第21話 予感はだいたい当たるもの
「なあ晴輝、今週の土曜って空いてるか?」
休み時間に次の授業の準備をしていると、前の席の悠真がいきなり振り返ってそんなことを聞いてくる。
今週の土曜日。ちょうど朝、水無月さんに断られた日だ。
だから、空いてるには空いてるんだけど……。
「ずいぶん突然だね……。何かあるの?」
「ふっふっふっ。興味があるか」
興味というより不安のほうが大きい。だって、悠真のテンションがやけに高いし。
怪しげな笑みを浮かべてもったいぶったままで。きっと、僕が答えないと話が進まないんだろうなと思って仕方なく付き合ってあげることに。
「うん、気になるな」
「そうかそうか、なら教えてやろう。今週の土曜日はな────リリアリのリリイベがあるんだよ!」
「リリ……えっ?」
「だから、リリアリのリリイベ!」
「リリイベって、なに……?」
声高らかに言い放った悠真だけど、僕にはいまいち馴染みがない言葉だった。
似たような響きだったから一回じゃ理解できなかったし、聞き取れた今でも意味は分かってない。
「リリースイベントの略だよ。この間、新曲が出たんだけど知ってるか?」
「一昨日、姉さんが買ってて僕も聴いたよ」
「なら話が早いな。簡単に言うと、新曲の発売を記念してやるイベントをリリイベって言うんだよ」
「なるほど……。そのイベントが次の土曜日にやるってこと?」
「そう! ただ、基本的にリリイベは抽選でな。当選人数も少ないことが多くてさ」
「じゃあ、貴重なイベントなんだ」
そういうアーティストのライブは、アイドルを含めて全く経験がなく、悠真の話の全てが新鮮だった。
ニュースとかで見かけるのは、ドームだったりかなりの人が入ってるイメージだけど……。当選人数が限られた貴重なものもあるんだ。
「で、ここからが本題だ。実は、そんな貴重なイベントのチケットが一枚余っててな」
「へぇ。っていうか、悠真はそのイベント当たってたの!?」
「ああ。ちゃんとシングルの予約もして応募シリアルもらってたからな」
「凄いね。しっかり楽しまないとじゃん」
「だから、一緒にどうかって誘ってんだろ? どうよ、初の生リリアリ!」
「いやいや、まだ全然曲とか知らないし申し訳ないよ……! 他のリリアリ好きな人を誘ったら?」
この間リリアリ談義をした二人や、他にもリリアリが好きな人は沢山いるはずだ。
そんな人たちを差し置いて僕が行くのは、どうしても憚られる。
ただ、悠真はそんな僕の言葉にため息を漏らしながら返してきた。
「あいつらは部活とか予定が入ってるんだと。このままだったら一枚余ったままだし、だったら布教してやるかと思ったんだよ」
「う~ん。でも、僕ってそういうの行ったことないし……」
「俺もリリイベは初めてだから。そこは晴輝と一緒だよ」
「悠真がそこまで言うなら。せっかくの機会だし────」
僕が行くと言いかけた瞬間。隣の席から教科書やペンケースが派手な音をたてて落ちてきた。
「だ、大丈夫? 水無月さん」
そんな問い掛けに、小さく頷く水無月さん。
悠真も一緒になって落ちたものを拾っていると、そこであることに気づく。
水無月さんが今週の土曜日にある予定って、リリイベだったりするのかな。
悠真が一緒だから、会うことは出来ないかもしれないけど……。
もし見に行くなら、感想を聞けたりするだろうか。
拾い終わったタイミングで、授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。




