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隣の席の水無月さんが、ネットで話題のアイドルだった  作者: 結城ユウキ


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第32話 緊張とすれ違い ─ Side・レナ


 リリイベ以降、迫田くんが話しかけてきてくれない。


 ずっと、感想が聞きたくて待っているのに……。

 もしかして、あんまりいい思い出にはならなかったかな。ハイタッチのときとか、頑張って想いを伝えたつもりなんだけど。

 時間が経つにつれて、私のなかで不安がどんどん大きくなっていた。


 それこそ、何かしていないと迫田くんのことを考えてしまうくらいに……。


 だから最近の朝の時間は、次のライブに向けてリリアリの曲を聴き込んでいる。

 もちろん話しかけられたときに声を聞き逃さないよう音量は小さめで。


 けど、モヤモヤした気持ちはそれでも誤魔化しきれなくなっていて。



「……ねえ」



 ────ついに、私から声をかけてしまった。



「えっ!?」



 イヤホンを外してから勇気を出して声をかけたというのに、迫田くんには跳び跳ねるように驚かれて。少しだけ複雑な気持ちになる。

 いくら私から話しかけるのが珍しいからってそんな反応することないのに……。


「……なんでそんな驚くの?」


「いや、ごめん……」


 ただ、迫田くんに謝らせてしまったところを見ると、私が話しかけないほうが良かったのかなって思ってしまう。


「な、何かあった?」


 その後の言葉が続かなくて私が黙りこんでいると、今度は迫田くんのほうが手を差し伸べてくれた。

 ここで聞かないと、もう一生私からは聞けないはず……。


「……リリイベ、行ったの?」


「んっ、げほっげほっ……!」


「……大丈夫?」


 やっぱり、いきなり本題に入るのは困らせちゃったかな。

 でも、世間話ができるほど学校での私は器用じゃないし。話を続けるなら、最初から本題に入るしかなかった。


「リリイベはちゃんと行ったけど……どうして?」


「……行けなかったから、感想聞きたかったの」


 本当はステージに立っていました、ごめんなさい……。

 リリアリの話で都合が悪いと、流れるように平然と嘘をつける自分が怖くなってくる。


「えっと、レナさんの初めてのセンター曲だったみたいで。凄い盛り上がってたよ」


「……会場の雰囲気はいい。迫田くんの感想は?」


「もちろん楽しかったよ、生で聞くとより迫力が凄かったし……! 良い意味で想像してたアイドルっぽくなかったっていうか」


「……アイドルっぽくなかった?」


「気を悪くさせたらごめんだけど、アイドルって可愛さを売り出すイメージだったからさ。リリアリはそういうのとは逆をいってて……。激しく踊ったり、歌にもカッコよさがあったり。そういう一面に惹かれたかも」


「……分かる」


 迫田くんがそこまでの感想をもってくれるようになったんだと思うと、思わず頬が緩みそうになってしまう。


 迫田くんが感じたものは、私たちがこだわっているところでもあった。

 可愛さを売ってるアイドルもいいと思うけど、私たちは歌やダンスで圧倒したい。

 気分を上げたいと思ったときに求めてもらえるようなアイドルになろうって、みんなで最初に決めたのだ。


 だけど、肝心の聞きたいことはまだ聞き出せていなくて……。

 ちょっと恥ずかしいけれど、私はこの流れで思いきって口にしてみる。


「……れ、レナは?」


「レナさんはダンスがキレキレだった! あんなに動いて歌声はブレないの凄いよね。歌うパートも多かったのに」


「そ、そう……」


 今回はセンター曲だったのもあって、いつも以上に追い込んだからね。

 コンディションとしては今までで一番良かったとは思う。


 けど、あれが十何曲と歌うライブで体力が持つかと言われれば……。間違いなく途中で力尽きるだろうなぁ。

 なんとか次のライブまでには、上手いやり方を見つけないと。


「あと、お見送りがあってね! あっ……」


「……なに?」


「あぁ……えっと……」


 ようやくお見送りのことが出てきたと思ったのに。迫田くんは口にした瞬間、明らかに気まずそうな表情を浮かべていた。


 何をそんなに言いづらそうにしているのか、私の疑問に対する答えはすぐに告げられる。


「前に悠真も言ってたけど、水無月さんってレナさんと似てるなって思ったんだ。だから、なんか今日も少しだけ緊張しちゃって……」


「……ど、どの辺りが似てるの?」


「笑ったときの雰囲気……? 面と向かって会ったら、本当に一緒だったから」


 その言葉を聞いたら、私は反射的に迫田くんから顔を背けていた。

 もしかして、分かってて探りを入れられてるのかな。いや、迫田くんはこんな回りくどいことをしてくる性格じゃないか……。


「……そう」


「ご、ごめん。そういうこと言われるの嫌だった?」


「……別に。気にしないで」


 正体を隠そうと思うと、どうしても無愛想な態度になってしまう。

 どちらにしても今の姿で気を緩めたら、この関係が終わっちゃうんだから。


 あれだけ聞きたかった迫田くんの感想も、今は聞いたことを少しだけ後悔していた。



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