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「や、やっと着いた…。」
アレから、森を抜けるまでの間、何故か狼達と一緒に移動をする事となった。
護衛のつもりか餌目的かは、結局、わからずじまいだが、夜になるとくっついて寝る事で、防寒対策にもなったし、地味にモフモフだった事で、モフモフを堪能したりと、有意義な時間を過ごせたと思う。
それと少しばかり、良い事もあった…何と、狼達に餌をあげまくったからか、単純に使用回数なのかは分からないが、〖レプリカ〗のスキルレベルが一つ上がり『F』だったランクが『E』に上がっていたのだった。
狼達と仲良くなった僕は、気を良くしたってのもあるが、スキルで出来る事に関しては要検証ではあるが、移動中、何かとスキルを使っていた。
食事にしろ飲み物にしろ、その他諸々をバカの一つ覚えよろしく、全部、スキルで解決していたのだ。
その結果、森を抜ける少し前、急に頭の中にスキルアップを告げる声が聞こえたのだ。
ちなみに、狼達は森からは離れようとしない為、最後のお別れとして、ドッグフードの箱を一匹に付き一箱用意してあげたら、さっさと森の中へと戻っていったのには、少しばかり悲しかったのは内緒である。
そんな事があってから数日、幸いな事に何にも出会う事もなかった。
いや、他の人にも会わなかったから、むしろ悪かったのだろうか…。
それでも川に沿って歩いていると、遠くの方に街が見えた。
そして、やっとの思いで、僕は街へと辿り着く事が出来たのだった…。
†
「次の方~!」
「はい、身分証を見せて!」
街の入口で、門番らしき者が入場者の身分証を確認している。
それ自体は、異世界あるあるだから文句はないのだが、ここで問題が発生…。
お城から追い出された僕には、身分証が用意されていなかったのだ。
そして、惨めな思いをして手に入れたお金に関しても殆ど残っていない。
何故なら、お城のある街を出る時に、最低限の物を買ってしまったから…。
「次の方~!」
「は、はい…。」
どうして良いか分からずにいたのだが、とうとう何もしないまま僕の番がやってくる。
「はい、それじゃ身分証を見せて。」
「そ、それが…身分証を持ってないんですが…。」
「何ッ?身分証がないだって?」
「えぇ…気が付たら、川下の森にいて、やっとの思いで辿り着いたものの、何も身分を証明する物を持っていないんです。
持ち物も、これだけしか…。」
僕はそう言うと、質の悪い鞄を開き、中の物を見せる。
中身が空っぽだと不審に思われるだろうから…と、『コンビニおにぎり』が三個と偽物臭のする『魔法の水筒』、それから賤貨が数枚(小銭)しか入っていない袋を門番に見せる。
「う~ん…特に怪しい物は無い様だが、入場料が無いのは、不味いな…。
かと言って、これだけしか無いのであれば、追い返せば死んでしまうだろうし…。」
まぁ、腰にナイフを差しているとは言え、仲良くなった狼達は例外として、他のものに襲われたら、ひとたまりもないだろう。
それが分かっているからか、門番が悩んでのだろう。
「おーい、ランス!こいつを待機所に連れて行って、相談に乗ってやってくれ!」
「了解です!」
門番さんに呼ばれ、ランスと呼ばれた青年が僕を待機所とやらに連れて行く。
まぁ、待機所と言っても、ちょっと休憩が出来る程度の大きさの部屋で、テーブルと椅子が三脚あるだけのシンプルな部屋だった。
ちなみに、語弊があると悪いので言うが、先程の説明は、あくまでも家具の話で、テーブルの上にはコップや水差しが置かれている。
「それで?ロッドさんに相談に乗れって言われたんだけど、どうしたんだ?」
ランスさんに相談に乗れと言った人物…つまり、先程の門番さんは、『ロッド』と言う名前なのだろう。
「それがですね…カクカクシカジカ、マルマルウマウマでして…。」
先程、門番さんに説明した事を少しだけ細かく説明する。
ただし、国に召喚された事は伏せているし、自分がどうして川に沿って来たかも濁している。
「ふむ、見慣れない服装を見ると、確かにこのあたりの者ではない様だ。
何故、そんな場所にいたのかは分からんが…。
それに、ニホンなんて国は街は聞いた事もないし、ましてウサシなんて街も聞いたこと無いな…。
かといって、君が嘘を言ってる様にも見えない、どうしたものか…。」
「何とかなりませんよね…。」
「そうだな…君がそれなりに売れる物でも持っていれば、それを売れば何とかなるんだが…。」
「と言われても、持ち物は『おにぎり』と『魔法の水筒』しかありませんから…。」
一応、〖レプリカ〗のスキルレベルが一つ上がったみたいだったので、『おにぎり』と『魔法の水筒』は作り直している。
その為、最初の頃に比べたらだが、気休め程度には良いものになっているはずだ。
しかし、こんな物ではまともな金になるとは思えない。
それに、日本のお金は使えないのはロッドさんに確認済みの為、除外している。
『グゥ~~~。』
大きな音がなる…しかも、恥ずかしい事に、僕のお腹の音である。
「す、すいません…朝ご飯、まともに食べてなくて…。」
いや、食べるのは食べたんだよ?
スキルレベルが上がったのを確かめる為に、『おにぎり』を一つ…若干、不味さがマシになった気がするが、それでも不味い物は不味い。
その為、何とかその一つだけは我慢して食べたが、それ以上、食べる気にならず、そのままこの街へと来てしまったのだ。
「あ~、いや、それは気にしなくて良い。
この…食料?も、これだけしか無いんだろ?」
「はい…持ち物は、コレだけですね…。」
〖レプリカ〗を使えば、増やす事は可能だが、あの不味さでは売れないだろうな…。
「あぁ、ごめん…お腹空いてるなら、俺を気にせず食べていいぞ?」
「そ、そうですか?では、一つだけ…。」
僕はそう言うと、三つの中の一つ、その中でも一番好きな塩サバの『おにぎり』に封を開けて食べる。
「ん?それはもしかして…海の魚なのかい?」
あまり美味しくない…いや、正直、不味い『おにぎり』ではあるが、齧り付いた事で中身の具が見えたのだろう。
齧られた『おにぎり』を見て、ランスさんが訪ねてくる。
「えぇ、そうですけど…何か?」
「あ、いや…実は、俺は港町の出身で…海の魚が懐かしく思ってね。」
「そうなんですね…でも、よく海の魚って分かりましたね。」
「あぁ、それは匂いでね。」
「す、凄いですね、匂いで分かるなんて…。
あ、そんなに懐かしいなら、食べかけで良ければ食べますか?
あまり美味しい物ではないと思いますが…。」
ごめん、嘘です…美味しくないと言うより不味いです。
「い、良いのかい?大事な食料なんだろ?」
「えぇ…ですが、どうぞ。」
そっと食べかけの『おにぎり』をランスさんの前に差し出すのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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