第42話 係決め ─ Side・レナ
週の始まりなのに休み明けの感じがしないのは、土曜日に迫田くんと会っているからだろうか。
昨日はリリアリのレッスンが一日中あったし……。
最近はあまり休日に休めている気がしないけれど、十一月のライブを乗り越えるまでは頑張らなければ。
とは言え、今日は十月に入って初めての学校。まだまだ先は長いみたい。
それに今月は────文化祭がある。
今の時間は文化祭に向けた係決めをしているようだった。
確か、私たちのクラスはカフェをやるって言ってたっけ。
学校の私に接客はまず無理だし、なによりライブ前に喉を酷使したくない。
かといって、内装とかは役にたたないだろうし……。
「晴輝はどれにするか決めてるか?」
「僕はキッチンがいいなぁ。接客はあまり得意じゃないし」
「あ~そっか。料理得意だもんな」
キッチンかぁ……。普通の家庭料理なら私も作れるし、キッチンだったら出来るかもしれない。
クラスの人たちはいるけれど、迫田くんには少しくらい私らしさを見せても……。
「さ、迫田くんって料理得意なの……?」
宮城くんと話しているところに勇気を出して入っていってみると、迫田くんはすごく驚いた顔をしていた。
不自然に入ってきたらそうなるよね。それに盗み聞きしてたのかって話だし……。
ただ、迫田くんはすぐに私の言葉にも返してくれる。
「うん。平日は家族みんな帰りが遅いから、僕が夜ご飯は作ってて」
「た、大変なんだね……」
「遅くまで働いてる家族に比べたらそんなことないよ」
「えっ、晴輝って水無月さんと仲良かったのか……!?」
「席が隣になってからたまに話すようになったんだ。そうだ、水無月さんはどこかやりたいところはある?」
「わ、私もキッチンがいい……。接客は向いてないから……」
「おっ、それじゃあ晴輝も一人ぼっちじゃなくなるな。良かったじゃん!」
会話の流れでやるって言っちゃったけど良かったのかな……。
でも、迫田くんがいてくれるなら、少しは楽しい文化祭になるはず。
「来週からは放課後も残って準備をしてもらうから。高校はじめての文化祭を、しっかり楽しみながら取り組むこと!」
なんとかやっていけそうだとホッとしていたところで、先生のその言葉が私を現実に引き戻した。
「そっか、レナの学校の文化祭って今月末なんだ」
「ライブの追い込み期間と重なるわね」
「私の体力、持つのかな……」
「レナちゃんはストイックだから、ちょっと不安だねぇ」
学校が終わると、今日も夜までライブに向けたレッスンを受けていた。
来週からは居残りのせいで開始時間も遅くなるわけだけど、練習量を減らすわけにもいかないし……。
とにかく今まで以上に上手くやらなければ、間違いなくライブ前に力尽きるのが想像できた。
「サクラコさんは、今週が大学の文化祭でしたっけ?」
「そうだよ~。ルカちゃんのところもだよね?」
「うん。アカリとユイは?」
「私の学校は先月のうちに終わってますね」
「アタシのとこも」
「っていうことは、私のとこだけ……」
学校行事は仕方ないし、みんなも乗り越えてきたんだから私だけ弱音を吐くわけにもいかないんだけど……。
今の段階で余裕がなくなりそうだなんて、私はやっぱり不器用だなとつくづく思う。
「まあまあ、レナちゃん。わたしたちも力になるからさ」
「そうよっ。何かあったら動画に残しておくから」
「それに、メイド喫茶じゃなくて良かったと思えば」
「ルカさん、それはいま言うことじゃ……」
「確かにコスプレ系じゃなくて良かったです……」
「良かったんだ!?」
リリアリの活動ですらメイド服なんて着たことないのに。初めてが学校になろうものなら絶対に嫌だった。
そう思うとなんとなくマシに思えてきて。何故だかルカさんの励ましで、私の気力は少しだけ元に戻った。




