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『ザー、ザー、ザー、ザー』


 商業ギルドを出ると、外の様子は、入ってきた時と同様に少し強めの雨が降っていた。

 その為か、傘に当たる雨の音が激しく感じた。


「これ…止むのかな?明日もこんな調子だと困るぞ…。」


 露店の場所代(シャバだい)は、既に前金で一週間分のお金を払っている為、何もしなければ、それだけで赤字になるのだが、初日の売上で場所代は回収出来たのは良かったが、このままでは宿代などの生活費で足が出てしまう。

 そうならない為にも、商品を売ってお金を稼ぐ必要がある…故に、明日こそは晴れて欲しい所だ。


 とは言え、当たり前の事だが、雨が降らなければ農作物などに影響があるので、ずっと晴れているのは遠慮して欲しい。

 そう考えると、なんとも贅沢な悩みである。


 何はともあれ、商業ギルドでの用事は済んだので、次はお待ちかねの買い物である。

 と言うのも、宿屋で食べたご飯が、美味しいと言えば美味しい部類なのだろうが、個人的に、好みではないのだ。

 味が薄いと言えば良いのだろうか?何と言えば良いのか…色々と調味料が足りていない感じがするのだ。

 特に、旨味成分が足りていない感じがする。

 あと、どの料理も味気が薄いか塩気が強いか…である。


 その為、僕は、この機会(休み)を利用して市場調査と称して、街を見て回る事にした。


 その結果、分かった事だが、基本的な野菜は、元の世界と同じ様な物が売られている。

 ただし、元の世界の野菜に比べると、数ランク低い物に思えた。

 これに関しては、全部試した訳では無いが、実際に食べてみたので間違いはないだろう。

 まぁ、そう考えると、僕が〖レプリカ〗で創った食べ物を、この世界の人が美味しい美味しいと言うのも、何となくだが理解出来たのだった…。


†


「…で、ギョフさん、どうしました?」


 宿屋に帰った僕を待っていたのは、ギョフさんだった。

 彼は露店をする際にお世話になった、お隣さんの露店のおじさんである。


「あ~、いや、大した用じゃないんだが…実は、例の紙(・・・)を売ってほしくてな…。」

「例の紙…と言うと、トイレットペーパーの事ですか?」

「あぁ、そのなんたらペーパーとか言うヤツだ。」

「ま、まぁ、それは別に構いませんが…もう無くなったんですか?あれ一つあれば、結構持つはずですが…。」


 渡したトイレットペーパーは、一ロールが五十m(メートル)巻なのだが、それをたった一日…いや、半日か?

 どっちでもあまり変わらないが、そんな短期間で無くなる量ではないのだけは確かである。


「そ、それが…なんたらペーパーを、他のヤツに自慢したんだよ。」

「トイレットペーパーですが…それで?」

「そしたら、どいつもこいつも使わせろって話になって…。」

「渡しちゃんですね…。」

「あぁ…そしたら、そいつら…俺らにももっと寄越せって言ってきてよ。

 俺も最初は断ったんだぜ?でも、断りきれなくて…。」

「なるほど…だから、そんなにお酒臭いんですね…。」


 つまり、断り続けるギョフさんに対し、鮭を飲ませる事で、ギョフさんの気を大きくさせて、約束を取り付けた…と、大方、そんな所だろう。


「それで、何個いるんですか?」


 仲間内の自慢で…って事なら、多くても十個程度だろうか?

 だが、ギョフさんからの答えは、予想を超えた数だった。


「それが、百個程なんだけどよ…。」

「………はい?百個ですか?一人二個としても百個は流石に多過ぎじゃないですか?」

「お、俺もそう言ったんだぜ?だけど、あいつら…絶対に売れるから、もっと寄越せって聞かなくってよ?

 言う事を聞かないと、痛い目に遭うぞって、脅しまで…。」


 話を聞く限り、ギョフさんの仲間の人達は、自分達が使う用ではなく、転売目的で手に入れようとする『転売ヤー』の様だ。

 まぁ、僕以外の商人は、普通に商品を安く仕入れて高く売ってるのだから、極論で言えば、ある意味、他の人は『転売ヤー』ではあるのだが、それとこれとは別の話で、今回のは完全にアウトである。


「う~ん、どうしたものかな…。」


 商品自体はスキルで創り出すだけだから、創れば在庫はあるのだが、単純に他の人が儲けるが許せないのだ。


「あ~…うん、ではこうしましょう!

 流石に、僕からトイレットペーパーを仕入れているのはバレてますよね?」

「あ、あぁ…つい、喋っちまったから…。」

「でしょうね…そんなに酔ってれば、想像は付きます。」


 大方、他の人達に酔わせて、つい口を滑らされたのだろう。

 まぁ、そもそも口止めをし忘れていたので、責めるのは筋違いかもしれない。

 そう考えると、ギョフさんもある意味、被害者と言う事か…。


「面目(めんぼく)ない…。」

「ホントですよ、まったくです…でもまぁ、何度も売っていれば、いずれはバレる事ですから、今回は良いですけどね?

 それより、今は本題ですね…まずは、お仲間さん達を集めて商談をしましょうか。」

「え?…それで、良いのか?」

「まぁ、本音を言えば悪いですが…ギョフさんには色々とお世話になりましたから…。

 あ、でも、今回の事は『貸し(・・)』ですからね?」


 ぶっちゃけ、『貸し』を作ったつもりは、さらさら無い。

 ただ、こう言っておけば、ギョフさんの気持ちが軽くなるだろう…と思って、言っただけである。


「うへぇ…こりゃ、『借り』を返すのが大変そうだな、おい…。」

「まぁまぁ、ちゃんと手加減しますから…。」

「いや、本気(マジ)で、勘弁してくれよ?こっちは見ての通り、しがない露天商なんだから…。」

「はいはい…でも、僕だって只の露天商ですからね?」

「兄ちゃん、それ絶対、嘘だろ…。」

「はて?何の事でしょう?」

「ったく、兄ちゃんには敵わないな、ははは…。」

「そうですか?あははは…。」


 と、僕達は、最後は笑いながらギョフさんのお仲間の所に向かうのだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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