第22話 予感はだいたい当たるもの ─ Side・レナ
朝の迫田くんとの会話は、一日の体力のほとんどを使い果たしたような感覚だった。
実際、授業の内容があまり入ってこないし、本当に使い果たしちゃったのかもしれないけど。
休み時間もボーッとしてどこか浮かれていると、ふと迫田くんと宮城くんの会話が耳に入ってくる。
「今週の土曜日はな────リリアリのリリイベがあるんだよ!」
聞き慣れた単語に、私の身体はビクッと反応した。
出来れば学校では聞きたくなかった話題が、よりにもよって隣の席から聞こえてきたのだから。
私は興味がない風を装いながら、こっそり聞き耳をたてる。
「リリ……えっ?」
「だから、リリアリのリリイベ!」
「リリイベって、なに……?」
迫田くんって、リリイベのことも知らなかったんだ。
こんなにもアイドルに触れてきてない人って、かなり珍しいような……。
「簡単に言うと、新曲の発売を記念してやるイベントがリリイベって言うんだよ」
「なるほど……。そのイベントが次の土曜日にやるってこと?」
「そう! ただ、基本的にリリイベは抽選でな。当選人数も少ないことが多くてさ」
「じゃあ、貴重なイベントなんだ」
ライブツアーとは違って、リリイベはかなりキャパが狭い会場でやるからね。
どうしても来れる人は少なくなっちゃうけど、代わりに距離が近くて。ファンの人が喜んでくれるイベントでもあった。
「で、ここからが本題だ。実は、そんな貴重なイベントのチケットが一枚余っててな」
そんな宮城くんの言葉を聞いたとき、私の頭には嫌な予感がよぎり始めていた。
「へぇ。っていうか、悠真はそのイベント当たってたの!?」
「ああ。ちゃんとシングルの予約もして応募シリアルもらってたからな」
「凄いね。しっかり楽しまないとじゃん」
「だから、一緒にどうかって誘ってんだろ? どうよ、初の生リリアリ!」
やっぱりこうなるのか……。最初に宮城くんがこの話を持ち出したときから、そんな予感はしていたんだ。
「いやいや、まだ全然曲とか知らないし申し訳ないよ……! 他のリリアリ好きな人を誘ったら?」
迫田くんはそんなこと気にしなくていいのに……。
ただ、私の心の中ではすごく複雑な感情たちが渦巻いていた。
出来ることなら止めたいけど、私にそんな資格はないし。そもそも、生でリリアリを見てほしいって気持ちもあるし……。
私があたふたしている間にも、二人の話はどんどん進んでいく。
「あいつらは部活とか予定が入ってるんだと。このままだったら一枚余ったままだし、だったら布教してやるかと思ったんだよ」
「う~ん。でも、僕ってそういうの行ったことないし……」
「俺もリリイベは初めてだから。そこは晴輝と一緒だよ」
「悠真がそこまで言うなら。せっかくの機会だし────」
とにかく一回とめてみよう。そう思って立ち上がろうとしたとき────私の机のものが派手な音をたてて床へと落ちていった。
「だ、大丈夫? 水無月さん」
二人の話は途切れたものの、あまりにも不格好で恥ずかしすぎて迫田くんの顔が見れない。
問いかけにもただ頷くだけになっちゃったし、私って本当に不器用だなぁ……。
結局、その後にリリイベに行く約束をしている二人の会話を、隣でこっそり聞いていることしか出来なかった。




