第28話 ようやく伝え合える想い ─ Side・レナ
ミニライブだったとはいえ、始まってしまえばとにかく一瞬だった。
初めてのセンター曲でも、パフォーマンスの出来としては納得のいくもので。ステージ袖に下がってから、自分を労う気持ちを込めて小さく息を吐く。
今、ステージでは、お見送りのためにスタッフさんたちが準備をしてくれていた。
「ねぇねぇ、例の子は来てたの~?」
「あっ、そういえば。どうだったのよっ?」
「私も気になる! 見つけられた?」
ライブが終わったばかりなのに、小声でそんな好奇心を見せられても……。
髪やメイクを直し終えたサクラコさんたちに迫られて、私は軽く苦笑いを浮かべる。
「うん、最初の自己紹介のコールのときに」
「おお~! あれだけの人がいても、気になる人はすぐ見つけられるものなんだねぇ」
そんなに早いのかな……。まあ、迫田くんの声を聞き取るのが意外と簡単だったことには、自分でも驚いている。
「ハイタッチも参加するのよね?」
「あ~もしかして、レナちゃんピンチ!?」
「全力のアイドルモードで誤魔化します……!」
「レナは、オンとオフがはっきりしてるからなぁ……」
普段、迫田くんの前では地味で暗いオーラを放っていたけど、今日は初めて本当の私として話せるかもしれない。
ただ、ファンの人たち全員と話せる貴重な機会でもあるんだから。私個人の感情は意識しないようにしないと。
ステージに戻って客席に目を向けると、やっぱり迫田くんも残っていて。ファンならもちろん参加するんだろうけど、背筋は少し伸びた気分だった。
お見送りが始まれば、目の前のファンの人たちの想いに応えようと自然と集中できて。
次々とファンの人が来てくれるから、忙しくもあったけどそれ以上に楽しかった。
この人は、最近よく来てくれてる女の人だ。確か、私の写真がSNSでバズった辺りからの……。
「レナちゃん、今日も最高に顔が良かった!」
「え~顔だけですかっ?」
「全部! 動きの全部が可愛い!!」
「ふふっ、ありがとうございます! また来てくださいね?」
一人につきたったの数秒。交わせるのなんて二言くらいだけど、その中にそれぞれの想いを詰め込んでくれていて。
私も直接、感謝を伝えられるから大好きな瞬間でもあった。
しかし、意外とファンの人の顔って記憶できてるものなんだなと、自分でもビックリする。
そこまで記憶力は良くないし、人の名前とか覚えるのも不得意なんだけど……。
よく来てくれる人とかだと、誰を推してるのかも覚えられるようになってくる。
例えばこの人はユイ推しの────あっ、宮城くんだ。
ということは、次の人って────
流されるように私の前にやってきた人は迫田くんだった。
一瞬、喉が絞まりそうになるけど、私はリリアリのレナだってすぐ自分に言い聞かせる。
「ありがとうございます」
両手を小さくあげて、私から先に声をかけた。
だって、迫田くんの表情があまりにも緊張して固くなってるんだもん。
いつも学校で話すときは、私のほうが緊張してるのにね。
「えっと、歌声が好きです。ソロ曲もよく聴いてます……!」
必死になって伝えてくれた迫田くんの言葉。
教室で聞くのとは違う、ちゃんと私自身に向けて言ってくれたその言葉はやっぱりすごく嬉しかった。
「嬉しいです。また会いましょうねっ!」
どうしても秒数が少ないから、シンプルになっちゃったけど……。私の想いは伝わったかな……。
普段から感じている、迫田くんへの感謝の気持ち。
あまりの嬉しさから、浮かべた笑みは気持ち悪いニヤけ方だったかもしれない。
それでも私なりの笑みを見せながら、どうかこの気持ちが届くように祈った。




