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『ゴクッ、ゴクッ』


 隣のおじさんが、僕の真似をしてアイスコーヒーを飲む…までは良かったのだが…。


『ブフォッ!』


 と、盛大にコーヒーを吹き出した…なんとも汚い話である。


「ゴホッ、ゴホッ!な、なんじゃコリャー!兄ちゃんが美味しそうに飲んでたから貰ったが、苦すぎて飲めたものじゃねー!

 正直、一瞬、毒かと思ったぞ!!」


 うん、人から貰った物に対して、酷い言い草だ。

 とは言え、こちらも、こんな事があろうかと、先に『初めてだと、かなり苦く感じる』と注意はしている。


「あ~、やっぱり、そうなりましたか…とは言え、予想よりも酷かったみたいですが…。

 え~っと…飲みやすくしますので、コップをこちらに貰えますか?」

「お、おぅ…だけどよ兄ちゃん?こう言っちゃーなんだが、どう頑張ったって、飲める物になるとは思わないぞ?」


 まぁ、確かに…先程の反応を見る限りでは、コーヒーをブラックで飲める様になるのは簡単じゃないかもしれないな。

 とりあえず、半信半疑ながらでもコップをこちらに渡してくるのでチャレンジャーだと思う。

 だが、砂糖と牛乳を多く入れて、コーヒー牛乳とかカフェオレにしたらどうだろう?

 それなら、子供でもコーヒー美味しく飲める様になるのではないだろうか。


「まぁまぁ、騙されたと思って、飲んでみてください。」


 と、僕は既に氷で冷たくなっているアイスコーヒーにシュガー(ガム)シロップと牛乳を多めに入れて甘めのコーヒー牛乳へと変化させる。

 もちろん、シロップが下に溜まらないように、ちゃんとかき混ぜてある。


「今度は甘くしてますので、たぶん、大丈夫ですよ?」


 僕はそう言って隣のおじさんに、コーヒー牛乳を渡す。


「お、おぅ…って、騙されたと思わないとダメな程なのか…。」


 先程の苦味を警戒してからか、おじさんは直ぐには口を付けない。

 だが、こちらがじーっと見ているので、意を決して、『ゴクリ』と一口飲んだ…。


「う…。」

「う?」


 あれ?もしかしてまだダメだったか?だとしたら、この世界でコーヒーを売るのはNGになるのだが…。


「うめーーー!なんだよコレ!なんなんだよコレはッ!!

 さっきとは別物の美味さじゃねーか!

 しかも、この甘さ!果物とは違う、なんとも不思議な甘さ!

 さらに、甘いだけじゃない!さっきはあまりの苦さで毒かと思っちまったが、甘い中にあるこの苦味が、より美味さを引き立てて…俺、こんな美味い飲み物飲んだ事ないぞッ!!」

「は、ははは…それは流石(さすが)に大げさですよ?」


 たかがコーヒー牛乳で大げさである。

 しかも、コーヒー豆だって〖レプリカ〗で作り出した品質の劣る豆だ。

 故に、そこまで驚く様な味ではない筈だ。


「何言ってやがる!大げさなんかじゃねーよ!

 どうだ兄ちゃん、俺と組んで、この飲み物を売らねーか?

 これは絶対に儲かるぜ?そしたら、こんなショボい場所で露店なんかじゃなく、王都に店を持てるかもしれねー!」

「あ、それはお断りします。」

「おお、そうか一緒にやってくれるか!…って、何で断んだよッ!!」


 何でって言われても…そもそも、その王都から追放されて、逃げる様にイサス(ココ)まで逃げてきているのに、再び王都へ戻った日には、直ぐに捕まり、今度こそ間違いなく処刑されてしまうだろう。

 それを考えると、その選択肢は『絶対に無い』のである。


「何ででも…です。」

「くそー、こいつなら絶対に売れるのによぅ…。」

「そ、そうですか…。」


 即答で断られた事で落ち込む隣のおじさん…でも、残ってるコーヒー牛乳を飲むと、再び顔が綻(ほころ)ぶを見ると、おじさんにとっては、かなり美味しい飲み物だったのだろう。

 そう考えると、少し悪い事をした様な気分になる。

 とは言え、こちらも命が掛かってるので、『はい、そうですか』とは言えないので我慢して貰おう。


「まぁ、アレです…気が向いたら、また作りますよ?」


 品質が悪い為、そこまで美味しいのは入れる事が出来ないが、それでも、気晴らしに楽しむくらいは出来るだろう。


「なん、だと…また、こいつを飲めると言うのかッ!?」

「えぇ…気が向いたら、ですが…。」


 こう言っておかないと、おじさんの反応が怖いんだよな…。


「絶対だぞ?絶対だからなッ!」

「は、はい…。」


 って、何でたかがコーヒー牛乳一杯の為に、重圧(プレッシャー)を受けなければいけないのだろう?

 しかも、隣の店とは言え、今日会ったばかりの知らないおじさんに…。


 予想以上に慌ただしい休憩になったが、気分転換にはなった。


「さて、何を売るか考えないとな…。」


 僕は改めて、売る物を考えるのだった…。


†


「いらっしゃいませ、こちらの商品ですね?こちらは銀貨一枚になります。」


 僕は、そう言うと代金と引換に、積んである商品の中から『マッチ箱』をお客さんに渡す。


「ありがとう、さっそく試してみるよ。」

「えぇ、感想お待ちしてます。

 あと、使い勝手が良かったら、他の人にも勧めてください。」

「おう、まかせとけ!」


 結局、露店で売る商品を何にするか決めかねていたのだが、隣のおじさんと雑談をしながら何が売れるか模索(もさく)した。

 その結果、たどり着いたのが百均ショップよろしく、ワンコインのお店だった。

 ちなみに、この世界での銀貨の価値は約千円、その為、少々(・・)、ボッタクリ感はあるのだが、それでもお客さんは喜んで買ってくれてるので、よしとしよう。


 なお、ターゲットとなるお客さんは、ファンタジーではおなじみの冒険者と呼ばれる人達がメインである。

 先程も言ったが、隣のおじさんに雑談がてら聞いた話ではあるが、この世界で火を起こす作業と言うのは、少々面倒で…火打ち石を使うか、魔法で火を起こす必要があるらしい。

 それならば…と、マッチを見せた所、『なんだこりゃー』と驚いていた。

 なお、魔力を使い発動する『魔導具』か?とも聞かれたが、魔導具ではなく単なる道具と説明したら、魔法を使えない人には便利な道具と言う事だったので、売れるか聞いた所、おじさんは『絶対に売れる』と太鼓判を押してくれた。

 そんなおじさんだが、まだ商品として決定してないにも関わらず、売ってくれと頼まれた。

 そこで、幾らが良いか聞いた所、銀貨一枚なら買うと言った為、この金額となったのだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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