第12話 みんなの印象と…… ─ Side・レナ
あれから私は迫田くんに話しかけることも出来ず。関わりなんて朝の挨拶に頭を下げるだけ。
その距離感が余計に、感想をもらったときの失敗を引きずったままだった。
「今日は、リリアリ談義をしようと思う!」
「急にどうしたの、悠真?」
ホント、急になんでそんな話をするのさ。しかも私の隣で。
どうやら周りの人も呼び寄せてるみたいで、隣の迫田くんの席が賑やかになっていった。
この間みたいにじっくり見すぎないように、私はあらかじめ窓の外を眺めておく。
「晴輝はお姉さんからもライブ映像を布教されたみたいでな」
「リリアリ好きの姉とか羨ましっ!」
「家で語り放題ってことじゃん」
「いやいや、そんなに良いものでもないよ?」
やっぱりライブ映像の話をされると、どうしても構えてしまう。
それでも、迫田くんがどんな話をするのか気になるから……。
私は席を立つことはせず、代わりにこっそりと聞き耳をたてる。
「で、晴輝が観たライブ映像ってどれなんだよ?」
「えっとね、このやつ」
「おお、迫田のお姉さん分かってるな~」
「自己紹介ソング! やっぱ最初はこれだよ!」
「あ~こんな分かってる家族がいんの羨ましいわ~」
メンバーそれぞれにソロパートがあって、全員の特徴がよく知れる自己紹介ソング。
そう、本来リリアリ初心者に勧めるならばその曲が一番だ。
その点でお姉さんはしっかり分かってくれていたんだけど……。ライブ映像版だったことが私を複雑な気分にさせていた。
「おっ、これが俺の推しのユイちゃんっ!」
「いやいや、お前この間のライブでアカリに揺らいでたじゃん!」
「そうなんだけど! やっぱりオタクに優しいギャルの誘惑には勝てないんだよ……!」
そういえばユイってファンの人からはギャルだと思われてるんだよね。
想像できないかもしれないけど、普段は家庭的でユイの手料理も凄く美味しいんだよ。
「そういうみんなは誰が好きなの?」
「俺はこの子だな、ルカ! クールさが麗しすぎる……!」
「いやいや、サクラコさんの年上の魅力! 大学生なのにあの包容力は狂わされるって!」
いやいや、ルカさんはどこか天然っぽさがあって。サクラコさんはどちらかと言うと甘えたがりだし……。
心の中でそんな突っ込みを繰り広げるのと同時に、みんなはちゃんとアイドルとしての振る舞いが完璧で凄いなと思う。
「で、晴輝はレナちゃんだよなっ!」
「みんなの前で推しって言うには、ずいぶん知識が浅い気がするんだけど……」
「いいんだよ。最初は誰だってそうなんだから」
そう、そこは宮城くんの言う通り。
もちろんライブとかに来て本気で応援してくれるのも嬉しいけど、曲を聴いて好きになってくれただけでも推しって名乗ってほしい。
「そういえば前から思ってたんだけど、水無月さんってちょっとレナちゃんに似てるよな」
な、なんてことを言ってくれてるの宮城くん……!?
せっかく褒めたのに、今の一言で台無しなんだけど。
少し油断してたからこそ、いきなり放り込まれた爆弾に心臓が跳ねる。
「えっ、そうか?」
「水無月、ちょっとこっち向いてくれね?」
絶対に迫田くんたちのほうを見たらダメ……。
学校での私の変装は、伊達メガネと根暗オーラだけなんだから。
「水無月~? お~い?」
「お前と話したくないんだろ」
「えぇ~。俺そんな嫌われてんの」
「こっち向いてくれないんだからしょうがないか。確かに似てると思うんだけど……。晴輝もそう思わないか?」
「どうだろう……。でも、水無月さんもレナさんも綺麗だと思うよ」
その瞬間、自分の顔が一気に熱くなったのが分かった。
何故だか迫田くんの言葉は本気で受け取ってしまう。
そもそも、綺麗だなんてファンの人にも言われることは少ないし……。
「お、お前……。よく水無月の隣でそんな恥ずかしいこと言えるな」
「そうかな? 本当に思ってることなんだけど」
最近、話していて分かったことだけど迫田くんはすごく純粋な人だ。
隠し事をしているのが申し訳なくなるくらいに。
そして、私がレナだということにも本当に気づいていないのだろう。
だったら、今まで通り接してもいいのかな。
ファンの人が周りにいる以上、私らしくは話せないけど。
少しずつ距離を縮められたらいいなと、私は心の中で密かに思うのだった。




