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自分で自分の指に針を刺すのは怖いのでウサミさんに頼んだのだが、彼女は慣れているのか、自然な動きで指先を針で刺す。
チクリッと痛みを感じた後、指先からは、血が滲み出しプクリと膨らんだ。
僕はウサミさんに言われるまま、商業ギルドのカードに血を付けると、当然の様にカードには血の跡が付く。
だが、次の瞬間、その血がカードへと吸い込まれていくと、直ぐに血の跡すら無い元のカードへと戻った。
その後、ウサミさんは必要事項を記入した紙とカードを、何かの機械らしき物にセットして、少し待つと、カードだけを持って戻ってきた。
「はい、これで全ての手続が終了しました。
なお、こちらがお客様の口座カードになります。
再発行は可能ですが、それなりの金額が必要になりますので、なくさない様に注意してください。」
そう言ったウサミさんからカードを受け取ると商業ギルドへの登録が完了した。
なお、ウサミさんは笑顔なのは先程までと同じだが、まるで小さい子を見て、微笑ましく笑うお姉さんの様だった。
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「で、コレで登録は済んだんだけど、露店をする場所を決めないとダメなんだよな…。
あ、いや、その前に泊まる場所が先か?流石に、野宿は危ないよな…。」
街に入ってから、メイン通りを歩いてきたが、そんなに長い距離は歩いていないが、路地裏からこちらの様子を伺う怪しい感じの人は何人か見掛けた。
まぁ、怪しいとは言っても、犯罪者と言う意味ではなく、浮浪者…と言う意味ではあるが…。
ただ、人をいきなり異世界に召喚しただけではなく、殺そうとしたり追放する様な世界である。
ならば、強盗や殺人なんてのも、平気であるのではないだろうか?
だとしたら、いくら街の中とは言え、野宿はヤバい。
それこそ、お腹の空かせた獣の前に、餌を放り込む様なもの…格好の餌食。
そうならない為にも、やはり宿は必須だ。
「問題は、宿屋が何処か知らないって事か…。」
まぁ、宿屋に関しては、聞けば教えてもらえるだろうが、良い宿屋とは限らない訳で…。
「宿屋がどうかしましたか?」
「うひゃ~ッ!って、ミィさんッ!?」
急に後ろから声を掛けられて驚いたが、そこには先程、案内してくれたミィさんが立っていた。
ってか、周りを見ていなかったとは言え、後ろに誰か居る気配は無かったんだけど…。
その所為で、後ろからの声に、予想以上に変な声で驚いてしまった。
「ごめんなささい、驚かせちゃいました?」
「あ、いえ…こちらこそ、ちょっと考え事をしてたものですから…。」
「あ、お客様は先程の…どうです?相談事は解決しましたか?」
「えぇ、お陰様で、無事になんとか…。」
そう言って、僕はミィさんにカードを見せる。
「商業ギルドに登録されたんですね、おめでとうございます!
あ、でもFランクなんですね、もう露店をする場所とかはもう決められたのですか?」
「いえ、まだ…登録が済んだばかりなんですが、露店をする場所を探すのもそうなんですが、宿屋も探さないといけなくて…そうだ、ミィさん、良い宿屋を知ってたりしませんか?」
「良い宿屋…ですか?」
「はい、出来れば安くて治安の良い宿屋があると助かるんですけど…。」
「それでしたら、街の入口に『宿り木』と言う宿屋が良いと思いますよ。
冒険者の方もよく利用されているので賑やかなのが苦手な人にはあわないかもしれませんが…。
あと、私は食べた事はないのですが、料理も美味しいらしいですよ?」
「へ~、それは良い事を聞きました、さっそく行ってみます。」
どの道、街の入口には借りたお金を返しに行く用事もあるので、好都合だったりする。
「ミィさん、ありがとうございます。」
「いえいえ、お客様も気を付けて行ってくださいね。」
「はい!あ、それと僕の事は、お客様じゃなく『モブ』で良いですよ。」
あのイケメン君みたいな勇者と違い、僕なんて巻き込まれし者…脇役で十分だ。
それに、『毛利 政信』の名前の最初と最後を取って『モブ』。
昔から、このあだ名で呼ばれてたってのもあるが、もしかしたらお城からの追手が掛かるかもしれない身なので、偽名の方が都合が何かと都合が良いかもしれないと思ったからだ。
「モブさんですね、分かりました。
これから、よろしくお願いしますね、モブさん♪」
どうやらモブの意味を分からなかったのだろう…まぁ、外国でありそうな名前が多い世界みたいなので、さもありなんと言った所か?
なんにせよ、堅苦しい呼び方ではなく、名前で良いと言ったからか、ミィさんは嬉しそうに返事をする。
こうして、僕は文字通り『モブ』として、この世界で生きていく事になったのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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