第27話 ようやく伝え合える想い
「ありがとうございました~」
「ありがとね~」
会場全体が熱狂に包まれる中、それでもミニライブは終わりを迎えてしまう。
本当に楽しかったからこそ、時間が過ぎるのは早く感じて。
周りの人たちも一緒なのか、メンバーが下がった後も会場内の熱気が収まることはなかった。
「ユイちゃん可愛かった~っ!」
「悠真、すごい叫んでたね」
「当たり前だろっ。次はいつこんな距離で拝めるか分からないんだからな。晴輝は初ライブどうだったよ?」
「すごく楽しかったよ! 変な感想かもだけど、本物だって思ってちょっと圧倒されちゃった」
「わかるっ! 生で見るとオーラ感じるよな」
悠真の言ったことはなんとなく共感できた。
初めて生でリリアリの五人を見て、とにかく目が離せなくなる何かを彼女たちから感じたのだ。
最初のほうはただジッとステージで踊る姿を追いかけて、ペンライトを振ったり声を出せたのは最後の曲だけ。
リリーアリスというグループが流行っている理由も、僕はしっかりこの身体で理解できた。
「ふぅ、めっちゃ盛り上がったなぁ~」
「うん、僕らが踊ってたわけじゃないのになんか体力使ったよ……」
事前に悠真が予想してくれた曲が全て当たっていたから、僕も置いていかれることなくしっかり楽しめた。
感想もじっくり話し合いたいけど、とにかく今は座って一息つきたい。
そうして帰ろうとしたところで、悠真に引き留められる。
「おいおい、まだ終わってないぞ?」
「えっ。でも、さっきみんな下がっていったけど……」
ただ、周りを見れば確かに誰も帰ろうとしていない。
まだ何かあるのだろうか。この光景に疑問を浮かべていると、答えはすぐに返ってきた。
「メンバー全員のお見送りがあるんだよ! しかも、ハイタッチ付き!!」
「えっ、そんなのあるの!?」
「数秒だろうけど、レナちゃんとも話せるからちゃんと考えとけよ」
ミニライブとしか聞いていなかったから、心の準備とか全く出来ていない。
レナさんと話せる……。そう考えた瞬間、心臓の鼓動が早くなった気がした。
それからステージには、スタッフの人たちの手で長机が運ばれたりして。
その間に伝えたいことをまとめようとするものの、頭が思うように動いてくれず。
僕の脳内が大変なことになっていると、五人がステージ上に戻ってきた。
「それじゃあ、お見送り始めま~す。足を止めずに一列で進んでくださ~い」
スタッフの人のそんな合図で、前方の人から案内されていくのが見えた。
「いやぁ、めっちゃ緊張する。ってか晴輝、俺より固くなってね?」
「人生で一番緊張してるかも……」
「あははっ。晴輝を見てたらいける気がしてきたわ」
ステージではベルトコンベアーのように、右から左に人が流されていく。
悠真が言った通り、話せるのはほんの数秒だ……。
そうして僕たちの番も次第に近づいてきていて、ステージに上る階段に足をかけるところまで来た。
最初はルカさん。その後がサクラコさんで、次がレナさん。そしてユイさん、アカリさんと……。
かいてるかも分からない手汗を、ズボンの裾で拭いてから。先に行った悠真に続いて僕も飛び込んでいく。
「ありがと。また来て」
「か、カッコよかったです!」
「ありがとねぇ~。これからも応援してね?」
「は、はい! また来ます!」
ルカさんやサクラコさんが目の前にいるし、なんなら本当にハイタッチまで……。
そして次は────
「ありがとうございます」
目の前には両手を小さくあげたレナさんが立っていた。
本物だ……綺麗な顔……。いや、そんなことよりも口を動かさないと。次はいつ伝えられるか分からないんだから。
「えっと、歌声が好きです。ソロ曲もよく聴いてます……!」
「嬉しいです。また会いましょうねっ」
ひとまず言いたいことはしっかりと口にできてホッとする……。
真正面で見るレナさんはすごく眩しかったなぁ。
だけど、間近で見たその特徴的で控えめな微笑みが────僕の頭の中で誰かの面影と重なった気がした。




