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『コンコン、コンコン…。』
先頭を歩いていたオジサンが、ピンハネの部屋の扉をノックする。
本当なら、こんな遅くに部屋を訪れるのは、あまりよろしくないのだが、明日の朝だとピンハネ一行が出発してしまうかもしれないとの事で、オジサンの提案もあり、失礼を承知で、この時間にお邪魔する事になったのだ。
なお、建物の作りだが、上層階になればなるほど豪華な作りになっているらしいのだが、残念ながらエレベーターが無い為、上層階へ行くには階段を登る必要があり、上に上がるだけでも大変だったりする。
余談ではあるが、ピンハネの部屋は、僕の部屋よりも二階ほど上層階だったので階段を登るのが面倒だった。
「…誰だ?」
やはりと言うべきか?既に遅い時間だからか、不機嫌そうな声が扉の向こうから聞こえてきた。
「オジーです、モブさんをお連れしました。」
オジサンはそう言うと、僕に小さな声で、いつもの事だから、気にしないでと…と、教えてくれた。
「何?モブ…だと?非常識なヤツだな…いったい、こんな遅くに何の用だ?」
扉の向こうから聞こえる声が、更に不機嫌になった様な気がした。
『ガチャ…。』
ドシドシと、デカい足音をたてながら、扉に近づいてきたと思ったら、ピンハネが扉を開けてくれた。
「ピンハネ様、商品の積み込み、無事に終わりました。」
「そうか…それで?貴様は何の用があるんだ?」
ピンハネがオジサンに労いの言葉を掛ける事なく、僕に高圧な態度で聞いてきた。
「何の用だ…ですか?オジーさんも言いましたが、商品の積み込みが完了しましたので、そのお知らせと…。」
「それは、今、そいつから聞いた、貴様はもう帰っていいぞ!」
僕は、もう用済みと言わんばかりに、追い返そうとするピンハネ…本気で最悪である。
「いえ、帰れと言われても、まだ商品の代金を頂いていませんので…『はい、そうですか』と帰れないと言いますか、その…。」
「貴様、この俺を信用出来ないと言うつもりかッ!!」
「い、いえ、そんな気はありません!
ですが、代金を払って貰わないと本当に困るんです!それに、こっちも商売ですので…。」
例え口約束だったとは言え、正式に契約したのだから、代金を支払う義務があるのは至極当然の事である。
なお、この世界ではには商売の神がいるらしく、故意に約束を破った場合、それ相応の罰を与えられる…との事だった。
まぁ、本当にそんな神様がいるかは甚だ疑問ではあるが、こう言う時は有り難い存在である。
「チッ、そこで待ってろ!」
ピンハネはそう言うと、部屋の奥へと歩いていき、何かをガサゴソと漁ると、再び歩いてきた。
「ほれ、約束の金だ、受け取れ!」
ピンハネはそう言うと、こちらへ金貨を投げた。
『チャリンチャリン、チャリン…。』
よもや投げて渡すと思っていなかった為、反応が遅れ、金貨は廊下へと散らばる。
しかも、ピンハネは、わざと散らばる様に投げたのだ。
その傲慢な態度に怒りを覚えるが、正直、僕のステータスでは、まるで相手にならないのは目に見えている。
そもそも城を追い出される時に、衛兵らしき人に『子供でも、お前よりマシなステータスだ』などとバカにされたから、それは間違いないだろう。
いや、そんな事より、この世界の人達は、床にお金を撒いて拾わせるのが主流なのだろうか?
城の兵士らしき人もそうだったし…正直、凹みそうになる。
「兄ちゃん、俺も拾うのを手伝うから拾ってしまおう。」
「あ、ありがとうございます…。」
不覚にも、オジサンの言葉に目が潤んでしまう。
そして、二人でお金を拾い集めたのだが…。
「兄ちゃん、金貨何枚あった?」
「えっと…僕は四枚ですね。」
「俺は、五枚なんだが…。」
「えッ!?」
僕は慌てて、周囲を見渡す…しかし、何度見ても残りの一枚が見付からない。
それは、一緒に探してくれたオジサンも同様みたいだった。
「やっぱり無いですよね?」
「あぁ、だとすると、やはり…。」
オジサンは、そう言うと立ち上がると、ニヤニヤと笑っているピンハネに向き合う。
「ピンハネ様、どうも金貨が九枚しかなかった様なのですが、もしかしてポケットの中に残ってたりしていませんか?」
と、オジサンは、どこか確信めいた感じで問いただす。
「ふむ、そんな事は無いと思うが…おや?オジーの言う通り、ポケットの中に残っていたではないか、ハッハッハッ!」
ピンハネは悪びれもせずに、そう言い放った。
なるほど、オジサンが『やはり』と言ったのは、そう言う事か…。
「あぁ、良かった…只でさえ赤字なのに、大事なお金を無くしたかと思ってしまいました。」
と、僕は嫌味を含めて言うも、ピンハネは眉一つ動かさない。
ただし、僕が残りの金貨を受け取ろうと手を出すと…。
『チリーン、カラカラカラ…。』
金貨は、僕の手に渡される事無く、再び廊下へ落とされた。
僕は、無言で金貨を拾う…その際、ピンハネの顔が一瞬見えた。
先程同様…いや、先程よりも醜悪な笑顔で、ニヤニヤと笑っている。
なるほど…コイツは、どうしようもなくクズで、僕の敵なのだ…と、改めて認識をする。
お世話になったおじさんのお仲間と言う事で、我慢していたのだが、流石に我慢の限界である。
この時、僕は、本気でピンハネに復讐する事を決意したのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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