第24話 準備は念入りに ─ Side・レナ
最近は学校が終わってもまっすぐ家には帰らず、レッスンに寄っていくことが多かった。
お仕事が優先ではあるけれど、出来るだけみんなで集まり。迫ってきている週末のミニライブに向けて、細かいところや全体のバランスを確認している。
もちろん、ライブにはいつも全力で臨んでいるつもりだ。
それでも今回は、一段とギアをあげて頑張ろうと思わせてくるものがあった。
私のセンター曲だから、みんなを引っ張らないといけないし。
それに────迫田くんが来るみたいだから……。
「れ、レナ……? お~い?」
「……んっ?」
鏡に映る自分とひたすら向き合っていると、アカリのそんな声でハッとさせられる。
鏡越しに後ろを見れば、みんなはもう休んでいて。
そのまま時計に目を移せば、針は休憩の時間を指していた。
「レナ、なんか力入りすぎてない?」
「そ、そうかな……」
「もしかして、センター曲だからってプレッシャー感じてるんじゃないでしょうねっ?」
「レナはそういうのじゃ追い詰められないよ。また学校で何かあった。違う?」
「うっ……」
相変わらず、ルカさんは変なところで鋭いんだから……。
そうも的確に当てられると、つい私も反応しちゃって。もちろんメンバーは見逃してくれるはずもなかった。
「その反応は何かあった顔ねっ。抱え込むくらいなら教えなさいって」
「ユイの言う通り。私たちにはもっと気軽に相談してよっ」
「えぇっと……。実は、迫田くんが土曜日のミニライブに来るみたいで……」
ユイとアカリに詰め寄られても隠せるほど、私の芯は強くない。
犯人が自白するかのようなテンションで、私はみんなに今日の出来事を話す。
「おお~! 気になるあの子に、レナちゃんの本当の姿を見せるとき!」
「そ、そこまで大袈裟なことじゃないですよ……」
「やたら張り切ってたのはそういうことね」
「うん、集中しないとって思って」
「だからって、土曜日まではまだ遠いじゃない。体力が持たないわよ」
「でも、絶対に緊張するし……」
客席で迫田くんの姿を見かけたとき。果たして、レナとして完璧な振る舞いが出来るだろうか。
どれだけ練習を重ねても、胸の奥にはどこか不安があった。
「あっ、良いこと思いついた~」
「サクラコさんの良いことって不安だなぁ」
「これを聞いてもそう言える? 名付けて! ルカちゃんでイケメン耐性をつけてみよう大作戦~っ!!」
「はぁ……。レナ、付き合わなくていいかも」
「話だけでも聞いてよ~!」
「あはは……」
サクラコさんはすごく自信満々に提案してくれたけど、どんな対策を練っても迫田くんの前では緊張すると思う。
とにかく、変なことに巻き込まれないように笑ってやり過ごそう。
みんなの矛先がサクラコさんに向いているのを良いことに、ひっそり息を潜めていると。
まさかの想像していなかった形で巻き込まれてしまう。
「レナ。私じゃダメ?」
「……っ!」
突然、ルカさんから頬を両手で包まれて……。目線を合わせられたら口説き文句の一言。
そういえば、こういう提案にはノリノリで参加してくるのがルカさんだった。
顔は本当に良いし優しくて話しやすい人だけど、こういう一面を見る度にクールなイメージがなぁ……。
逆にちょっと残念なところがあるから、より愛されるのかな。
「だ、ダメです……」
「ちゃんと私の目を見ても? 断れるの?」
「ぐっ……」
「おぉ~ルカちゃんそれっぽい!」
「何させてるんですか。レナも何ちょっとなびいてるの」
そもそも私は、相手は関係なく押しに弱いのかもしれない。
そんなことを、サクラコさん考案の作戦で思い知らされた気がした。




