第18話 不安の中で ─ Side・レナ
サクラコさん、ルカさんとのおでかけから帰ってきた私は、着替えもせずに机に突っ伏していた。
でも、一人寂しく静かに項垂れているわけじゃない。
スマホの向こう側から聞こえる賑やかな声をBGMにして、私は身体の力を抜いている。
「ということがあってね~」
「あ~今日の仕事がなければ。レナの貴重な乙女姿を見逃すなんて……」
「あははっ。でも、ホント残念。私のほうが先に迫田くんのことを知ってたのに、ルカさんとサクラコさんに先を越されちゃった」
電話越しに聞こえるリリアリのみんなの声は、今日あった出来事で盛り上がっていた。
そう、私が迫田くんと遭遇したことについての話で。
元々グループ通話はする予定だったけれど、サクラコさんがノリノリで話を始めたら、その熱がアカリとユイにも移ってしまったのだ。
「私、もう切ってもいい……?」
「ダメよっ。じっくり話を聞かせてもらわないと」
「でも、せっかく会えたのにテンション低くない?」
それはアカリの言う通り。休日に迫田くんと会えば、本来ならはしゃいでるだろうなって自分でも思うもん。
なのに、私が机に突っ伏すくらいにテンションが低い理由……。
もちろん恥ずかしさはあるけれど、それ以上にやらかしてしまったあることが気がかりで仕方なかった。
「迫田くんのお姉さんに────私がレナだってバレちゃったかも……」
「えっ!?」
「ちょっと、本気で言ってる?」
「だろうね。遠くからでも分かるくらい、レナのことジッと見てたし」
「そうだった? わたしは全然気づかなかったけどなぁ~」
「すっごい見られてたんです。あと、あの不自然な様子。絶対にバレてる……」
サクラコさんはいつも通りとして、ルカさんはやっぱり気づいてたんだ。
もしかして、あのとき二人が来るタイミングがやけに良かったのって……。まあ、好奇心のほうが強かったかな。
どちらにしても、ルカさんが思っているなら私の感覚は間違いないと思う。
迫田くんのお姉さんには、私がリリアリのレナだって気づかれている。
「だ、大丈夫よっ! アタシだって変装してもバレることあるし」
「ユイ、フォローになってないような……」
「はぁ、油断しちゃったかなぁ……」
気づかないうちに心のどこかで気が緩んでいた部分があったのかも。
メンバーの中でも、私がバレることは滅多になかったからショックも大きかった。
「でも、私も大丈夫だと思うよ。聞いてる限り迫田くんは良い人そうだし。仮に正体を知っても、言いふらすような人じゃないって」
「そうだけど……」
「なら、月曜日に探ってみれば?」
「ルカさんナイスアイディア!」
「うんうん、会話のための口実にもなるからねぇ~」
確かに、迫田くんと話すための理由としては十分だと思うけど……。
多分、みんなが想像してる以上に学校の私は無愛想だから。いまいち自信が持てなかった。
「私からその話を振るのはちょっとリスクが……」
「むこうから話しかけてきてくれるでしょ」
「リリアリの新曲を買ってくれたんだもんね」
「で、感想の話になってから土曜日の話に自然と流れを持っていけば!」
みんな簡単そうに言うけれど、『自然と』の部分が私には難しい。
でも、このまま放っておいても不安を抱え続けるだけだし……。
「みんながそう言うなら、やってみる……」
「うん。まあ、バレてたらそのときはそのときで! レナらしくいれば大丈夫だよ」
「そうねっ。むしろ、リリアリのレナだって誇ってやりなさいっ!」
「あはは……。それは無理かなぁ……」
ここ最近、メンバー内で変な話題になることが多いのは不本意ではある。
だけど、最後にはこうして励ましてくれて。楽しい気持ちにさせてくれるから、私は良い人たちに恵まれてるなと改めて思った。




