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「さ、さて…少し困った事になってしまったが、本題に入ろう。」
金貨百枚ほどで購入した物が殆ど消えてしまったのだが、『少し困った事』で済ませれるのだろうか?
だか、肝心のホシガーリ男爵が、そこまで慌てていない所を見ると、直ぐに何か手を打てる状態なのかもしれない。
そう考えると、オジーさんから聞いたピンハネの情報は、更に信憑性が増すと考えられる。
だとすると、今頃は、宿屋の自室で金貨を数えながらバカ笑いでも上げているかもしれない。
「それと、ユリはバラ団長を呼んできてくれるかな?」
「はい、畏まりました。」
ユリと呼ばれた使用人?メイドさん?は、部屋を出ていく。
それにしても、ユリにバラ…か、なんか卑猥に聞こえるのは僕だけだろうか?
「それで…モブだったか?このトイレットペーパーは、やはり君がピンハネに売った物なのかね?」
「え~っと…はい、間違いなく僕が売った物…しかも、平民用の物に間違いありません。」
すると、今まで温厚だったホシガーリ男爵の顔が、怒りを顕にし歪んだ。
そりゃそうだろう…いくらホシガーリ男爵が温厚とは言っても、それでも彼は貴族なのだ。
いくらピンハネがホシガーリ男爵の望む物を多く売りに来る商売人だと言っても、ピンハネは平民…そんなピンハネが『平民用』のトイレットペーパーを貴族であるホシガーリ男爵に売ったとあっては、侮辱以外の何物でもない。
もちろん、最初から平民用と言って売っていたのなら問題なかっただろうが、ピンハネが説明しているはずがない。
そもそもな話、僕はピンハネに平民用と言っていないのだから、ピンハネが知るはずもないのだ。
なら、ピンハネも知らなかった…と言う、言い訳が出来るのでは?と思うだろう。
だが、それはそれ…僕がホシガーリ男爵に事情を話した事で、その言い訳も通用しない。
そもそも、ピンハネは僕から買ったトイレットペーパーをホシガーリ男爵に十倍の値段で売りつけているのだ。
そんな事まで、ホシガーリ男爵が知ってしまったのだから、もう言い訳が通用する筈がないのだ。
「そうか…では、次の質問なのだが、君は『貴族用のトイレットペーパー』を用意する事が出来るのだろうか?
それも、多くの数を…。」
「それは…ピンハネがホシガーリ男爵様にお売りになった数と同じ、百個を…でしょうか?」
「うむ…正直な話、現在、我が領は少々困った事になっていてな。
その為、他の領へ支援を要請しようと思っていたのだ。
とは言え、支援を求めるにしても何の見返りもなしに動く貴族は…誰もいない。」
「それで、トイレットペーパーに目を付けた…と。」
なるほど、それなら大量の数を一度に買ったのにも頷ける。
「もちろん、あくまでも品目の一部ではあるがな。
だが、アレは貴族であれば、誰もが欲しがる物であると私は確信している。
特に、女性にとっては、絶対と言える程の必需品とさえ思っている。」
「で、でも、ピンハネが売ったのは平民用ですよ?」
と、ここまで言って、ホシガーリ男爵の言葉を思い出す。
彼は『貴族用のトイレットペーパー』を用意出来るか…と…。
「あ、いえ…確かに、貴族用のトイレットペーパーでしたら、お時間がかかりますが用意する事は可能です。
ですが、貴族用と言いましても品質が良いだけで、知っての通り、さほど変わりませんよ?」
先程、貴族用と言って渡したトイレットペーパーをホシガーリ男爵は、肌触りとかを念入りに確認していたのを思い出す。
「確かに、そんなに差は無いと私も思う…だが、この花の様な模様や匂い、こんな装飾があるだけでも、十分に貴族としての見栄が張れるのだよ。」
「そ、そうなんですね…。」
どうやら、貴族用と言う事で、少し高級感のある模様や匂いがあるトイレットペーパーを創り出したのは正解の様だ。
なお、余談ではあるが、森の中やイサスの街で売ったトイレットペーパーは、模様も匂いも無い標準タイプである。
そうこうしている内に、部屋の扉が『コンコン』とノックされた。
「旦那様、バラ団長をお連れしました。」
「うむ、入りたまえ。」
「失礼します。」
そう言って入ってきたのは、先程のユリさん…と、少しマッチョな男性である。
「旦那様、俺…私をお呼びとの事ですが、何の御用でしょうか?」
マッチョさん…じゃなかった、バラ団長がこちらを一目でみると、態度と口調を改め、ホシガーリ男爵に話しかける。
「実はな…宿屋に入るピンハネを捉えてきて貰いたいのだ。」
「ピンハネを…ですか?」
「あぁ、トイレットペーパーの件で…と言えば、ヤツも分かると思う。」
「分かりました…ちなみに、ピンハネはいつもの宿屋で?」
なるほど、どうやらピンハネがいつも泊まる宿屋が決まっているのか…。
それなら捕まえるのもそう難しい問題ではないだろう。
「おそらく…だがな、まぁ、いつもの場所にいなくとも、あの者が泊まる宿屋など、そう多くはないだろう。
まぁ、抵抗するかもしれぬが、決して逃がすでないぞ?」
「ハッ!畏まりました!」
バラ団長はそう言うと、踵を返し部屋から出ていった。
「さて、それでは商談に入ろうか…時間は掛かると言っていたが、どれほど掛かる?」
「そ、そうですね…数日いただければ、目標の数はご用意出来るかと…。」
ぶっちゃけ、今すぐにでも用意は出来るのだが、時間が掛かると言った方が、如何にもそれっぽいだろう。
「そうか、それで金額なのだが…。」
「それでしたら、もしよろしければ、お近付きの印として大銀貨一枚でどうでしょうか?
何やら、ピンハネから買い取った品が消えたと聞こえましたので…安い方が良いですよね?」
貴族は見栄を張る…その為、安くすると、要らぬ反感を買う恐れもあるが、トイレットペーパーを消した犯人は僕なのだから、正直な話、代金は無料でもバチは当たらないだろうが、それだと自分が犯人だと名乗っている様なもの…。
そうなると、僕は犯罪者として処刑されるかもしれないので、ある意味、苦肉の策である。
「お心遣い、感謝する…では、先に代金を…。」
「いえ、それは商品と引き換えにお願いします。
万が一、商品を揃える事が出来なかった場合、責任が取れなくなりますので…。」
普通の人であれば、数が揃えれないってのもあるが、ピンハネみたく商品を奪う者もいるだろう。
僕は自作するから大丈夫だが、一般的に考えればリスクが高いと思ったからだ。
「ふむ、了解した…では、商品と引き換えとするとしよう。
それでは、また後日に会うとしよう。」
「はい、それでは失礼致します。」
こうして、僕は、後日会う約束をして、ホシガーリ男爵のお屋敷を後にするのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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