第2話 プロローグ ─ Side・レナ
隣の席の迫田くんは、どうして私に話しかけてくるんだろう。
無愛想な態度をとっているのは、自分でも分かっているのに。それでも彼は、毎日話しかけてきてくれる。
私────水無月玲奈にとって、アイドルとして活動していることが、学校生活にも少しだけ支障をきたしていた。
おそらくクラスの人たちの私の印象は、無口だとか根暗だとかそんなところだと思う。
けど、無口なのは、喉を使いすぎないように普段からあまり喋らないでいるのと、私の正体を知られないようにするため……。
そのせいで、学校の人と話すときは緊張するようになっちゃって。すっかりクラスの中では孤立しているんだけど。
「水無月さん、一緒に組まない?」
それでも迫田くんは、ペアを組まなければいけないときとか、何回も話しかけてきてくれる。
なのに、頷いて返すことしか出来ない自分が情けない……。
「はい、じゃあこれ。お願い」
ただ、幸いなことに私の意思は伝わっているみたいで。現代文の作文のプリントも無事に交換できた。
私は、迫田くんの作文を読む時間が結構好きだったりする。
いつも話せない分、文字でならいっぱい想いを伝えられるし。
迫田くんのこんな考えが好き。そこは私には無い視点かも。
次々と思い浮かぶ迫田くんの良いところに、どんどんペンは進んで、感想部分の枠はあっという間に埋まってしまった。
横目で隣の席をチラッと見ると、真剣に読み込んでくれている迫田くんの表情が。
ずっと見ていられるけど、それだとプレッシャーになっちゃうだろうし、終わるまで窓の外を眺めることにする。
私と関わっているせいで、迫田くんまで変人扱いされたりしてないかな……。
私がもう少し、スイッチの切り替えが上手くできる器用な性格だったら良かったんだけど……。
ぼんやりしていると、どうしてもネガティブ思考に陥ってしまう。
そんなことじゃなくて、このプリントを返すときになんて言うか考えよう。
ただ、神様は時間なんてくれるわけもなく。そのときはすぐにやってきてしまった。
「遅くなってごめんね? はい、水無月さん」
遅いだなんて全く思ってないよ。
そんなことを口にしようとしても、私の想いはなかなか声となって出てくれない。
アイドルのステージではすごく楽に出るのになぁ……。
もしかしたら、アイドルのときの気持ちを作れば話せるのかもしれないけど。私の正体がバレちゃうかもしれないし……。
なんとか、今の私で頑張らないと。
「…………っ」
でも、私が口をパクパクしている間にプリントは返し終わっちゃって。結局、お礼さえ言うことが出来なかった。
今日もうまく伝えられなくて、テンションが下がりそう……。
でも、返ってきたプリントを見ると、自然と口角が上がりそうになった。
迫田くんは私なんかの作文にも、いつもいっぱいの感想を書いてくれている。
どうして、私に優しくしてくれるんだろう。
席が隣になってから話しかけてくれるようになったけど、その理由もいつか聞いてみたいなと心の中で思った。




