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商業ギルドにて、露店を開く場所を確保し、いざその場所へ…と、席を立ったまでは良かったのだが、世の中、なかなか思い通りにはいかない様で…。
「あの、ちょっと待って下さい!」
と、ウサミさんから、ちょっと待ったコールを受ける事となった。
「え?どうしました?先程の書類に不備でもありましたか?」
ちゃんと言われた通り、必要事項を記入し契約書にサインをした。
それに、場所代のお金も渡したから問題はないはずだが…。
「あ、いえ、そちらは問題ありません。」
ウサミさんが『そちら』は…と、強調した。
だとすると、他で問題が発生した事になる。
とは言え、この街に来たばかりで、何も問題も起こしてないのに、何が問題なのだろう?
「えっと…何かありましたか?」
「じ、実は…ですね…。
昨日、お客様からお売り頂いた『黒胡椒』なんですが…。」
「く、黒胡椒ですか?」
え?昨日の胡椒に何か問題があったのだろうか?
確かに〖レプリカ〗で作り出した物だが、今の所、自分で使う分には問題ない。
その証拠に、鞄の中には使い掛けの胡椒の瓶が入っている。
もしかしたら、一定距離離れた事で、スキルが解除されたとか?
今まで一人で行動していた為、作り出した物が、どれだけ離れたら消えるなんて検証してないぞ…と、心が焦りだす。
だが、続く言葉は、まったくの別物だった…。
「あ!いえ、何か問題があった訳じゃないので心配しなくて良いですよ?
そうではなくてですね…モブ様は、昨日の黒コショウをまだお持ちですか?
もしよろしければ、そちらの方もお売り戴けたら…と…。」
「え?確かにまだ持っていますが…知っての通り、コレは、使い掛けですよ?」
「はい、それはこちらも承知しております。
ですが、先日のモブ様の黒コショウをお買い上げ頂いたお客様が、可能であれば、もう一本欲しいと激しく求められておりまして…。」
昨日の今日で、既に売れているのには驚きを隠せない。
そもそも、商業ギルドに売った黒胡椒の金額に利益を上乗せしたら更に金額は上がるのは当たり前の話。
それを追加で欲しいと言っている相手の事を考えると、それなりに地位とお金のある人なのだろう。
何にせよ、既に売ってしまった物は仕方がないにしろ、気が付かなかったとは言え、俺との距離でスキルが解除される可能性が出てきた事で、『はい、そうですか』と売る訳にはいかなくなっているのが現状である。
可能であれば、ある程度は実験をして、どうなるかの確かめたい所である。
「そ、そうなんですね…ですが、お売りしたい気持ちもありますが、残念ながらお売り出来ない事情がありまして…。」
下手をすれば、詐欺師として捕まってしまうかもしれない。
そしたら、あの王様達の性格を考えると、確実に殺しに来るだろう。
しかも、犯罪者ともなれば、僕を抹殺するだけの大義名分を与える事になる。
そうなれば、いくらイケメン君や河合さんが庇おうとしても、流石に許される事はない筈だ。
いや、仮に僕を許すとなった場合、彼等に相当な枷を強いるだろう。
つまり、当分の間、僕の目標は『目立たず無難に生きる事』…そして、『彼等が逃げ出した時の居場所を作る』なのだ。
その為には、まずは僕自身が殺されない様にする事。
また、犯罪者になったり目立ったりする訳にはいかないのだ。
「そうですか…。」
「えぇ、すいません…。」
「いえ、こちらも無理なお願いをしているのは分かっていますので、お気になさらないで下さい。
あ、ですが、もし気が変わる様な事がありましたら、商業ギルドにお売り頂けると助かります。」
「は、はい…その時は、よろしくお願いします。」
気が変わったら…か、正直、こちらとしては直ぐにでも売ってあげたい気持ちはある。
だが、僕から離れた事で消滅えてなくなった時が問題なのだ。
例え、こちらが意識して消さない限り、絶対に大丈夫だと思っていても…だ。
とりあえず、黒胡椒の件は置いといて、今は露店である。
黒胡椒を売った事で、お金には少しだけ余裕があるとは言え、このままお金が稼げなければ、直ぐに宿代すら払えなくなるのは目に見えている。
その為には、露店を開いて、何が売れるかの調査も必要なのだ。
あと、商品を用意する過程で、スキルをレベルアップする事が出来れば良いのだが…と、打算的な考えもある。
何はともあれ、僕は気持ちを切り替えて、露店の場所へと向かうのだった…。
†
「と、意気込んで来たのは良いけど…どうするよ、コレ?」
商業ギルドで契約した露店の場所へと来た僕の感想は、人がいない…だった。
賑やから表通り…メインストリートとは違い、ここは裏通りみたいで、表通りみたいな活気がない。
しかし、活気がないと言っても、それはあくまでも表通りと違うと言うだけで、決して、人がいない訳ではない。
ただ、想像していた以上に、人が少ないのである。
ただ、勘違いして欲しくないのは、裏通りと言っても、ゴミが散乱しているとかスラムになっていると言う事ではないので注意して欲しい。
むしろ、表通りの方が綺羅びやかに、人が流れて行っている…と言った方が、イメージし易いかもしれない。
そう言う意味では、何かの拍子に、こちらへ人が流れてきても、なんら不思議ではない…と言うのが、僕の感想だ。
「さて、どうした物か…。」
とりあえず、ぼ~っと立っていても意味がないので、商業ギルドで借りた露店の場所まで移動すると、床にレジャーシートを敷く。
コレは百均などで売られているレジャーシートを、僕のスキルで作り出した物であり、破れたとしても痛くも痒くもない物である。
いや、その言葉には語弊がある。
地面にそのまま座るのが嫌だと言うのと、商品をそのまま地べたに置くのに抵抗があるからと言う理由で敷いたレジャーシートだが、当然、その厚みは、かなり薄い。
その為、レジャーシートの下にある小石などの感触が、ダイレクトに伝わり、地味に痛い。
更に言うなら、低レベルのスキルの為、品質が下がっている所為で、所々、毛羽立っていて、それが肌に触れると、痒みを与えてくる。
つまり、破れないけど痛いし痒いのだ。
「う~ん、早く〖レプリカ〗のランクアップすると良いな…。」
と、せめて、ストレスなく使える程度まで早くレベルが上がれば良いのに…と、僕は溜息を付くのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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