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「ランスさん、入場料の支払いに来ました。」
「おや?もう支払いに来たのかい?」
「えぇ、何とか商業ギルドに登録出来ました。
あと、少しばかり、お金を融通して貰う事も…。」
「なるほど、商業ギルドでお金を借りたのか。
だが、よく金を貸してくれたな…。」
「えぇ、まぁ…これも『おにぎり』のお陰ですかね…ははは…。」
もちろん、僕は商業ギルドからお金を借りてなどいない。
お金を融通して貰ったと言ったが、本当は胡椒の小瓶を売っただけだ。
ただ、それを馬鹿正直に話す訳にはいかない。
そもそも、街へ入る際に、荷物検査をして碌な物を持っていなかったのは確認されているし、何より、その検査した人物こそがランスさんなのだから、勘違いさせておく方が良いとの判断である。
それに、『おにぎり』のお陰で…と言うのも、嘘ではない。
『おにぎり』をランスさんに食べさせたお陰で、街に入れたし商業ギルドに登録出来たのだから、そこは間違ってはいない筈だ。
「えっと…入場料は銀貨三枚でしたっけ?」
ランスさんに聞いた金額は、確か銀貨三枚だった…と思う。
「そう、その通り!よく覚えてたな。」
「えぇ、もちろん大事な事ですから!」
はい、嘘です!本当は、うろ覚えです。
まぁ、財布代わりにしている小袋の中には、まだ銀貨が二十枚以上は入っているので、もし仮に違っていたとしても、銀貨の一枚や二枚のズレであれば、問題なかったりする。
とは言っても、銀貨数枚だったら大丈夫だが、これが十数枚だったら、少し焦ったかもしれない。
まぁ、何にせよ、入場料が宿代(一泊分)と一緒と言うのは…正直、入場料が高いのか安いのか分からない。
でもまぁ、街に入るだけで宿屋一泊分が必要と考えるとアレだが、遊園地とかの入場料を考えると数千円は確実に飛ぶので、安いのかもしれない…と思った。
「では、これで…。」
僕は財布代わりの袋を取り出すと、中から銀貨を四枚拾い上げ、ランスさんに渡す。
「おう、確かに受け取った…ちょっと待ってな、すぐに証文を取ってくるから。」
ちなみに、銀貨三枚借りたのに、銀貨を四枚渡したのには意味がある。
とは言っても、別に大した意味はなく、借金の証文を作る際の羊皮紙代と手数料である。
その為、銀貨が四枚必要だったのだ。
「はい、よろしくお願いします。」
この証文と言うのは、入場料を借りた時に書かされた、借金の証文の事。
コレ自体には、何の魔法も掛かっていない只の証文ではあるが、出る所に出れば、極めて有効な証文と成る為、返済した場合、速やかに処分しなければならない。
ちなみに、今回の証文は、羊皮紙を使った只の証文だが、他には魔法を込めて作られた証文なんて物もあり、それらを用いて契約された物に関しては、最悪、契約不履行の場合、命に関わる事もあるらしい。
「すまん、待たせたか?」
「いえ、待っていませんよ。」
「そうか?そんじゃ、これが証文だ。
間違いがないか確認したら返してくれ、眼の前で破棄するから。」
そう言われて、自分の名前と金額、その他を確認した。
もし、コレが他人の証文だった場合、下手をすると僕が奴隷落ちする事になるので、本気で見落としは厳禁だ。
「大丈夫、間違いありません。」
「それじゃ、破棄するぞ。」
内容を確認した僕は、間違いがない事を伝え、証文をランスさんに渡す。
それを受け取ったランスさんは、短剣を取り出すと羊皮紙をザクザクと切り裂いていく。
そして…。
「さて、コレで契約は無事に破棄された訳だが…どうする?
このゴミは自分で処分するか?それとも、こちらで処分しておこうか?」
「あ~、そうですね、こちらで処分します。」
契約する時に驚いた事だが、この世界には魔法がある。
まぁ、ポーション屋でも思った事だが、魔法があると言う事は、この破り捨てた契約書を、ハリーなポッターで同級生の優秀な魔女っ子が、魔法で眼鏡を直した様に、復元する事が出来るかもしれないのだ…知らんけど。
そうならない為にも、確実に自分の手で処分した方が安全だと考えたのだ。
「そうか、なら、こいつは渡そう。」
ランスさんはそう言うと、破った元・証文を渡してくれた。
「では、改めて…ようこそ、イサスの街へ。」
ランスさんはそう言うと、笑顔を見せてくれたのだった…。
†
宿屋に戻ってきた僕は、直ぐに自分の部屋へと戻った。
そして、ベッドの上に倒れ込む。
「なんだか…このベッド、ちょっと臭いな…。」
窓も締め切っていたし、シーツも毎日洗濯して綺麗にしている訳じゃないのだろう。
流石に、他の人が使ったままとは考えられないが、それでもシーツから少し臭い匂いがする。
日本であれば、洗濯機が勝手に洗ってくれるし、洗剤のお陰で匂いも取れるのだが、こちらの世界では綺麗にするのも一苦労なのだろう。
いや、もしかしたらアニメなどでよく見る、洗浄魔法とか浄化魔法などで、綺麗にする事が出来るかもしれないが…。
そんな事を考えながらベッドの上でゴロゴロしていると、城から追放されてからこれまでの疲れが一気に押し寄せてきたのか、気が付くと僕はいつの間にか眠っていたのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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