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「美味しいです!」
その言葉をウサミさんの口から聞いた僕は、『おにぎり』は売れる物だと認識した。
そして、それと同時に、この世界の料理に対する評価が低いのでは?とも思った。
そりゃそうだ、何せ〖レプリカ〗のランクが上がり、若干、マシになったとは言え、それでも僕にしてみればまだまだ不味い部類だ。
それなのに、美味しいと言われると、何とも言えない感覚に陥る。
「そ、それでですね…これらを売りたいと思うのですが、先程も言いましたが、登録する為のお金がないので、どうしようかと…。」
「そう言う事でしたら順番が前後しますが、この場で売れるものがあれば、その代金から登録料を引かせてもらい、差額をお返しする事が出来ますが…何か高く売れる物などはお持ちですか?」
「えっと…この『おにぎり』ではダメですよね?」
「えぇ、確かに美味しかったですが、これだけでは流石に足りませんね…百個程あれば、可能だったかもしれませんが、流石に、その袋の中にはありませんよね?」
「え、えぇ…どう見ても無理ですね…。」
正直な話、この中から『おにぎり』が五個出てきただけでも凄いと思う。
まぁ、スキルで作り出しているのだから問題はないのだが、不審に思うだろう。
なので、仮に出せたとしても、小さい物があと一つか二つが限界である。
「えっと…あと何かあるかな…。」
僕はそう言って、袋の中を漁るフリをしながら、考える。
がんばれ僕、お前なら何か思い付くはずだ!
そして、僕は思い付く…異世界ファンタジーの定番中の定番のアレを…。
「あ、コレなんてどうでしょう?」
そう言って僕が袋から取り出したのは、ドラッグストアやスーパーセンターなどで売られてる調味料の一つ、『黒胡椒』である。
しかも、粒を挽く為のミル付きのブラックペッパーの小瓶である。
「こ、これは…もしかして、クロコショウ…ですよね?」
「え、えぇ…あまり良い品質ではありませんが…。」
袋から取り出した瓶の中身である黒胡椒の粒は不揃いで、中には欠けているのも多々見える。
欠けてる物に関しては、どうせミルで砕いて使うのだから分からないだろうが、それなりに風味は飛んでしまうだろう。
まぁ、それでも挽きたてを使うのであれば、香りは段違いだと思う。
「そ、そうですね…この入れ物はガラスの様ですし、それなりの価値があると思いますが…。
それと、この蓋?に付いてる物はなんですか?」
「え?蓋に付いてる物とは?」
「はい、この変な形をした物なんですが…。」
ウサミさんの指差す所にあるのは蓋である…ただし普通の蓋ではなく、ミルのだが…。
「あ…もしかしてミルの事ですか?」
「ミル…ですか?すいません、初めて聞く物なのですが…。」
「えっと…簡単に言うと、このブラックペッパーを砕いて粉末にする機械…みたいな?
流石に挽いた際の粗さまでは変えれませんが、これはこのままブラックペッパーを挽く事が出来るんですよ。」
「な、なんですって!ブラックペッパーって、使うためには専用の機械がないと大変なんですよ!?」
「そ、そうなんですか?」
今日日、粗さを気にしないのなら百均でもミルは売られている。
いや、粗さを変えるタイプでも、数百円で買える時代だ。
それほど驚く事では無いと思うのだが…と、ここが異世界だった事を思い出す。
所変われば品変わる、と言うヤツだ…知らんけど。
「えっと…試してみます?」
僕はそう言うと、彼女に説明する様に、小瓶の封を開けて蓋を取る。
「こうやって、この部分を持って捻ってあげれば…。」
『ガリッ!ガリガリガリ…。』
ウサミさんに手を出して貰い、その上にブラックペッパーを挽いていく。
挽いた物は少し粗めだが、それでも少しずつ挽けている。
「ま、待ってください、こんな貴重な物をッ!?」
と、ウサミさんは慌てだす。
「え?そうなんですか?」
う~ん、貴重と言われても、こちらの感覚では五百円も掛からない物…ましてや、自分のスキルで作り出した物なので元手は無料の為、正直、貴重と言われてもピンと来ない。
「そうなんです!…とは言え、このミルと言うのは、凄く便利な物ですね…。
この黒コショウといい、この入れ物といい…売っていただけるなら、金貨一枚以上になるかと…。」
「え?それって…登録料と、街への入場料を払ってもお釣り来ます…よね?」
「えぇ、もちろんです!それで、どうなさいますか?」
どうするかだって?そんなの決まっている。
「もちろん、お願いします!」
まさか、ブラックペッパーの小瓶が一つでそんな金額になるとは驚きである。
なお、使い掛けを売るのはアレなので、袋の中で新しいのを作り出し、ウサミさんには新品を売る事にしたら、『もう一本あるのですか!?』と驚いていた。
なお、入場料の支払いがあるので全部銀貨でお願いした所、銀貨百二十枚と言われたので、枚数の多さに焦った。
なお、商業ギルドへの登録料が銀貨十枚、最低ランクの商人の一年間の税金が銀貨五十枚…で、露天を開く許可証が発行されるとの事だったので、そちらもお願いした。
それでも、手元には銀貨六十枚残っている。
地味にずっしりと重く、袋に入れて持ち運ぶには何かと不便な気がしたのは内緒だ。
「あの…失礼ですが、口座をお作りになりませんか?」
「口座…ですか?」
「はい、やはり大金を持ち歩くとなると、良からぬことを企む者に狙われやすくなります。
それらを回避する為に、手数料は必要となりますが、商業ギルドにお金を預け、必要な時だけ引き出す事で、危険を回避するシステムがあるのです。
なお、商業ギルドであれば他の街の商業ギルドでも引き出す事は可能ですし、何でしたら他の国でも可能です。」
「そ、そうなんですね…では、お願いします。」
詳しく話を聞くと、どうやら銀行と同じシステムの様だ。
まぁ、確かに普段から大金を持ち歩かないので有り難いのだが、口座を作るのに必要な経費として更に銀貨を一枚要求され、ちょっと気分が凹んだ。
とは言え、これからお金を稼いで行く訳だが、大金を持ち運ぶのはやはり怖い…なので、お試しで銀貨を十枚だけ預ける事にした。
「では、こちらに血を一滴お願いします。」
ウサミさんはそう言うと、一枚のカードと針を一本渡してくる。
「…マ、マジですか?」
え~、自分で針を刺せと?普通に怖いんですが…。
「あ~、確かにご自分で刺すとなると怖いですよね…冒険者の方でしたら、平気で刺す人多いですけど…。
何でしたら、私が刺しましょうか?すぐ済みますよ?」
どうしよう?情けないけど、お願いしちゃおうかな…。
「あははは…すいません、お願いします。」
「分かりました、では、こちらに手を出してください。」
「は、はい…。」
先端恐怖症ではないが、自分の指に針を刺されるのを見るのは、何気に怖い。
その為、つい目線をそらしてしまう。
そんな一瞬の隙を付くかの如く、指先にチクリと一瞬だけ痛みが走る。
「はい、これで全ての手続が終了しました。
なお、こちらがお客様の口座カードになります。
再発行は可能ですが、それなりの金額が必要になりますので、なくさない様に注意してください。」
そう言ったウワミさんは、針を刺すのに怯えた僕を、まるで小さい子供を見ているかの様な笑顔でみていたのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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