第8話 それぞれの余韻 ─ Side・レナ
「うんうん、青春だねぇ~」
「うぅ、恥ずかしい……」
学校終わりに寄ったダンスレッスンの休憩中。
リリアリのメンバー全員で囲んで話し合っていたのは、私が悩んでいる迫田くんとの関係についてだった。
どうやらアカリがバラしたみたいで、今日はずっとみんなに微笑ましい顔を向けられている。
「まあ、高校生ならそういう悩みの一つはあるでしょ」
「ルカさんにもあったんですか?」
「いや、私は興味なかった」
「焦れったいなぁ~。アタシならガッツリ話しかけちゃうのに」
「私はユイみたいにコミュ力ないもん……」
ルカさんやユイは、サバサバした性格だから、確かに私みたいな悩みを抱えるイメージはない。
そもそも、リリアリって個性的なメンバーばかりだし……。
無個性の塊みたいな私の悩みは、共感してもらえる気がしなかった。
「ふふっ、わたしも憧れだけで終わっちゃったなぁ」
「サクラコさんにもそんな憧れが……」
「サクラコさんって、アタシ的には恋する乙女って感じだったのに!?」
「それは、みんなに恋してるからだよ~」
「ノーサンキュー」
「ルカちゃん冷たいっ!」
サクラコさんもこう見えて、想いはきっちり伝えられるタイプだろうし……。
やっぱり、私が意気地無しなだけなんだろうなぁ。
「でも、まさかレナちゃんが一番最初に恋する乙女になるなんてねっ」
「レナは元から一番乙女だったよ」
「ルカさんまでからかってません?」
「可愛いなって思って、つい」
焦れったいのなんて私が一番分かっているけど、それでもみんなが嫌な顔せずに話を聞いてくれるから嬉しかった。
ただ、真剣に考えてくれているからこそ余計に恥ずかしくなってきて。今日はずっと顔が熱いままだ。
「もう、こんな恥ずかしい思いするのもアカリのせいだよ……っ!」
「ごめんって、勝手に言ったことは謝るからさ! 私だけじゃなくて、みんなに相談したほうがレナの為だと思ったのっ!」
私たちの会話をニコニコ笑って眺めていたアカリに、ついつい文句もぶつけたくなる。
ちょっと八つ当たりかもしれないけど、アカリがバラさなかったら平和だったんだから。
「で、例の子には何の曲おすすめしたのよ?」
「…………私のソロ曲」
「わぁお……!」
「ずいぶん積極的にいくじゃない。それなら、普段も同じようにやるだけよ」
「私も前にそう言ったんだけど……」
「プライベートだと上手く話せない……」
リリアリのみんなといるときは、きちんと喋れるのに……。
一人のときだと、スイッチの入れ方を忘れたみたいに声が出なくなるのだ。
特に学校では、リリアリのレナだとバレないようにって思いも無意識に強く働いてるのか。
今日の朝の会話を思い出すだけでも、自分のダメさにため息が漏れる。
「おすすめしたならさ、くるんじゃないの。感想が」
「あっ、そっか! また話すチャンスがあるじゃない」
「感想……。くれるのかな?」
確かに感想を伝えるとは言ってくれてたけど……。
私の歌は、迫田くんの好みに刺さってくれるのだろうか。
そのまま、何も言われなかったら感想に困ったってことだよね……。
考えれば考えるほどネガティブ思考に陥ってしまう。
「感想もらえたときは思いきってガツンといきなさいっ!」
「ユイの言う通りっ! なんなら、お詫びに私がトークテーマ考えたっていいから! とにかく積極的にアタックだよっ」
「えぇ、今日やっと初めて話せたばかりなのに……」
「だからこそ、じゃないの?」
ユイやアカリだけじゃなく、ルカさんにまでそう言われると頑張るしかない気がしてくる。
ただ、本来の自分を出せても、積極的なんて言葉からは離れているからアタック出来る自信は全くなかった。
そして、サクラコさんはなんだか楽しそうで……。
「レナちゃんが青春してるとこ、わたし見に行きたいなぁ~」
「絶対にダメです! 学校にも近づかないでくださいね!」
「ええ~。じゃあ、文化祭とかの学校行事で合法的に見に行くもん~」
「サクラコさん良いアイデアっ!」
「やめてください。合法的にって言い方も嫌ですけど、みんなが来たら大騒ぎになる……!」
今日、学校であったことでもこんなに盛り上がれるなんて。
迫田くんとも、こんな風にリラックスして話せる日がくるのかな……。
感想をもらったときのために、私も伝えたいことを考えておこうと思った。




