第48話 周りを頼って ─ Side・レナ
ライブが迫ってきていようと、学校の文化祭準備で時間が削られようと。普段のお仕事が決してなくなるわけじゃない。
そういうわけで今日は、サクラコさんとユイと一緒に雑誌の撮影が入っていた。
「レナさ~ん、表情ちょっと固いかも~」
「す、すみません……」
「レナちゃん緊張してる?」
「どうしてもカメラに撮られるのって慣れないんですよね……」
「僕もまだまだねぇ。レナさんをリラックスさせてあげられないなんて……」
カメラマンさんにそう言わせてしまうと、なんだかより申し訳ない気持ちになる。
確かに最初は、パッと見の渋い雰囲気が怖かったけど……。
その見た目とは裏腹に、話し方がサクラコさんと同じような感じだから、今はむしろ話しやすい人だと思っている。
「自然を意識すればいいでしょっ。あの写真のときみたいに」
「あれ、本当に凄いよね~。ファンの人にあんな表情を撮らせちゃうなんて、ちょっと妬いちゃうわ」
「あはは……。あのライブのときは緊張する余裕もないくらい必死だったので……」
「あの頃のレナちゃんは、今よりもっとストイックだったもんね~」
「ホント、今はだいぶ丸くなったほうよ」
「私ってそこまで言われるほどだったの……?」
そんな会話をしているときでも、カメラマンさんは不意打ちでシャッターを切ってくる。
ただ、撮られてるって意識がないからか、その写真を見てみると自分でも自然な表情ができてるって思えるものだった。
そのあとも和やかな雰囲気で撮影は進み。キメるところは頑張って表情を作りながらなんとか乗りきって。
カメラマンさんが上手いから、写真は全部とても素敵な仕上がりになった。
「みんなお疲れ様」
「お疲れ様です」
「お疲れ様です。どうでした、アタシたちの写真は?」
「もっと人気出ること間違いなし! 最高に可愛かったよ!」
「うふふっ。そう言ってもらえたら、わたしたちも自信が持てるよ~」
撮影が終わると、そんな風に出迎えてくれる人が。
今日の現場にはマネージャーさんも着いてきてくれていたのだ。
もちろん今の感想はかなりの贔屓目が入ってるだろうけど、それでも終わってすぐに褒めてもらえるのは嬉しいことだった。
「そういえば、レナ。今月末の生放送が文化祭と被ってるみたいだけど休みにしとく?」
飲み物をもらって座ろうとしたところで、マネージャーさんからそんな提案が飛んでくる。
「いえ、夜からですよね? そこまで遅くはならないので出られると思いますけど……」
「後夜祭とかあるんじゃないの?」
「参加は自由みたいですし、それならお仕事のほうを優先で────」
「駄目よ」
「えっ……」
私としては、いくら学校行事があっても仕事に穴はあけたくなかった。
だから、マネージャーさんから食い気味に遮られてしまうとひどく動揺してしまう。
「学生時代の青春は一度しかないんだから。学校行事はしっかり楽しみなさい」
「でも、個人的な事情でメンバーやマネージャーさんにまで迷惑をかけるのは……」
「────私の年齢になるとね、学生の頃の時間を取り戻したいと思うときが何度もくるの」
「へ……っ?」
「だけど、どれだけ願おうと、お金を積んだって絶対にあの時間は戻ってこない。過ぎてしまった青春の時間は特に取り戻せないのよ」
突然はじまった真面目な話に、私の動揺は続いたまま。
マネージャーさんの声色はどこかノスタルジーに浸っていた。
「もちろん仕事も大事だけど、生放送は来月だってあるでしょ。そのために今しかない青春を犠牲にする必要は、私には無いと思う」
今の私としては、学校よりもリリアリのほうが大事なんだけど。大人になったらそう思う日がくるのかな……。
「事務所のマネージャーとしては失格の意見かもしれないけどね」
「熱いお話だねぇ~。でも、マネちゃんってそんな年齢だったっけ~?」
「サクラコには熱いお説教がいいかしら?」
「ごめんなさい~」
張り詰めていた空気を和やかなものに変えたのは、サクラコさんのふわふわした声。
どうやら私たちの会話を聞いていたみたいで、ユイさんと一緒にこちらへ近づいてくる。
「アタシも後夜祭まで参加するべきだと思うわ。代わりにアタシたちが、ファンの人を楽しませればいいんだからっ」
「うんうん、わたしもユイちゃんと同じ気持ちだよ~。心配しないで頼ってほしいなぁ」
「あなたは一人じゃないの。時にはメンバーに任せて、しっかり青春も楽しみなさい」
こうやって三人に言われてしまえば、私には拒否権なんてほぼ無い。
後夜祭を一緒に過ごす友達だっていないし、どんなことをやるのかすら知らないけれど……。
それでもその時間に何か意味があると思って。そして、みんなの言葉を信じて、ここは甘えさせてもらうことにした。




