第41話 係決め
週が明け、十月になって初めての学校では、さっそく新しい月が始まったことを実感させられる。
「え~、今月末の文化祭に向けて係決めをしていきたいと思いま~す」
教室の前に立ってそう話しているのは、クラスで決められた文化祭の実行委員の二人。
僕はそこまで積極的に前に出れるタイプでもないから、そういう役割を引き受ける人は凄いなと見てて思う。
高校はじめての文化祭、僕のクラスはカフェをやることが決まっていた。
そして今日は、もうすぐ始まる準備期間に向けた係決めが目的らしい。
「晴輝はどれにするか決めてるか?」
「僕はキッチンがいいなぁ。接客はあまり得意じゃないし」
「あ~そっか。料理得意だもんな」
「悠真はどうするの?」
「内装が一番気楽にやれそうかね。俺は料理とかさっぱりだし。会計とかの責任重いやつも無理」
「じゃあ、別々になっちゃうね……」
決して交友関係が広いわけじゃないし、仲の良い人がいてくれたら嬉しかったんだけど……。
それに、キッチンだと話したことすらない人が多いだろうし上手くやれるか不安だ。
決まる前からそんな風に感じていると、思いもよらない人から声をかけられる。
「さ、迫田くんって料理得意なの……?」
左隣の席から発せられたその声は、水無月さんのもので。
朝の時間以外で水無月さんが話しかけてきてくれるのなんて、初めてじゃないだろうか……。
不安よりも一気に驚きが広がって動きがとまりかけるけど、僕は慌ててその質問に言葉を返す。
「うん。平日は家族みんな帰りが遅いから、僕が夜ご飯は作ってて」
「大変なんだね……」
「遅くまで働いてる家族に比べたらそんなことないよ」
「えっ、晴輝って水無月さんと仲良かったのか……!?」
「席が隣になってからたまに話すようになったんだ。そうだ、水無月さんはどこかやりたいところはある?」
「わ、私もキッチンがいい……。接客は向いてないから……」
「おっ、それじゃあ晴輝も一人ぼっちじゃなくなるな。良かったじゃん!」
確かに水無月さんがいてくれるなら、孤立することもなくなりそうで安心する。
あれ、そういえば水無月さんと普通に話せてるような……。
「水無月さんも料理できんの?」
「……ふ、普通だと思う」
「普通に作れるなら全然困らないでしょ」
「まあ、そんな手の込んだものなんて文化祭のカフェじゃ出さないだろうしな」
「パンケーキとかだったっけ? 正直、悠真みたいに料理しない人でも作れるものだと思うんだけど……」
「確かに……」
「今、全世界の料理苦手な人間に喧嘩売ったぞ」
「あはは、ごめんって。でも、今度チャレンジしてみてよ」
レシピに書いてある通りにやれば美味しく作れるじゃんって、僕は思うんだけどね。
料理が苦手な人はレシピがあっても難しいみたいだから、きっと見えない壁でもあるんだろう。
悠真とは別れることになったけど、無事に僕と水無月さんはキッチン係になれて。いよいよ文化祭に向けての雰囲気が作られていく。
「来週からは放課後も残って準備をしてもらうから。高校はじめての文化祭を、しっかり楽しみながら取り組むこと!」
全員の係も決まり担任の先生の言葉で、その日の授業は終わった。
にしても、少しだけ水無月さんとの距離が縮まったよね。
いつも以上に話せたこと、水無月さんと一緒に文化祭を楽しめそうなことに、どこか僕の気分は浮かれ気味だった。




