↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席の水無月さんが、ネットで話題のアイドルだった  作者: 結城ユウキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/51

第25話 声を出して


 リリイベに行くと決まってからは、あっという間に時間は流れていった。

 毎日、姉さんとライブ映像を観てコールも完璧に覚えて。


 早いもので、もうイベント当日の土曜日。それも開演十分前になっていた。


「いやぁ。真ん中らへんだけど、狭い会場だからめっちゃ距離近く感じるわ」


「だね、こんな距離で見れるなんて思わなかった」


「だからこそ、俺の運がもう少し良けりゃあなぁ……」


 約三百人の人が入るというこの会場は、リリーアリスというグループの人気を考えると、確かに狭い会場にも思えた。


 辺りを見回せば、リリアリのシャツやグッズを身につけた人たちばかりで。

 何もつけていない分、少しだけ肩身も狭く感じてしまう。


 だけどそんな思いは、開始が近づくことで高まっていく高揚感でかき消されて。

 意外と自分が、今日を楽しみにしていたんだって気づく。


「あっ、それと……ほい」


「なに、これ?」


「ペンライトだよ。お前、持ってないだろうと思ってな」


「うん、悠真の言う通りだけど……。これってどうするの?」


「こうやって、推し色のライトをつけたら……。曲中とかに振って応援するんだ」


 そういえば、ライブ映像を思い出すと客席でカラフルな光が揺れていたっけ。

 その正体は、このペンライトだったのか。


「一本でいいか? もう一本なら貸せるけど」


「ううん、一本で大丈夫だよ。ありがとう」


「おっけ。じゃあ、俺は全力でユイちゃん応援するわ」


 悠真は両方の手に二本ずつ持つと、全てのペンライトに黄色の明かりを灯す。

 それを見て僕も紫色の明かりをつけてみると、タイミング良く会場も暗くなる。


「おっ、始まるぞ!」


 手元でより輝きを増した紫色の光に気を取られていると、大音量の音楽が会場に響きだす。


 このイントロは、姉さんがおすすめしてくれたリリアリの自己紹介ソングだ。

 そして悠真の一曲目の予想もこの曲だったから、僕は勝手にテンションが上がってしまう。


 やがてリリアリの五人がステージに姿を見せると、会場内の歓声はひときわ大きくなった。



「ユイちゃ~んっ!」



 隣では悠真も大きな声を出しているけど、僕はただただステージを眺めるのにいっぱいいっぱいで。

 数十メートル先に立つレナさんが、本物だって思って見惚れてしまう。


 キレのあるダンスに、揺れる黒髪。生で聞くとより圧倒される歌声から、動きや表情の変化まで。

 レナさんから目が離せないまま、気づけば一曲目は終わっていた。


「はい、それじゃあ改めて自己紹介していきます! まずはアカリから」


「はいは~い!」


 今まで観たライブ映像では、アカリさんが中心になってトークが進んでいたはずなんだけど……。

 今日はレナさんが真ん中に立って進行している。

 もしかして、今回の新曲がセンターだからなのかな。


「おい、レナちゃんのとき協力してやるから。俺が合図したら、コールの後にも名前呼べよっ?」


「えっ。う、うん……」


 アカリさんやユイさんのコールが終わった後、隣の悠真がそんな風に囁いてきた。

 きっと、コールに合わせるだけで叫べていなかったからだろう。

 協力してくれるっていうなら頑張らないと……。


 でも、その前にまずは────



「それじゃあ次はレナの番よっ!」



 レナさんのコールにもしっかり声を出さなければ。


「猫より気ままに歩き回る私は~」


「レナちゃーん!」


「ふふっ。みんなに笑顔を届けるねっ?」


「ふぅ~!!」


 周りの人とコールが合わさると、意外と気持ちいいし楽しいかも。


「晴輝、いくぞ」


 大きな拍手と歓声が混ざる中、耳元で悠真の合図が聞こえてきて。流れに身を任せる形で、僕も意を決して叫ぶことに。


「レナちゃ~ん!」


「れ、レナさ~ん!」


 悠真に比べたら、小さくて震えてる声。

 コールで呼んだときと違って、歓声に混ざってしまうような呼び掛けだったけれど。


 それでも、なんだかレナさんがこっちを見てくれた気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。