第47話 周りを頼って
「姉さん。レナさんの写真が有名になったSNSってどれ?」
夜ご飯を食べ終わって、お皿洗いなんかも済ませたあと。
ソファでくつろいでいる姉さんに、僕はなんの前振りもなくそう切り出した。
「……珍しいわね。あんたがSNSに興味を持つなんて」
「リリアリのことを応援したいなって思ってきてさ。一気に広まったのはネットで話題になったからって聞いたし」
「ふ~ん、ちょっとスマホ貸してくれる?」
「はい、変なことしないでね?」
「あんた、親切な姉をなんだと思っているのさ……」
若干の不安を抱きつつも素直にスマホを渡すと、姉さんは数十秒ほど操作をしただけですぐに戻ってくる。
「ほい、このアプリ。インストールしておいたから、指示通りにアカウント作ってみて」
連絡と調べものをするときにしか使わないスマホには、見慣れない鳥のマークのアイコンが追加されていて。
恐る恐るタップしてみるとログイン画面のようなものが出てきて、下のほうにはアカウント作成の文字が。
これ、メールアドレスとか登録しないといけないんだ。姉さんも使ってるんだし大丈夫なんだろうけど、少し心配になってしまう。
アカウント名は……ひとまず自分の名前でいいや。
プロフィール写真とかもよく分からないから、最悪あとで姉さんにやってもらおう。
そこまでいくと画面には、『アカウントをフォローしてみましょう』との表示が出てきた。
「とりあえず作れたけど、フォローってなに……?」
「そこからかぁ……」
ため息つかれるくらい、僕の分からなさって異常なのだろうか。
隣に座る姉さんがさらに僕のほうへと詰めてきて、スマホを覗き込んでくる。
「検索のとこに『リリーアリス レナ』って入力してみ?」
検索の場所すらどこだか少し迷ったけど、すぐに虫眼鏡のマークを見つけて、姉さんに言われた通りに入力してみる。
「あっ、なんか出てきた」
「それがレナのアカウント。フォローすると、呟きとか写真がタイムラインってとこに流れてきて見やすくなる」
「これが……。実際にレナさんが文字とか打ってるってことなんだよね?」
「そのアカウントはそうだろうね。一番上の呟きなんかは一時間前に更新されてるから、その時間にレナ自身が投稿したってこと」
なるほど、確かに使いようによっては便利なものだなと思う。
レナさんみたいな芸能人が、ファンの人へ何かを発信したいときにはうってつけだし。ファンからしても、気軽にメッセージを送れるのは良いことだろうし。
「見るだけでも良いなら確かに簡単かも。とりあえずありがとう」
「えっ、フォローすんのレナだけなの!?」
「えっ、ダメかな……」
「せめて、リリアリ公式とメンバー全員はフォローすればいいのに」
「そ、そういうものなの? てっきり推してる人しかダメなのかと……」
「いやいや、向こうは分かりゃしないんだから。せめて公式だけでもフォローしとくと、情報も見逃さないよ」
姉さんがそう言うならと、僕はさっきと同じように検索画面で公式アカウントを探す。
一番上にそれらしきものは出てきたけど、他にも似たようなものがあって……。
「これであってる?」
「そっ、たまに偽物とかいるから気をつけなよ?」
「……それ何が目的なの?」
「あたしにも分かんないよ」
やっぱりSNSって難しいかもしれない。
あまり自分からフォローすることはないだろうけど、今後なにかあったら姉さんに確認しよう。
「あと、レナさんの例の写真ってどこで見れるの?」
「それはね、さっきの検索画面に戻って同じように検索すれば────」
今度は僕が持ったスマホに姉さんが指を伸ばしてきた。
画面がスクロールされると色々な呟きや写真が流れていって、僕はただただその様子を見守るだけ。
「ほら、これこれ。やっぱ奇跡の一枚だよねぇ」
止まったところの画像を姉さんがタップすると、スマホの画面いっぱいに例の写真が広がる。
────百年に一人の美少女として話題になったというあの写真が。
「元々の顔も整ってるけど、ライブ中にここまで顔崩れないのは凄いよ」
「確かにすごい綺麗……」
一度だけ悠真に見せてもらったときはリリアリを知ったばかりだったから、しっかりとは興味を持っていなかったんだけど……。
こうして見ると、その表情はどこか彼女の面影を感じるような。
今になってみれば、確かに僕は鈍感だったんだなと思わされた。
ひとまず、SNSのことを姉さんに教えてもらえて少しは理解できたような気がする。
今後はレナさんに感想を送りたいときにSNSを使おうと思っているけれど、使いこなせる自信はまだない。
今は、画面に映るこの写真を保存して満足だった。




