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「えっと…ピンハネさんの馬車は、こちらであってますか?」

「あぁ、そうだが、君は?」

「あ、失礼しました…僕は『モブ』と言います。

 この度、ピンハネさんに商品を、こちらの馬車に届ける様にと言われまして…。」

「あぁ、さっき使いの者が言ってた件だな?

 俺の名前は『オジー』だ…それで、その商品は何処に?」

「あ、今、鞄から出しますね。」


 僕はそう言うと、鞄の中に手を入れると、〖レプリカ〗を発動させ、最低品質のトイレットペーパーを創り出す。


「すいません、こちらなんですが…。」


 と、見張りの人に取り出した物を見せる。


「へ~、なんだか変わった物だが、これは何だい?」

「これはですね…かくかくしかじか、まるまるうまうまでして…。」


 と、商品に興味を持った見張りの人に説明をする。

 まぁ、こんな所で説明しても、ピンハネに卸したトイレトッペーパーを、この人が手に入れる事は厳しいと思うが…。


「それでですね…あと百個以上取り出す事になるんですが、馬車に積み込むのを手伝って貰って良いですか?」

「あ、あぁ…商品ってんなら、作業を手伝わないと、ピンハネの野郎に何言われるか分からんからな…。」


 ふむふむ、雇い主を影で『ピンハネの野郎』なんて呼ぶと言う事は、やはり、そう言う事なんだろうな…。

 う~ん…この人になら無料(タダ)でトイレットペーパー(商品)を一つ分けてあげても…とは思うが、もし、彼が持っているのを見掛けたら、ピンハネは彼が泥棒したと騒ぐだろうな…と、考えると、溜め息が出た。

 せっかく好意で手伝ってくれるのに、こちらのお礼で迷惑を掛ける訳にはいかないので断念する。


 何はともあれ、鞄から出す→オジーさんに渡す→オジーさんが並べる→鞄から出すの繰り返し作業の始まりである。

 百個以上ものトイレットペーパーを並べると言う地道な作業を続け、とうとう作業は終りを迎えようとしている。


「オジサン、お疲れ様です…これで最後です。」

「あぁ、了解だ、兄ちゃんもお疲れ…だ。」


 あのピンハネの関係者とは思えないほど、気の良いオジサンに、何かお礼を…と考え、鞄からペットボトルの紅茶を取り出す。

 なお、最初はオジーさんと呼んでいたのだが、途中から面倒になり、普通にオジサンと呼ぶ様になっていた。

 なお、オジサンに差し出そうとしている紅茶は、もちろん〖レプリカ〗で創り出した物である。

 最初は緑茶やコーヒーを出そうと思っていたのだが、飲み慣れていないとアレだからでのチョイスだったりする。

 まぁ、本当はビールとかのお酒の方が、オジサン的には良いのだろうが、流石に、馬車を見張っている人にお酒を飲ませると言うのは、色々と問題があると考えての行動である。


「オジサン、コレ…喉が乾いたでしょうから、手伝って貰ったお礼にどうぞ。」


 僕はそう言うと、先程、取り出したペットボトルを渡す。


「おぉ、ありがと…でもよ、これは一体何なんだ?お礼って言ってたが、初めて見るんだが…。」

「あ~、これは紅茶の『ペットボトル』ですよ。」

「ペットボトル?ってのが分からないが、これが紅茶だって?

 今まで見た紅茶とはだいぶ色とかが違う様だが…。

 それに…コレ、どうやって飲んだら良いんだ?」

「あ、それはですね…。」


 流石に、初めて見ると言うだけあって、興味津々でこちらの話を聞いてくれる。

 ちょっと説明しただけで理解してくれ、ちゃんと蓋を開けてゴクゴクと飲み干していく。


「か~!紅茶ってのは何度か飲んだ事があるが、こんな上手い紅茶は初めて飲んだぞ!

 しかも、この甘さが疲れた身体に染み込むと言うか…何とも言えないじゃねーか!疲れが吹き飛ぶかんじだぜ。」

「そ、そうですか?只の紅茶なんだけど…。」


 まぁ、只の紅茶とは言ったが、ペットボトルのラベルにはロイヤルミルクティーと書いてるので、正確には紅茶ではなくミルクティーではあるのだが…まぁ、そこら辺は些細な事である。

 ぶっちゃけ、ミルクティーにも紅茶が使われているし…ね。

 何にしても、この世界では貴重な砂糖もふんだんに入っているので、美味しく感じられるのは、その所為ではないだろうか?


「そう言えば…この代金って、誰に貰えば良いんですか?

 正直、あの人(ピンハネ)に会いたくないんですけど…。」

「あ~、そう言われてみれば確かに…だな、だが、俺は代金預かってないからな…やはり直接、受け取りに行かないとダメなんじゃないか?」

「やっぱり、そうですよね…でも、あの人、本当に代金の金貨十枚を払ってくれるのかな…。」

「はぁ~ッ!?さっきの代金が金貨十枚だってかッ!そんな高価な物を、こんな場所で積み込んでたのかよッ!?」

「え、えぇ…不味(まず)かったですか?」


 オジサンが驚いて大きな声を上げる。


「そりゃ、不味いだろ!俺は馬車の見張り番なんだぞ?

 もし、商品が足りないとなったら、俺の責任になっちまう…。」

「そ、そうなんですか?でも、盗まれない限り大丈夫…ですよね?」


 商品が足りないとオジサンの所為ってのは、何とも理不尽な気もする。

 まぁ、盗まれたら仕方がない部分もあるが…。


「あぁ…おい、兄ちゃん、確認なんだが…さっきのは何個だった?」

「え?見ての通り百八個ですよ?」


 オジサンが数の確認をしやすくする為か、綺麗に並べてくれているので、数えるのが簡単だ。


「そ、そうだよな?間違いないよな?」

「えぇ、間違いなくありますよ。」

「ふ~、それなら良いが…足りなかったら、弁償させられる所だったぜ。」

「す、すいません…そんなヤバイ話だったとは…。」


 金額が金額だけに、弁償をしろ…となると、洒落にならない。


「ま、まぁ、兄ちゃんの所為じゃないさ…。」

「そ、そうですか?でも、すいませんでした。」

「まぁ、気にするな…悪いのは、ピンハネの野郎なんだからよ。」

「そう言ってもらえて、助かります…。」


 互いに庇(かば)い合う形となり、ちょっとだけ気不味い雰囲気になってしまった。


「えっと…何話してったっけか?あ、そうそう、代金の話だった…。」

「あ、はい…。」

「実はな…もう少ししたら、交代になるんだが、交代したら一緒に行ってやるよ。

 その方が、兄ちゃんも、気が楽だろ?」

「え?良いんですか?」

「あぁ、構わないぞ?そもそも、商品を受け取った報告もしないとダメだからな。

 物のついで、ってヤツさ。」

「ありがとうございます。」


 その後、僕達はオジサンの交代まで待って、一緒にピンハネの所へと向かう事になった。

 なお、交代の際に、業務連絡としてトイレットペーパーの数もしっかりと連絡、確認をするのだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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