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 猫を思わせる獣人のお姉さんに案内されて、受付とやってきた僕…正直、その後姿に興奮が収まらない。

 とは言っても、エッチな意味ではなく、あのモフモフに埋もれて癒やされたいと思ってるだけある。

 これに関しては、僕が変な性癖じゃないって事は、同じモフラーであれば気持ちは分かって貰えると信じたい。


 なお、その受付には兎系の獣人の子供?…が座っていた。

 まぁ、席を挟んで反対側…つまり、職員側に座っているので職員には違いないだろうけど、こんな子供が職員なのだろうか?


「ウサミちゃん、こちらのお客様が相談したい事があるらしいの、今、対応出来るかしら?」

「あ、ミィさん、今ですか?もちろん大丈夫ですよ。」

「なら、お願いするわね。

 では、お客様、こちらの方で相談なさってください。」


 異世界に来てゴミ扱い同然で追い出された僕に対し、お客様…とは少し照れる。

 ここでも丁寧な対応をされるのは、元の世界でも経験した事がない。

 まぁ、今までも、これからもモブな僕にとっては場違いな感じである。


「あ、ありがとうございます。」


 結局、ここまで案内してくれたにも関わらず、僕は気の利いた台詞も出ず、お礼を言うだけしか出来なかった。

 とは言え、そんな事は、これからする相談事に比べたら些細な事で…僕は気合を入れ直すと、用意されている椅子に座り、ウサミと呼ばれた少女へ視線を向けるのだった…。


†


「本日、担当させていただくウサミと申します。

 先程、ミィから相談があると聞きましたが、どの様な要件で御座いますか?」

「え、えっと…なんて言ったら良いのかな…。」


 うさ耳少女は僕が椅子に座ったのを確認すると、先程とは打って変わって、大人びた対応を始める。

 そのギャップに、少し戸惑ってしまうが、やはり幼くてもギルド職員と言う事なのだろうか?


「フフ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?別に取って食べたりしませんから。

 それと…こう見えても、私は二十二歳…先程のミィさんよりも二つも上のお姉さんですよ。」

「……えぇぇぇ?そうなんですかッ!?」

「はい、みなさん、私の姿を見て子供と思う人が多いみたいですが…。

 自分でも、こんな姿では、子供と思われるのは仕方がないかな~?って思うんですけどね…。」


 そう言うと、ウサミさんは少し離れているミィさんを見つめ、自分の胸に当てた手を見つめた。


「あの、その…すいませんでした。」

「いえいえ、もう慣れっこですから、気にしないでください。」

「そ、それでも、すいませんでした!」


 ウサミさんは何でも無い事の様に言うが、それでも少し悲しそうな表情を一瞬だけ見せたので、本当は気にしているのだと思う。

 ならば、こちらもそれ相応の態度で応対しなければいけないと思う。


 なお、ウサミさんが自分よりも年上と分かったので、ちゃん付けはやめた。


「クスッ…いえ、本当に大丈夫ですから。

 それでは、改めまして…ご相談したい事とは、どの様なご要件でしょうか?」

「あ、はい…実は、ですね…。」


 僕はウサミさんに、お金が小銭しか無い事、街の中に入るのにお金を借りた事…そして、ランスさんが売れるかも?と言っていた『おにぎり』について話をする。

 そして…もしも、売れるのであれば、商業ギルドに登録して、商人として活動したいと言う事も…。


「そうですか…ですが、そう言う話であれば、ここではなく奥の部屋で話をされた方が良いかもしれませんね。」


 彼女はそう言うと、受付ではなく個室…奥の部屋で相談した方が良いと勧めてくる。

 まぁ、確かに、この手の商売には企業秘密と言う物があり、秘密にする事が多くあるものだ。


 そして、奥の部屋へ移動すると、僕達は更に話を続け…。


「なるほど…それで、これがその『おにぎり』なんですね。」

「えぇ…もし本当に売れるなら、売りたいと考えています。」


 ランスさんの言う通り、『おにぎり』が売れるのならば…と、新たに『おにぎり』を追加してサンプルとして提出している。

 ちなみに、ラインナップは塩サバ、鮭、昆布、ツナマヨ…そして、イクラである。

 本当は、梅干しもあるのだが、異世界で受け入れられるか疑問だったので出してはいない。


「もしよければ、食べてみますか?」

「え?よろしいのですか?」

「はい、実際に食べてみないと判断出来ないと思いますし…。」

「…確かに、そうですね…では、どれか一つを…。」


 なにぶん、彼女にしてみれば初めての物だったみたいで、どれが良いのか分からないみたいだ。

 って、今更ではあるが、この世界に召喚された時に、どう言う原理なのか言葉は通じているのだが、文字についてはどうなんだろうか?

 もしかしたら、読めないのではないだろうか?


「あ、あの…『おにぎり』に書かれてる文字って、他国の文字なんですが読めますか?」


 流石に、異世界の文字と言うのは、トラブルの元だと思うので、他国の文字と誤魔化しておく。


「あ、これ文字だったんですね、てっきり模様か何かかと思ってました。

 ちなみに、なんて書いてあるのですか?」

「えっと…そうですね、コレが塩サバで…。」


 細かな説明は省くとして、具材の名前だけを読み上げていく。

 ただし、どれも馴染みがない言葉なのか、少し困り顔だ。

 まぁ、言葉が通じていたから気が付かなかったが、異世界なのだから、同じ名前の物があると考える方が間違っているのかもしれない。


「う~ん…どれが良いのでしょう?もしよろしければ、選んでもらっても良いですか?」

「えぇ、それは構いませんが…。」


 結局、どれが良いのか分からなかったみたいだ。

 何はともあれ、彼女に合いそうなのは…これかな?


「えっと…イクラの『おにぎり』で良いですか?」

「えぇ、それで構いません…ですが、どの様にして食べれば良いのでしょう?」

「あ、気が付かなくてすいません…。

 えっと、ここに食べ方が書いているのですが…。」


 と、他の『おにぎり』を持つと、包装を剥(は)がしていく。

 ウサミさんは、それを見ながら真似をして、見事に完成させた。

 なお、海苔が破れ、欠片が包装に残っているのはご愛嬌…あるあるだった。


「あとは、こう…パクリと…。」

「こう…ですね。」


『パクッ…パリッ!』


「もぐもぐ…もぐもぐ…あぁん!このプチプチと弾ける食感、そしてあふれる塩気。

 そして、このパリパリとした黒い物。

 口の中に広がる磯の香り…それらが交わるハーモニー…こんなの食べた事がありません!」

「えっと、美味しい…ですか?」

「はい、美味しいです!」


 〖レプリカ〗のランクが低い所為で、低品質の物しか出来ない筈なのに、何とも高評価である。

 ランスさんの反応から、もしや…と思ったが、もしかしたら、この世界の食文化は、低いのかもしれない。

 それならば…この力を使えば、何とかこの世界で生きていく事が出来るのでは無いか…と、思ったのだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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