第7話 それぞれの余韻
水無月さんに教えてもらった曲は、家に帰ったらその日のうちにすぐ聴いた。
普段はあんまり音楽には触れないけれど、初めて知った水無月さんの好きなものということで、ちょっと心が跳ねていたのかもしれない。
「ん、なに聴いてんの?」
リビングでイヤホンをして聴いていたら、突然左耳の音楽が消えて。代わりに姉さんのそんな声が聞こえてきた。
「リリアリってアイドルの曲だよ。姉さんは知ってる?」
「そりゃ、知ってるに決まってるでしょ。そもそも、あんたくらいの歳で知らないほうがレアだと思うよ」
悠真にも似たようなこと言われたけど、僕ってそんなに流行に遅れてるのかな……。
逆に姉さんは流行には敏感なほうだから、リリアリのことを知ってても驚きはなかった。
「どれどれ……。おお、レナのソロ曲か。いいチョイスだね」
「隣の席の子が、リリアリのおすすめの曲ってことで教えてくれたんだ」
「あんたがアイドルに興味持つの珍しいと思ったらそういこと……。そうなると、入門編にしては上級者向けな気もするけど……」
「そうなの?」
「普通は全員で歌ってる曲からでしょ。リリアリなら、めっちゃバズってる曲もあるし」
そう言われると、レナさん以外のメンバーの人ってあまり知らないかも……。
悠真が少しだけ語ってたけど、一瞬だったからあんまり覚えてないし……。
「まっ、レナをおすすめしてくる子の気持ちもファンとしては分かるけどね」
「上級者向けなのに?」
「レナはリリアリの歌唱担当だから。良い意味でアイドルらしくもないし。歌で引き込むならレナがうってつけっていうのが、いちファンの意見かな」
確かに、抱いていたアイドルのイメージとかなり違うなとは、曲を聴いてから思っていた。
教えてもらったレナさんの曲は、かなりロックっぽい曲調で。歌声だって、どちらかと低めの声でカッコいい印象だったのだ。
元気いっぱいで可愛さが詰まってるようなものを想像していたから、正直かなり驚いたところもある。
「レナさんってどんな人なの? 歌を聴いてるとクールなイメージばかりが湧いちゃって……」
「おっ、着々と興味を持ってきてるね~」
「あはは……」
水無月さんとの話題を増やせるかな……なんて、ちょっとした邪念もあるんだけど……。
そういう意味では興味は持っているのかもしれなかった。
「完全なファン目線でしかないけど、すごくストイックかな」
「なんか話だけ聞いていると、だんだんアイドルのイメージから離れていくような……」
「いやいや、王道のアイドルだよ。そこら辺のバランスも含めて、リリアリは良いメンバー構成なんだって」
「あんまり詳しくない僕のイメージだし。姉さんが言うならそうなんだろうね」
「そういうものなのっ。ここまでの感じはどうよ? あんたの初めての推しアイドルになりそう?」
「う~ん、まだ分からないけど……。でも、レナさんの歌声には引き込まれたかも。他の曲がどんな感じか気になるくらいには」
「じゃあ、レナ推しの晴輝にあたしからも一曲。公式チャンネルにアップされてるライブ映像があるんだ。この動画おすすめ」
そんな言葉の後、姉さんからメッセージで動画サイトのリンクが送られてきた。
確認してみると言っていた通り、リリアリのライブの映像みたいで。
ステージの上には、かすかに見覚えのある五人が立っている。
「もし、本気で追っかけたいってなったりしたら言いなね~。一回くらいならライブに連れていってあげよう」
勧めてきたのは姉さんなのに、僕が動画を観るよりも前に立ち上がると。自分の部屋へと戻っていってしまった。
相変わらず、気まぐれな人だな……。
感想を聞きもせずにいなくなった姉さんは気にしないでおくとして。僕は少しワクワクしながら再生ボタンをタップした。




