第14話 思わぬ出会いは突然に ─ Side・レナ
今日は久しぶりに学校もレッスンもない、完全にお休みの日。
ただ、この間の水曜日にリリアリの新曲が発売されたのもあって。メンバー数人で、近くの音楽ショップに様子を見に行くことになっていた。
アカリとユイはお仕事が入っているから、今日は大学生二人組でもあるルカさん、サクラコさんと一緒。
「どう? 次の生放送の衣装で」
試着室のカーテンを開けて、決めポーズをとるルカさん。
今日の本来の目的は、音楽ショップに様子を見に行くことのはず────なのに、ショッピングセンターに入っている服屋さんに寄り道していたのだ。
やや強引に二人に付き合わされた形ではあるけど、お休みの日だし少しくらいは許されるよね。
「ルカちゃん似合う~。わたしもカッコいい系いけるかなぁ」
「サクラコには無理」
「ひどいっ! レナちゃんは、そんなこと言わないよね?」
「えっと、サクラコさんは今のままのほうが……」
「うぅぅ……」
癒し系のサクラコさんが路線変更したら、私たちよりもファンの人が戸惑うと思う。
でも、挑戦してみたくなる気持ちは分からなくもない。
「二人だって、たまにはイメージを変えたくならない?」
「アイドルは気軽に変えられない……」
「そうですね。髪型すらも事前に相談しないとですし」
「わたしはショートカットにしたくなったら、内緒でやっちゃうけどなぁ~」
「サクラコさんは、そのふわふわの髪がいいんじゃないですか……!」
「うん、ショートは解釈不一致」
一度ついてしまったアイドルのイメージというものは、なかなかに変えるのが難しかった。
思いきった気分転換だとしても、ファンの人に気に入ってもらえなければ離れてしまうリスクがあるのだ。
そんなの気にせず自分の道を走るっていうグループもあるけど、私なんか怖くて出来そうにない。
「サクラコは私が着るような服よりも、こっち」
「わっ、可愛いワンピースだ~」
「レナだったら……」
「私は大丈夫です! キラキラしたものは、なんか落ち着かないので……」
サクラコさんに渡した花柄のワンピースを見て、私のほうにも流れ弾がきそうだったから咄嗟に遠慮しておく。
けど、ルカさんに私の言葉は届いていないみたいで。すでに真剣な眼差しで服を吟味し始めていた。
「ちょっと大人っぽい感じで。これは?」
「わっ、革ジャンだぁ~」
「私には早くないですか……?」
「シンプルな白シャツとデニムで合わせれば、スタイリッシュで良い」
そうしてルカさんに手を引かれて連れていかれたのは、全身が映る鏡の前。
そこに立たされると、後ろから私の身体に革ジャンをあてられて────
鏡の向こうには、ルカさんの言うように大人っぽい自分の姿が。
ちょっとしたイメージの変化ではあるけど、その変化には自分でもビックリで。ついつい見入ってしまった。
でも、今の私はこんなに強くないから……。
「やっぱり、私には早いですよ……」
「そっかぁ~。わたしはカッコいいと思ったけど」
「レナの気が進まないならしょうがない。でも、似合ってた」
「せっかく選んでくれたのに、すみません……」
「気にしないで。私が勝手にやっただけだし」
「そうだよっ? ルカちゃんは私たちを着せ替え人形だと思ってるんだから~」
確かに、ルカさんと出掛けるとよく服屋さんに連れていかれるけど……。
それでも罪悪感はどこか心の奥に残っていた。
「私はもう満足した。服、買ってくる」
「わたしもワンピース買ってくるね~」
「レナは先に様子でも見に行ってて」
「わ、分かりました」
「あくまでも、慎重に! だよ~」
学校では誰にも気づかれないし、今だって話しかけられることはないから。いつも通りにしていれば、私がリリアリのメンバーだってバレることもないはず。
変に警戒するほうが怪しく見えるだろうし、堂々と……。
そんなことを意識しながら音楽ショップに向かうと、私の目には見覚えのある姿が入り込んできた。
あれって迫田くん……。どうして音楽ショップに……。
入ってすぐのところにあるリリアリのコーナーの前で立ち止まってるから、音楽ショップに入りづらい。
とりあえず、一旦離れてルカさんとサクラコさんに連絡でも……。
「あれ、水無月さん?」
「…………っ!」
スマホを取り出そうかと思ったとき、いつも話しかけてくれるその声が少し遠くから聞こえてくる。
ハッと顔を上げると、リリアリのコーナーを見ていたはずの迫田くんがこちらを向いていた。
どうしよう、でも友達と会っただけって思えば……。
誤魔化すのも違う気がするし、ここは仕方なく迫田くんと向き合うことにした。




