3
『ザー、ザー、ザー、ザー』
商業ギルドを出ると、外の様子は、入ってきた時と同様に少し強めの雨が降っていた。
その為か、傘に当たる雨の音が激しく感じた。
「これ…止むのかな?明日もこんな調子だと困るぞ…。」
露店の場所代は、既に前金で一週間分のお金を払っている為、何もしなければ、それだけで赤字になるのだが、初日の売上で場所代は回収出来たのは良かったが、このままでは宿代などの生活費で足が出てしまう。
そうならない為にも、商品を売ってお金を稼ぐ必要がある…故に、明日こそは晴れて欲しい所だ。
とは言え、当たり前の事だが、雨が降らなければ農作物などに影響があるので、ずっと晴れているのは遠慮して欲しい。
そう考えると、なんとも贅沢な悩みである。
何はともあれ、商業ギルドでの用事は済んだので、次はお待ちかねの買い物である。
と言うのも、宿屋で食べたご飯が、美味しいと言えば美味しい部類なのだろうが、個人的に、好みではないのだ。
味が薄いと言えば良いのだろうか?何と言えば良いのか…色々と調味料が足りていない感じがするのだ。
特に、旨味成分が足りていない感じがする。
あと、どの料理も味気が薄いか塩気が強いか…である。
その為、僕は、この機会を利用して市場調査と称して、街を見て回る事にした。
その結果、分かった事だが、基本的な野菜は、元の世界と同じ様な物が売られている。
ただし、元の世界の野菜に比べると、数ランク低い物に思えた。
これに関しては、全部試した訳では無いが、実際に食べてみたので間違いはないだろう。
まぁ、そう考えると、僕が〖レプリカ〗で創った食べ物を、この世界の人が美味しい美味しいと言うのも、何となくだが理解出来たのだった…。
†
「…で、ギョフさん、どうしました?」
宿屋に帰った僕を待っていたのは、ギョフさんだった。
彼は露店をする際にお世話になった、お隣さんの露店のおじさんである。
「あ~、いや、大した用じゃないんだが…実は、例の紙を売ってほしくてな…。」
「例の紙…と言うと、トイレットペーパーの事ですか?」
「あぁ、そのなんたらペーパーとか言うヤツだ。」
「ま、まぁ、それは別に構いませんが…もう無くなったんですか?あれ一つあれば、結構持つはずですが…。」
渡したトイレットペーパーは、一ロールが五十m巻なのだが、それをたった一日…いや、半日か?
どっちでもあまり変わらないが、そんな短期間で無くなる量ではないのだけは確かである。
「そ、それが…なんたらペーパーを、他のヤツに自慢したんだよ。」
「トイレットペーパーですが…それで?」
「そしたら、どいつもこいつも使わせろって話になって…。」
「渡しちゃんですね…。」
「あぁ…そしたら、そいつら…俺らにももっと寄越せって言ってきてよ。
俺も最初は断ったんだぜ?でも、断りきれなくて…。」
「なるほど…だから、そんなにお酒臭いんですね…。」
つまり、断り続けるギョフさんに対し、鮭を飲ませる事で、ギョフさんの気を大きくさせて、約束を取り付けた…と、大方、そんな所だろう。
「それで、何個いるんですか?」
仲間内の自慢で…って事なら、多くても十個程度だろうか?
だが、ギョフさんからの答えは、予想を超えた数だった。
「それが、百個程なんだけどよ…。」
「………はい?百個ですか?一人二個としても百個は流石に多過ぎじゃないですか?」
「お、俺もそう言ったんだぜ?だけど、あいつら…絶対に売れるから、もっと寄越せって聞かなくってよ?
言う事を聞かないと、痛い目に遭うぞって、脅しまで…。」
話を聞く限り、ギョフさんの仲間の人達は、自分達が使う用ではなく、転売目的で手に入れようとする『転売ヤー』の様だ。
まぁ、僕以外の商人は、普通に商品を安く仕入れて高く売ってるのだから、極論で言えば、ある意味、他の人は『転売ヤー』ではあるのだが、それとこれとは別の話で、今回のは完全にアウトである。
「う~ん、どうしたものかな…。」
商品自体はスキルで創り出すだけだから、創れば在庫はあるのだが、単純に他の人が儲けるが許せないのだ。
「あ~…うん、ではこうしましょう!
流石に、僕からトイレットペーパーを仕入れているのはバレてますよね?」
「あ、あぁ…つい、喋っちまったから…。」
「でしょうね…そんなに酔ってれば、想像は付きます。」
大方、他の人達に酔わせて、つい口を滑らされたのだろう。
まぁ、そもそも口止めをし忘れていたので、責めるのは筋違いかもしれない。
そう考えると、ギョフさんもある意味、被害者と言う事か…。
「面目ない…。」
「ホントですよ、まったくです…でもまぁ、何度も売っていれば、いずれはバレる事ですから、今回は良いですけどね?
それより、今は本題ですね…まずは、お仲間さん達を集めて商談をしましょうか。」
「え?…それで、良いのか?」
「まぁ、本音を言えば悪いですが…ギョフさんには色々とお世話になりましたから…。
あ、でも、今回の事は『貸し』ですからね?」
ぶっちゃけ、『貸し』を作ったつもりは、さらさら無い。
ただ、こう言っておけば、ギョフさんの気持ちが軽くなるだろう…と思って、言っただけである。
「うへぇ…こりゃ、『借り』を返すのが大変そうだな、おい…。」
「まぁまぁ、ちゃんと手加減しますから…。」
「いや、本気で、勘弁してくれよ?こっちは見ての通り、しがない露天商なんだから…。」
「はいはい…でも、僕だって只の露天商ですからね?」
「兄ちゃん、それ絶対、嘘だろ…。」
「はて?何の事でしょう?」
「ったく、兄ちゃんには敵わないな、ははは…。」
「そうですか?あははは…。」
と、僕達は、最後は笑いながらギョフさんのお仲間の所に向かうのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。




