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 目が覚めると、既に窓の外は夕方になっていた。

 まだお昼を少し過ぎた頃だったのはずだが、疲れが溜まっていたのだろう。

 結局、お昼も殆食べることなく寝入ってしまったようだ。


「しまった…後で色々、買い物に行こうと思ってたのに…。」


 正確には買い物ではなく街中を見て回るのが目的で、色々な物を見たりする事で〖レプリカ〗で作り出せる物を、増やしたいと思っていたのだ。

 〖レプリカ〗は、自分が欲しいと思った物を、スキルの力で作り出すと言う、極めて特殊なチートスキルなのだが、作り出す物に関しては、色々と制限が設けられている。


 今まで試した中で判明している事は、その物に対しての効果を知らなければいけないと言う事。

 つまり、ポーション屋で買ったポーション各種は、そのままでは〖レプリカ〗で複製する事が出来ないのだ。

 とは言っても、実際に使ってしまえば作り出す事も可能になる…と思うが、試してないので分からない。


 それに、仮に作り出せたとしても、コレに関しては一つ困った事がある。

 それは何か…〖レプリカ〗のスキルランクが低い事が原因ではあるが、僕が作り出した物の品質が著(いちじる)しく劣(おと)ると言う事だ。


 まぁ、普通にコンビニで売ってる『おにぎり』でさえ、スキルで作り出した物は不味いのだから、正直、スキルレベルが上がらないと、まともに使えるレベルではないのは間違いないだろう。

 とは言え、このスキルで作り出した物には、かなり便利なメリットがある。

 それは、任意でスキルを解除すれば、跡形(あとかた)もなく消す事が出来ると言う事。


 これは森の中で『おにぎり』を食べた時に気が付いたのだが、『おにぎり』の包装を剥(は)がした後、そのゴミを捨てようとした時に、包装だけを消す事が出来たのだ。

 流石に、人前でそんな事をする訳にはいかないが、周りにいたのは幸い狼達だけだったので周囲の目を気にする事なく実験出来たのは僥倖(ぎょうこう)だったと思う。


 で、ここからが本題なのだが、任意で消せると言う事は、非常にメリットがある。

 例えば、スキルで作り出した物であれば、ゴミの処分に困る事がなくなると言う事を意味する。

 他にも、武器なんかを創っておけば、他人に奪われたと時でも、消してしまえ逆に有利になる事もある。

 また、そう言う意味で言えば、道具なども使い終わった後は消してしまえば、持ち運ばなくても良い。

 しかも、消すものに関しては、個別で判断出来ると言うのが、なんとも素晴らしい。


 それ故に、このスキルで作り出す事が出来る物を増やす事が最優先事項だと思ったのだ。


「それなのに…寝ちゃったんだよな…。」


 僕はそう呟くと、頭をボリボリと掻(か)く。

 別に頭が痒(かゆ)い訳ではないのだが、つい癖(くせ)で頭を掻いてしまうのだ。


「まぁ、今日ぐらいはいっかな…。

 確かに急いで出ていかないとダメとは言え、休憩も大事だし…何より、急いでこの国から出ていくにしても、準備は大事だ。

 それに…もう夕方だから一日くらい無駄にしても大丈夫だろ。」


 と、何ともお気楽な発言をするが、コレにはちょっとした理由がある。

 それは、寝る前にした商業ギルドに登録し、身分証となるギルドカードを作成した事だ。

 そう…ギルドカードに記載された名前は『モブ』…『毛利(もうり) 政信(まさのぶ)』ではないのだ。

 つまり、今の僕は文字通り『モブ』であり、別人になった事を意味していた。

 なので、お城から直ぐに追手が出たとしても、今の僕なら、直ぐには見付からないはずだからだ。


「さてと…今の時間が分からないけど、お腹も空いてきた事だし、一度、食堂へ行ってみるかな…。」


 食事は六の鐘から九の鐘の間と言っていたし…それが何時を指すのかは分からないが、夕日で染まる程の時間帯なのだから、少し早めの夕食には丁度良いのではないだろうか?

 まぁ、仮に早かったとしても、待てば良いだけの話だしね。

 そう思った僕は、食堂を目指し、階段を降りていく…その後、後悔する事になるとは知らずに…。


†


「うわ~、すごい人数だな…あと、五月蝿(うるさ)ッ!」


 一階の食堂へ来て最初の感想がコレと言うのは如何(いかが)な物だ?とは思うが、それは仕方がない事だろう。

 何せ、まだ夕方だと言うのに、大の大人が『どんちゃん騒ぎ』をしていたのだ。


「あら、お客さん、どうしたんだい?」

「あ、女将さん、いえ、そろそろ御飯の時間かな?と…。」

「あぁ~、でも、まだ五の鐘が鳴ったばかりだから、暫く待たないとご飯までには時間が掛かるわよ?」

「あ、そうなんですね…疲れて寝てたから時間が分かってなかったです。

 まぁ、忙しそうなので、また後で来ますね。」


 正直、あまり五月蝿いのは得意じゃないし…。


「そうかい?でも、今日は冒険者が多いからね…六の鐘が鳴っても、今とそんなに変わらないと思うわよ?」

「そ、そうなんですか?」


 このまま待っても一緒なのか…どうしよう?外に食べに行くとか?

 でも、もうお金払ってるしな…。


「そうだ!賑やかなのは苦手みたいだし、何だったらお客さんの部屋に食事を届けてあげようかい?」

 「え?良いんですか?」


 この騒音を賑やか…で済ますのはどうかと思うが、それでも食事を部屋に運んでくれるのであれば静かに食べる事が出来そうだ。


「もちろんさね、まぁ、その代わり、少し遅くなってしまうかもしれないけどね。」


 女将さんはそう言うと、ウインクを決める。

 この世界にもウインクをする文化がある様だ。

 うん、これでふくよかな女性でなければ、惚れていたかもしれない。


「んん?お客さん、今、何か失礼な事考えてません?」

「ナンノコトデショウ?」

「何でカタコトなのかは、忙しいから問わないであげるさね。

 でもね、女の勘をバカにするんじゃないよ?」

「は、はい!」

「よろしい!」


 女将さんは僕の返事に満足したのか、僕の背中を『バシバシ』叩くと、作業に戻っていく。

 う~ん、どうやら考えている事が顔に出てしまった様だ。

 ってか、そんなに顔に出やすいのかな?注意しよう。


 そして、部屋に戻ろうとした時である。


「よう、にいちゃん、元気かー?」


 そう言って、僕の肩を抱いてきたのは見知らぬオッサン…もちろん、初対面である。

 腰に剣を差している所を見ると、このオッサンは冒険者なのだろう。

 とは言え、初対面の冒険者に絡まれる謂(いわ)れはないのだが…。


「はぁ、一応、元気ですが…。」


 現在進行系で、元気が減ってますけど…ね、と心の中で付け加える。


「何だ、その態度は!この俺が声掛けてやってるのに、俺の酒が飲めないって言うのかッ!」


 はい、まだ未成年なので飲めません。

 ってか、元気か聞かれただけで、飲めなんて誘われてないんですが?

 えぇ、絡み酒ですか、そうですか…と、直ぐに部屋に戻らなかったのを後悔する。


 そして、このまま関わるのは危険だと感じ、離れようと思ったその時、事件が起こった。


「おいおい、オッサン、他の客に迷惑だろうが…。」


 そう言って、止めに入ってくれたのはガタイの良い、少し強面(こわおもて)のお兄さんだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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