺に取引を持ち掛けるとは一体何を考えているんだ?
とは言え、俺も商人であるからには、取引と言われては、心が動いてしまうのは仕方がない事。
しかも、ホシガーリ男爵やバラ団長が何も言わないと言う事は、二人も了承しているのだろう…ならば、話だけでも聞いてやるとするか…。
「それで?一体何を取引すると言うんだ?」
「それはですね………。」
この男から提案された取引は、今の俺には十分魅力的な提案だった。
と言うのも、現状、俺の命は風前の灯と言っても過言ではない。
しかし、コイツは、俺の命を救う代わりに、ある物を寄越せと言う事だった。
まぁ、確かに、それを渡すと商売をする上で、多少は不都合が生じる…が、それでも多少なだけで大した問題ではないと言えるレベルである。
ならば、確実に俺の命が助かるのであれば、その取引に乗っても良いのではないだろうか?
「良いだろう…ただし、本当に約束を守れるのだろうな?」
「えぇ、何でしたら、契約書を書いても良いですよ?
寧ろ、契約書をホシガーリ男爵が用意してくれましたので、ピンハネさんに書いて貰わないと困るんですけどね。」
コイツ、何を企んでいる?確かに、取引の内容は俺にとって有利な取引ではあるが…何か見落としているのか?
だが、何も見落としていない様な…。
「まぁ、良い…それを寄越せ!」
何度見ても、見落としがない様に見える。
ならば…と、契約書にサインをする。
「では、僕も…。」
俺がサインをしたのを確認すると、今度はコイツがサインをする。
すると、契約書は光を放ち、契約が完了したのを知らせる。
これで、コイツが約束を破れば、契約に応じた罰が、契約の神から下されるだろう。
「では、無事に契約が完了しましたので、オジーさんとオオバさんは、僕の奴隷となります。
いや~、召使いと聞いていましたが、まさか、彼らが奴隷と知った時は驚きました。」
「フンッ!だが貴様も取引を忘れるなよ?」
「えぇ、それはもちろんです。」
そう言って男は、ホシガーリ男爵の所へ行くと、何やら話を始める。
そして、バラ団長も話に加わり…待つ事しばし…ホシガーリ男爵がバラ団長を連れて近付いてきた。
「ピンハネよ、話は聞いた…本来なら、お主はこの場で処刑するつもりであったが、彼の強い要望でお主を生かしておく事に決めた。
だが、当然、お主のした事は、許せる物ではない。
よって、お主の身分を奴隷とし、鉱山送りにする事とする。」
「なッ!?それでは話が違います!!契約では、命を助けると!」
「ふむ…お主、異な事を言うではないか。
彼は、ちゃんと契約通りお主の命を助けるように私に懇願し、私もそれを受け入れた。
故に、こうして処刑せずに、命を助けたではないか。」
いや、確かに今は助かったかもしれないが、鉱山送りにされたら、俺の命は長くはないだろう。
しかし、この契約が有効なのか、あの男には罰が与えられるそぶりすらない。
「いや~、ホシガーリ男爵様、お陰で良い取引が出来ました。
これからも、何か良い物がありましたら、お持ちいたしますので、ご贔屓のほど、よろしくお願いします。」
「うむ、お主には期待しておるぞ!」
こうして、俺は、奴隷へと落とされ、鉱山へと送られたのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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