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「いやー、売れた売れた!今日は兄ちゃんのお陰で大儲けだぜ!」
夕方になり、暗くなり始めた頃、僕達は店仕舞いをする事にした。
そして、片付けを終えて帰ろうとしたら、隣のおじさんが声を掛けてきた。
「いえいえ、そんな…おじさんが大儲け出来たのは、おじさんの実力ですよ。」
確かに、おじさんは僕から商品を購入し、それを転売よろしく売ってはいたが、それに関しては僕が許可しているので問題はない。
むしろ、金額設定までしていたのだから委託販売している様な物だった。
「嬉しい事いってくれるじゃねーか!だけどよ?兄ちゃんの『おにぎり』と『サンドイッチ』のお陰で、過去最高の売上なんだぞ?
そうそう…今更だが、俺は『ギョフ』ってんだが、兄ちゃんの名前なんて名だ?」
「あ~、言われてみれば、確かにまだ自己紹介してなかった無かったですね…僕の名前は『モブ』ですよ。
ちょっと変わった名前だと思いますが…。」
そりゃそうだろ…普通で考えれば『群衆』や『その他大勢の名もなき人々(人)』なんて意味の名前を子供に付ける親は、そうそう居ないはずだ。
まぁ、こちらの世界で『モブ』に別の意味があれば話は別だろうが…何はともあれ、この名前は珍しい名前のはずだ。
「まぁ、確かに聞かない名だが、ぶちゃけ、それがどうした?って感じだな。
それよりも兄ちゃん、このあと暇なら、俺の奢りで一杯飲んでいかねーか?」
せっかく名前を教えたのに、結局、兄ちゃんと呼ぶんですね…と、心の中で苦笑する。
「あ~、せっかくのお誘いですが、僕はお酒は飲めないんで…。」
「なんでぇ、兄ちゃんは下戸なのか…せっかく奢ってやろうとしたのによ…。」
「す、すいません…。」
せっかく、気分良くしていた所を盛り下げるのは申し訳ないと思う。
だが、そうは言っても僕はまだ未成年だからお酒を飲む事は許されない。
なお、追記ではあるが、この世界の成人は十五歳で、この時の僕は既に成人扱いと言うのは、後日、知る事となる。
さらに言うのであれば、小さい子でもアルコールが低いお酒は飲んでも良い事になっているらしい。
「あ、いや、兄ちゃんが悪い訳じゃねーよ。
俺の友達にも飲めねーヤツがいるんだが、そいつに無理やり飲ませた時には、大変な事になってよ…それ以来、飲めないヤツには無理やり飲まさないってのが友達連中の中では、暗黙の了解でな…。」
「大変な事…ですか?」
「おうよ、アレには友達連中もウンザリだったぜ…。」
「もしよければ、何があったか聞いても?」
本当は掘り下げない方が良いのだろうが、つい気になって聞いてしまう。
「あー、まぁ、良いけどよ…聞いて後悔するなよ?」
「え、えぇ、まぁ…。」
好奇心は猫をも殺す…と、諺があるが、その通りだと思う。
いや、この場合は、後悔先に立たず…が、正解か?
この後、僕は聞かなければ良かったと、後悔する事になる。
「あの日、俺達は仕入れを済ませ飲みに出かけてたんだ。
もちろん、その飲めないヤツも連れて…な。
で、そいつは飲んでいなかったが、他の奴らは飲んでる訳だ。
そうすると、酔ったヤツが飲めないヤツに酒を勧める訳だ。」
「まぁ、そうなるでしょうね…。」
僕のオジサンが、そんな感じで未成年の僕に酒を勧めてきた事がある。
その時は、親が止めてくれたから問題がなかったが、あのままだったらと思うと怖いものがある。
「それでも、つい無理やり飲ませちまった訳だ。」
「それで?」
「そいつも最初は、グビグビと飲んでたんだが、半分も飲まない内に、急に手で口を押さえてよ…次の瞬間、盛大にゲロをぶち撒けやがったんだ…。」
「………。」
いかん、想像したくなかったのに想像してしまった。
「しかも、床に吐くならまだしも、テーブルの上…だけじゃなく、料理にも…な。
だが、話はコレで終わらないってのが、アレでな…。
そんな無茶な飲ませ方をした俺達が悪いってんで、店主にそいつのゲロの後始末をやらされたんだ…。」
「さ、災難でしたね…。」
想像したら、なんか込み上げてきそうだ…。
「そうなんだよ…挙げ句には、もらいゲロってのか?片付けてる最中に仲間の一人が、追加でゲロってさ…。」
「も、もう、良いです…。」
もうお腹いっぱいです…これ以上は、僕もリバースしそうで聞きたくないです。
後悔先に立たずとは、よく言ったものだ。
「だよな…まぁ、そんな訳で、それからは飲めないヤツには飲まさないってのが仲間内での暗黙の了解になったって話だ。」
「そ、そうなんですね…確かに、僕も、また同じ事は勘弁だと思います。
あ、でもお酒はパスですが、ご飯を食べに行くくらいなら構いませんよ?」
その場合は、宿屋のご飯代がもったいないけど…。
「そうか?なら、今から行くか?」
「えぇ…ですが、一度、宿屋に帰って女将さんに食事をいらないと言わないと…。」
「それもそうか…何処の宿屋だ?」
「門の近くの…。」
「あぁ、門の近くと言うと、『宿り木』か?」
「えぇ、そうです。」
「なんだ、俺と同じ宿屋じゃねーか!だったら、わざわざ他所へ行かずに、飯もそこで良いんじゃねーか?
そうすりゃ、飯は既にあるから、一品追加とかにすれば安く済むし、眠くなっても部屋に戻ればすぐに寝れる。」
「えぇ、僕はそれで構いませんよ?まぁ、あまり賑やかなのは得意ではありませんが…。」
「確かに、食堂は賑やかだからな…。」
「えぇ…。」
それに、また酔っぱらいが絡んでくるかもしれないし…と、心の中で呟く。
「まぁ、何にせよ、もう少しで日が沈むから、暗くなる前に急いで宿屋に戻るとしようぜ。」
「そう…ですね。」
まぁ、何とかなるか…と思い、宿屋へと向かうのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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